2014年に読んだ本の感想


ブクログブクログに読んだ本の感想をアップしています。


2014年12月30日

林雄司の世界のエリートは大事にしないが、普通の人にはそこそこ役立つビジネス書を読みました。 デイリーポータルZという面白いサイトの編集長をしている著者が、楽しい働き方をするためのメソッド集を書いています。
社内でごまをするよりもちゃんとサイト作って世の中にごまをすっていったほうがいい。 何か失敗したときの言い訳は「コミュニケーション不足」が汎用性が高い。(スキル不足だと決定的にまずい感じがするが、コミュニケーション不足だと運が悪かったと言う空気になるのがいい) 大事なのはサイトが続くことである。 お酒の勢いがないと言えないことは、たぶんお酒を飲んでいないときに言った方が良い。 お詫びでいちばん手っ取り早く、早く収まるのは電話することである。(お詫びはプレイだと思ってのぞむと俄然やる気が出てくる) ...といったメソッドが77個書かれています。
面白サイトのノリで書かれたスキル集ですが、参考になることも多いので仕事に活かしていきましょう。(本当か!?)


2014年12月29日

三上延のビブリア古書堂の事件手帖6を読みました。
栞子さんと五浦大輔の物語、6冊目です。 今巻も太宰治がテーマとなっていて、栞子さんがけがをする原因となった稀覯本「晩年」と太宰治が自家用で持っていた「晩年」をめぐる物語が語られます。
大輔の祖母の五浦絹子と田中嘉雄との関わりや、栞子の祖父が修行した久我山書店の人たちとの会話により栞子さんがけがをした事件の真相が明らかになってきます。 そして、大輔も今回の事件で大けがを負ってしまうのでした。
この物語も終盤にさしかかってきたようですが、どのような結末になるのか楽しみです。
そういえば、ブクログさんから三上延のサイン本が届きました。ありがとうございました。


2014年12月27日

中道裕大の放課後さいころ倶楽部4を読みました。
今巻でも女子高校生3人がボードゲームを遊びながら高校生活を過ごしていくようすが描かれています。 巻末で新キャラクターのドイツの高校生が登場したので、次巻がたのしみです。


2014年12月27日

東野圭吾のウィンクで乾杯を読みました。 昭和63年発表の東野圭吾の初期の作品でした。
今読んでみると、物語の語り口も登場人物のキャラクターも密室のトリックも稚拙と感じました。 東野圭吾もこんな作品を出していた時期があったんだなあ、と思ったのでした。


2014年12月24日

海堂尊のアリアドネの弾丸を読みました。
読んだ順番がケルベロスの肖像と逆になってしまいましたが、桜宮サーガの終章の前の物語を読みました。
今回は、警察庁の謀略により高階病院長が犯人に仕立て上げられて東城大が大スキャンダルに巻き込まれるところだったのですが、白鳥と田口たちの活躍でなんとか阻止することができたのでした。 医療機器の進歩により司法と医療が対立する構図が描かれていました。
最後に明らかになる藤原看護師の暗躍?もおもしろく読みました。


2014年12月21日

梨木香歩の水辺にてを読みました。
カヤックという一人乗りのボートに乗っていろいろな場所の水辺を探索する、というテーマのエッセイでした。 伝承の物語や案内人の解説などを織り交ぜながら水辺の自然が描写されています。
例えば、日本では夫が隠していた羽衣を見つけて妻が天に帰ってしまうという伝承が、北の国ではアザラシの娘がアザラシの皮を見つけて海に帰ってしまう、という物語になっているというエピソードなどが紹介されています。
水辺の自然とそこに生きる人々の生活に思いをはせることができました。


2014年12月21日

三浦しをんの秘密の花園を読みました。
私立女子校の高校生、那由多、淑子、翠の3人の視点で語られる物語でした。 全てを押し流すノアの洪水を待ち望んでいる那由多、男性教師と関係を持ってしまい苦しんでいる淑子、醒めた視線で同級生たちを見ている翠、それぞれの想いが語られていきます。
カトリック系の女子校の図書室司書なのに飄々と自由に行動している笹塚が魅力的だと思いました。


2014年12月13日

村上春樹の女のいない男たちを読みました。
女に去られた男、女を失った男たちをテーマにした短編集でした。 村上春樹の短編集は久しぶりですが、今回も楽しめました。
ドライブ・マイ・カーは若い女性の運転手をやとった俳優とその女性運転手の会話の物語です。 俳優は妻を亡くしていましたが、妻が生前不倫をしていた男と友人になったという過去があります。 その友人との会話を女性運転手に話すことによって、俳優の心の中にあるわだかまりが融けていくのでした。
イエスタデイは東京育ちなのに完璧な関西弁をしゃべる友人とその幼なじみの女の子と物語です。 冒頭に出てくるビートルズのイエスタデイの替え歌はフルバージョンで読んでみたいと思いました。
シェラザードは引きこもりの男性のところに週2回通ってくる家政婦の物語でした。 その家政婦は買ってきた食料品を冷蔵庫にしまうとなぜかその男性とセックスをし、そのあと千夜一夜物語のように物語を話して聞かせます。 やつめうなぎの話、空き巣に入った話、男はその物語に引き込まれていきます。
不思議な、ちょっとセクシーな物語たちを楽しみました。


2014年12月13日

誉田哲也のドルチェを読みました。
アラフォーの女性刑事、魚住久江が主人公の警察小説でした。 姫川玲子の物語に比べるとソフトな事件が多く、どちらかというと日常の謎という雰囲気のミステリーでした。
事件が発生したときに見える情景と、調べていくうちに見えてくる隠された情景のギャップが面白い物語でした。


2014年12月7日

スティーブンキングの夕暮れをすぎてを読みました。
哀しい不思議な出来事を描いた短編集でした。 ホラーの味付けのある物語もあって興味深く読みました。
最初の短編(ウィラ)と最後の短編(卒業の午後)は気に入ったのですが、暴力をテーマにした物語もあって全体の読後感としては自分とは肌の合わない物語だったなあ、というふうに感じました。


2014年12月7日

坂木司の切れない糸を読みました。
父親が亡くなってしまったため、大学卒業後商店街の中のクリーニング店を継ぐことになってしまった新井和也は母親や店の従業員の指導でクリーニング店の仕事を覚えていきます。 訳ありのお客様の行動の不思議をアイロンかけ職人シゲさんや大学の友人沢田の推理で解き明かしていきます。
商店街の中のクリーニング店というあまりぱっとしない職業でも、プロ意識を持った仕事をしていくことが重要だというテーマで物語られていきます。 最後に登場人物達の過去の物語が明かされ、それまで不思議だったことがつながるのでした。


2014年12月2日

辻村深月の本日は大安なりを読みました。
結婚式場を舞台に、面倒くさい性格の双子の花嫁、約束を守らないわがままな花嫁、既婚者なのに式を挙げることになってしまった新郎など訳ありのお客様を相手に苦闘するウェディングプランナーの物語でした。 困ったお客様の行動に共感することが出来なかったので、イマイチ楽しめませんでした。


2014年11月28日

夏海公司のなれる!SE12を読みました。 アーリー?リタイアメントという副題がついているシリーズ12冊目でした。
今巻では、女子中学生にしか見えない桜坂工兵の上司、室見立華の正体が明かされます。 なんと、見かけは伊達ではなかったのでした。 立華の衝撃の生い立ちやスルガシステムで働くことになった経緯などが明かされます。
設定の突拍子もないところはもう慣れたつもりでしたが、さすがにこの設定には驚きました。 まあ、文庫12冊分の活躍をしても、まだ工兵は1年目の新入社員だった、という設定もたいがいにしてほしいところですが。


2014年11月28日

伊坂幸太郎のPKを読みました。 時間に関するSFが3編収録された短編集でした。
それぞれの短編は独立していますが、時を越えて勇気は伝染する、というテーマでつながっています。 タイムパラドックスをテーマにしているので難解な部分もありますが、不思議な出来事に遭遇した登場人物達の行動は面白く読みました。


2014年11月24日

森絵都の屋久島ジュウソウを読みました。
森絵都が屋久島を縦走したときの旅行記でした。 案内役の人が「ジュウソウ」と言うのを聞いて重装備のことだと思っていた、というくらいの初心者の森絵都+編集者数人が屋久島の尾根をのぼります。 腰痛持ちの人、胃潰瘍持ちの人、でもなんとか頂上に登ることが出来ました。 途中の山小屋はひどく汚い場所だったり、途中の吊り橋には手すりがなかったり、と大変なことも多かったり。 翌日の屋久島観光ではレンタカーの鍵を紛失するというアクシデントがあったり。 でもみんな旅行を楽しんでいるのが伝わってきます。
もう1編、森絵都がヨーロッパを旅行していたときのエッセイ集が収録されていて、「旅」に対する森絵都の感想が書かれています。 いろいろなトラブルに遭いながらもポジティブに考えて行動していくのが森絵都流なんだろうなと思いました。


2014年11月24日

石蔵文信のなぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのかを読みました。 「エイリアン妻と共生するための15の戦略」という副題のついている、妻とうまくやっていくための処世術の本でした。
結婚した男女は最初はホルモンの作用により相手に熱烈な愛情を感じますが、3年もすると互いに相手に対する熱烈な愛情はさめてしまいます。 「最近妻がわがままになった」と感じる男性は多いようですが、女性はずっとわがままなのであって、結婚当時はホルモンのせいで妻がわがままであることに盲目だっただけだ、と解説されています。 もともと、男性と女性は感じ方や考え方が異なっているので、エイリアンと接するつもりで行動しなければならない、と主張されています。
さて、男性が定年になって会社に行かなくなると、いままで一緒に過ごす時間が少なかった夫婦も一緒に過ごす時間が増えてきます。 夫の対応が悪く、妻が良妻だったりすると妻が「夫源病」になってしまうこともある、と解説されています。
ここで、夫が妻と一緒に生活するときに必要な15の対策が挙げられています。 例えば、妻の話は「聞いている」という演技が大事、アラが見えても何も言わない、ホストになりきる、妻の積年の恨みを一度は吐き出させる、などなど。
定年になったら会社を退職してのんびりしようというような考えは甘いのかも知れないなあ、と思いました。


2014年11月18日

宮部みゆきのソロモンの偽証を読みました。 3つの分冊に分かれている、読み応えのあるミステリーでした。
1990年のクリスマス、中学校の屋上から生徒が落ちて亡くなっていました。 翌朝、彼は雪に埋まっているところを発見されて大騒ぎになります。 校長は全校集会を開いて事態の収拾を図ります。
1月始めに校長宛、担任の教諭宛、クラス委員宛に告発状が届きます。 その告発状にはクラスの中で暴力をふるいイジメの常習犯である男子生徒が犯人だと書かれていたのでした。 校長は内密に事態を収拾しようとしますが、運命のいたずらにより告発状はマスコミの知るところとなるのでした。 バブル全盛期の世相も背景に物語が語られていきます。
この混乱の中、3年生の藤野涼子はクラスの卒業課題として裁判によりこの事件の真相をあぶり出そうとします。 彼女の決意に応えて何人かの級友が裁判に参加することになるのでした。 法廷に提出する証拠の調査により、彼らは事件の真相に近づいていきます。
中学生とは思えないような登場人物達が生き生きと描かれていておもしろく読みました。 一つだけ残念だったのは途中で交通事故に遭って亡くなってしまう女子生徒の行動が描かれていなかったことです。 この子が一番かわいそうだったのに。
最後に25年後のエピソードが載っていたのは蛇足かもしれませんが、結末にほっとしました。


2014年11月2日

北村薫の1950年のバックトスを読みました。
23の短編・ショートショートが収録されています。 ジャンルもさまざまで、怖いもの、ほっこりとさせるもの、心温まるもの、いろいろでした。
気に入ったのは洒落小町という短編でした。 出版社に勤める一児の母の奈津子はダジャレを思いつくと話さずにはいられないという性格です。 役所に勤める夫と息子は一緒にいる時間も長いのに、時間に追われて仕事をしている自分は子供との時間もなかなか取れません。 そんな奈津子の生活が暖かく描かれています。


2014年10月31日

中島らもの変!!を読みました。
下ネタやギャグが満載のエッセイ集でした。 何も考えずにニヤニヤしながら読めるのが最高です。 中島らも亡きあと、このようなぶっ飛んだエッセイを書く人がいなくなったような気がするのはちょっとさびしく感じます。


2014年10月31日

高野和明の13階段を読みました。
死刑制度をテーマにしたミステリーでした。 刑務官の南郷と殺人の前科を持つ青年三上の二人は、犯行時間の記憶を失った死刑囚の冤罪を晴らすために調査を開始します。 警察が調べた事件を再度調べ直すという困難な調査を二人は続けていきます。
調査を依頼した人物は誰なのか、真犯人はどこにいるのか、三上の少年時代の家出事件もからんで物語が語られていきます。
謀略により他人を死刑になるようにしむけた場合は殺人に該当するのか、というような死刑制度の根幹にかかわる問題も提示されていて面白いと思いました。


2014年10月31日

東野圭吾のマスカレードイブを読みました。 マスカレード・ホテルの新田と尚美が出会う前の物語でした。
短編集の形で新田の物語と尚美の物語が交互に語られます。 表題作のマスカレードイブでは尚美の推理のおかげで新田の事件が解決するという展開になっているのも面白いと思いました。 マスカレードホテルの二人が魅力的だったので、こちらの物語も楽しめました。


2014年10月21日

鈴木貴博の戦略思考トレーニングを読みました。 企業戦略を立案するために必要な、思考力の鍛え方を解説した本でした。
問題が51問設定されていて、その解説の中で戦略的に考えるための方法が解説されています。 常識を越えた非常識の考え方、利益を上げるための数字の考え方、儲けるための戦略の考え方、といった切り口で問題解決のトレーニングが出来ます。
戦略的に考える、というのは言葉としては良く聞きますが、実際にビジネスに活かすためには鋭い思考力が必要だと思いました。


2014年10月21日

近藤史恵のタルト・タタンの夢を読みました。
ビストロ・バ・マルは下町のテーブルが5席とカウンターだけの小さなフランス料理の店です。 シェフと副シェフ、ソムリエ、ギャルソン(語り手)の4人のスタッフで切り盛りしています。 この店を舞台に、客が持ち込む謎を三舟シェフがフランス料理の知識を基にした推理で解き明かしていきます。
印象に残ったのは「割り切れないチョコレート」でした。 フランスで修行したショコラティエが開いたチョコレート専門店では素数個の詰め合わせのセットが売られているのでした。 なぜ素数個なのか、そこには深い意味があったのでした。


2014年10月21日

坂木司のホテルジューシーを読みました。 シンデレラティースの姉妹編で、沖縄のホテルジューシーにアルバイトに行ったヒロちゃんの物語でした。
しっかりもののヒロちゃんでしたが、沖縄的テーゲー(アバウトさ)に面くらい、不審な宿泊客たちに翻弄されてしまうのでした。 従業員も当てにならないオーナー代理や双子の老ハウスキーパーなど変な人ばかり。 でも、いろいろな事件に遭遇するうちにヒロちゃんも悩みながら成長していくのでした。
シンデレラティースとはがらっと雰囲気の違う物語でしたが、ヒロちゃんの魅力に惹かれておもしろく読みました。


2014年10月19日

恩田陸の訪問者を読みました。
湖を見渡せる場所に建つ洋館を舞台にしたミステリーでした。 急死した映画監督峠昌彦の友人井上はカメラマン長田とともにその洋館を訪ねます。 その洋館に住む昌彦の親族たちに対してある質問をするためです。
ところが、昌彦の親族たちには「訪問者に気をつけろ」という謎のメッセージが届いていたのでした。 井上と長田がその洋館に泊まることにした翌日、事態は思わぬ方向にころがりだすのでした。
謎解きはおもしろく読みましたが、物語の舞台の設定にあまり共感出来なかったのが残念です。


2014年10月11日

坂木司のシンデレラティースを読みました。 和菓子のアンの作者が歯科医院を舞台に描いた物語でした。
小学生の時のトラウマから歯科嫌いになってしまったサキこと叶咲子は、母親の計略に引っかかり夏休みは叔父の勤める歯科医院の受付嬢のアルバイトをすることになってしまいます。 しかし、個性的で患者に優しく対応するスタッフたちと仕事をして行くうちにクリニックの一員として溶け込んでいきます。
クリニックの仕事の中でいろいろな謎が提示されますが、サキは歯科技工士の四谷さんの助けを借りて謎を解いていくのでした。


2014年10月11日

アルカジイ/ボリス・ストルガツキーのストーカーを読みました。
30年前にタルコフスキー監督の映画で観たSFの物語です。 やっと原作を読むことが出来ました。
地球外の高度な知的生命体が地球上に残していった痕跡はゾーンと呼ばれていて、人知の及ばない装置や物体が存在しています。 人間の命を奪うような危険が満ちている世界なのでした。
命をかけてゾーンに潜入し、戦利品を盗んでくるストーカーと呼ばれる人たちが描かれています。 ストーカーであるシュハルトがゾーンに侵入して戦利品を持ち帰る経緯を描写することで人間の理解を超えた存在と人間との接触が描かれています。


2014年10月4日

海堂尊のケルベロスの肖像を読みました。 桜宮市・東城大を舞台にしたシリーズの医療ミステリーでした。
「螺鈿迷宮」で崩壊した碧翠院の跡地にAiセンターが建設され、サービス開始に向けて作業が行われています。 ところが東城大付属病院にはその爆破予告の手紙が舞い込んでしまいます。
不定愁訴外来の田口は高階病院長からその対応を丸投げされてしまうのでした。 田口は警察や法医学者たちの思惑もからみながら、エーアイセンター運営会議の再開を進めていくのでした。 田口そして白鳥は陰謀をそしできるのでしょうか。
シリーズの完結編という位置づけの物語のようで、過去の作品のエピソードにも言及されていて読んでいてニヤニヤしてしまいます。


2014年9月27日

宮部みゆきのここはボツコニアン4を読みました。
テレビゲームのボツネタの世界、ボツコニアンをピピとピノの双子が冒険していくという、ギャグとネタが満載の小説の4冊目でした。 前巻のホラー編の続きで派手な立ち回りの後、ピノピは回廊図書館の鍵を手に入れます。
次の物語は「盗まれた街」編。宇宙からの侵略者が人間たちと入れ替わっていきます。 その侵略者は莢インゲンの形をした莢ニンゲンたちなのでした。
作者が楽しんで書いているんだから、面白ければそれでいいじゃないですかぁー。


2014年9月26日

境野勝悟の超訳 菜根譚を読みました。
中国の古典である菜根譚を現在の言葉に訳した解説書でした。
現在の日本では、努力して仕事に精を出しお金を儲けることが人生の目的である、というような風潮があります。 しかし、その結果、精神を病んでしまったりする人も現われてきているわけです。
中国の古典である菜根譚の言葉を通して、自分を見つめながら穏やかに豊かに生きていく処世術が解説されています。
朴魯なるにしかず → 「ごくふつう」の良さを大切にする 一日も喜神なかるべからず → 一日一回「笑う時間」を作る 此の身は再びは得られず → 人生はたった一度きりであることを忘れない と言った警句が紹介されています。


2014年9月26日

佐藤正午の人参倶楽部を読みました。
地方都市のスナックを舞台に透明な筆致で描かれた恋愛の物語でした。 真夜中のスナックで妻子がいるのに、ときどき女の子と付き合っているスナックのマスターが主人公です。 不倫に疲れた女、冗談だけの小説家、来るはずのない女を待つ男といった人物たちがマスターとたわいもない会話をしていくなかで、それぞれの人物像が浮かび上がってきます。
それぞれの登場人物の視点で、思い通りにいかない恋愛の物語が語られていきます。 マスターの人間的な魅力にひかれて彼らはスナックに集まってくるのでした。
最後に登場する主人公の妻の描写が特に秀逸だと思いました。


2014年9月23日

東野圭吾のマスカレード・ホテルを読みました。
都内にある一流ホテル、コルテシア東京で殺人事件が起きることを警察がかぎつけます。 しかし、犯人がどのような人物であるかは闇の中です。
捜査員の新田はホテルのクラークとして潜入することになり、ベテランホテルウーマンの山岸尚美が教育係を務めることになります。 警察官とホテルマンという全く違った職業の二人は最初は衝突するのですが、互いに相手を理解していきます。
犯人の狙いが誰なのか、ということも分からないまま犯行の当日がやってきます。 捜査員たちが張り込んでいる中、新田と山岸は通常のホテル業務をこなしながら犯人が現われないか注意をしているのでしたが...
新田と山岸も魅力的でしたが、三枚目に撤している優秀な刑事の能勢がいい味を出しています。


2014年9月23日

新潮社編のFantasy Sellerを読みました。 ファンタジーをテーマにした8編の短編が収録されています。
板東太郎と河童、僕僕先生の外伝、死者を乗せて走る夜のバス、戦艦に取り憑いた船霊、学園に棲む奇妙な生き物、かぐや姫の伝説の島、といった短編が収録されています。
一番気に入ったのは最後の平将門と藤原純友がかぐや姫の伝説の島に行く話でした。 天に帰ったかぐや姫は時の帝に不老長寿の秘薬を残していった。 帝は富士山の頂でそれを燃やして天に帰したことになっているが、実はかぐや姫に難題をふっかけられた貴族たちに奪われていた。 平将門は富士山の麓の湖内に作られたかぐや姫の伝説の島に向かうが、そこは瘴気に満ちた世界だった。
設定も面白いと思いましたし、平将門と怪異の戦闘の描写も気に入りました。


2014年9月18日

三浦しをんの星間商事株式会社社史編纂室を読みました。
ヒロインの川田幸代は社史編纂室に所属して「ヤリチン」川田、ダイナマイトボディのみっこちゃん、遅刻常習犯の本間課長、誰も姿を観たことがない幽霊部長といった同僚たちとゆるゆるの仕事をしています。
ところが、幸代はプライベートでは古い友人の女性2人とコミケに向けてやおいをテーマにした同人誌を作っています。俗に言う腐女子、オタクなのです。
ところが、社史編纂をして行くうちに会社の過去には明かしてはならない闇があることが分かってきます。 会社の上層部やOBたちからの不穏な空気を感じながら、社史編纂室のメンバーは真相を探り出そうとするのですが...
三浦しをんが会社勤めをしたらこんなOLになりそうだな、と思いながらおもしろく読みました。


2014年9月18日

海堂尊の夢見る黄金地球儀を読みました。
ふるさと創生一億円で作られた桜宮市の黄金地球儀。 これを盗み出そうと町工場の営業の平沼平助とガラスのジョーが作戦を立てます。
ところが、計画の段階でも、実行の段階でもいろいろな障害がつぎつぎと発生します。 それらをなんとか解決しながら作戦を進めた二人を待ち受ける結末とは?


2014年9月18日

加納朋子の無菌病棟より愛をこめてを読みました。
konnokが気に入っている作家の一人の加納朋子が急性白血病にかかった、ということを噂で聞いてこの人の本はもう読めないんだなあ、と思っていました。 ところが、先日本屋でこの本を見つけたので早速読みました。
発病から大学病院での対処、がんセンターでの骨髄移植の経緯が加納朋子らしい筆致で描かれています。 そして、弟さんからの骨髄移植で回復の傾向にあるとのことでほっと胸をなで下ろしたのでした。
弟さんの手記も収録されており、彼の存在がなければ加納朋子も戻ってこれなかった可能性もあるんだなあ、と思ったのでした。
私の妹もがんにかかって手術を受けてつらい闘病の時期を過ごしたのでしたが、兄の自分は何にもしなかったなあ、と反省したのでした。


2014年9月18日

高田郁のみをつくし献立帖を読みました。
みをつくしシリーズに登場した料理をカラーで収録し、そこに物語の登場人物が話した言葉を添えた写真集でした。 料理の写真のあとにはレシピがついていて、みをつくしシリーズが誕生したきっかけや登場人物たちの裏話などのエッセイが収録されています。 さらに、巻末には野江と澪が子供の頃の大阪でのエピソードが収録されているという、みをつくしシリーズを楽しんで読んだ読者にとっては宝物のような本でした。


2014年9月15日

辻村深月のふちなしのかがみを読みました。
5つのホラー短編が収録された短編集でした。 読んでみた感想としては、トリックが先行して登場人物の描き込みがちょっとイマイチと感じました。 特に表題作のふちなしのかがみは、読者にミスリーディングを誘う物語の描き方になっているため、楽しめませんでした。


2014年9月10日

万城目学のザ・万歩計を読みました。
万城目学のエッセイ集でした。 奇想天外な物語を書く万城目学らしく、エッセイも破天荒な内容が書かれています。
鴨川ホルモーが書かれることになった経緯や、自給自足の生活にあこがれてモンゴルに行ったことが鹿男あをによしを書くきっかけになった、などという物語誕生秘話も書かれていておもしろく読みました。


2014年9月10日

新潮社のストーリーセラー3を読みました。
7人の作家による競作の短編集でした。 最初の5人は面白く読みましたが、最後の2人は以前読んだときも面白く感じなかったので今回もパスしました。
有川浩の作家的1週間はエッセイ風の物語で笑いながら読みました。 新聞の禁止語とその言葉をどうしても使いたい作家のせめぎ合いの描写は面白かった。
湊かなえと米澤穂信の短編もピリッとからい物語で気に入りました。


2014年9月6日

内田樹のためらいの倫理学を読みました。
内田樹の初期の評論集でした。 最近読んでいる内田樹の評論では主張がわかりやすく書かれていますが、この本の内容は初期のホームページに書かれていた内容と言うことでレヴィナスやラカンの論文も引用された堅い内容となっています。
なぜ私は戦争について語らないか、なぜ私は性について語らないか、なぜ私は審問の方法で語らないか、それではいかに物語るのか−ためらいの倫理学、という4つの章に分けて書かれています。
自分は被害者であるから他の人を審問する権利がある、という主張に対してどのように対応すべきか、という議論が面白いと思いました。


2014年8月28日

本多孝好のat Homeを読みました。
ちょっといびつな家族の物語が4編収録された短編集でした。
気に入ったのは日曜日のヤドカリという短編でした。 語り手の「俺」と結婚相手の連れ子で小学生の弥生さんの会話が秀逸です。 親子になって1年たつというのにまだ敬語で話す俺と弥生さん。 ある日曜日に弥生さんの母親が同窓会で出かけたときの出来事が語られていきます。 子供や孫の女の子が、弥生さんのような感じだったら人生も楽しくなるだろうなあ、と思ったのでした。


2014年8月25日

宮部みゆきのお文の影を読みました。
江戸時代を舞台にした怪奇譚の短編集でした。
妖が現われて人々に害をなす、というテーマが多かったのですが、その原因は人間の悪行だった、というオチになっているのが宮部みゆきらしいと思いました。
この小説はそれぞれが独立した短編集だったのですが、連作短編集だったら登場人物たちに思い入れができるのになあ、と残念に思いました。


2014年8月20日

三浦しをんの木暮荘物語を読みました。
世田谷代田駅から徒歩5分のおんぼろアパート木暮荘を舞台に、Feel Loveというテーマで書かれた連作短編集でした。
恋人と同棲中のところに、三年前に音信不通になった元カレが転がり込んでくる。 通勤駅の柱に緑のゼリーのようなキノコが生えてきて、それが男根のような形に育ってくる。 夫が浮気をすると夫のいれてくれたコーヒーが泥の味になる。
ちょっと変わった登場人物たちが生々しい行動をしていくのですが、そこにはほのぼのとした愛が感じられます。 帯にこんなアパートに住んでみたい、と書いてありましたが、本当にそう思いました。


2014年8月16日

高田郁の天の梯(そらのかけはし)を読みました。 みをつくし料理帖シリーズの最終巻でした。
登龍楼の采女の陰謀によって佐兵衛は公方さましか口にしてはいけない食材の酪に手を出してしまいました。 そして、遊女殺しの罪をかぶせられてしまい、料理人を続けることを断念したのでした。
その酪が何者かにより一柳の座敷に置き忘れられてしまいます。 それを自身番に届け出た柳吾は奉行所に捕らえられてしまいます。 佐兵衛はそれを知り、自分が自訴することにより柳吾を助けようとします。 柳吾が戻って喜んだ芳は代わりに佐兵衛が捕らわれてしまったことを知り悲嘆にくれます。
澪はあさひ太夫の身請けをするために摂津屋の助力を受けながら翁屋伝右衛門と交渉を行います。 そして、身請けされた後も野江が幸せに暮らせるように段取りを整えるのでした。
登場人物たちがそれぞれ落ち着くところに落ち着いて物語が完結しました。 雲外蒼天の澪は青空に虹の梯を見ることが出来たのでした。


2014年8月13日

伊坂幸太郎の死神の浮力を読みました。 死神の精度に登場した死神の千葉が再度登場します。
今回はサイコパスの男に娘を殺されてしまった夫婦が復讐を遂げようとする物語です。 彼らは警察や裁判所にゆだねることをせずに自らの手で犯人に死の苦痛を与えようとするのですが、たまたま同席した千葉の行動により犯人を取り逃がしてしまいます。 夫婦は何とか犯人を捕らえようとするのですが、相手のほうが数枚上手で目的を達成出来ません。
そして、死神が登場する物語なので、「死」に関する興味深い議論・意見が述べられます。 物語自体はイマイチだと思いましたが、それぞれの意見はおもしろく読みました。


2014年8月7日

三浦しをんの格闘する者に○を読みました。
私は格闘技には全然興味がなく、○や××のついた題名の小説にまともな小説はないだろう、と思っていました。 しかし、舟を編む、まほろ駅前、神去なあなあ日常などの小説を読んで気に入っているので、三浦しをんのデビュー作も読んでみようと思ったのでした。
主人公の可南子は就職活動中のマンガ好きの大学生で、義母と弟と3人で大きな家で暮らしています。 可南子の父親は議員ですが、ほとんど家に帰ってきません。
可南子は美人の砂子、真面目な二木君たちと出版社への就職をめざして活動しています。 3人のちょっとのほほんとした日常が描かれていきます。 出版社の面接の描写とそれに対して可南子が考えていることの描写が面白いと思いました。


2014年8月5日

高田郁の美雪晴れを読みました。 みをつくし料理帖シリーズの9巻目でした。
一柳の柳吾から求婚されていたご寮さんはそれを受けることを心に決めます。 澪や種市たちつる家の面々はご寮さんを送り出すための準備をするのでした。
一柳からはお臼と政吉という助っ人がつる家に送り込まれてきて、ご寮さんと澪が巣立っていく準備が整います。 物語は次巻で大団円を迎えるようです。楽しみです。


2014年8月4日

池井戸潤のようこそ、わが家へを読みました。
主人公の倉田は元銀行員で定年前に取引先に出向させられている身の上です。 倉田が駅で列への割り込みを注意したところ、その男が逆ギレして自分の家にストーカー行為を始めてしまうのでした。 今時では他人事ではない設定です。
また、会社でも同僚が不正を行っているようで、そちらの心労もかかってしまいます。 倉田は家族を守り、会社の不正をただすことができるのでしょうか。
サスペンスではありますが、家族に励まされるという、どちらかというと心温まる展開なのでした。


2014年7月30日

恩田陸の私の家では何も起こらないを読みました。
丘の上の幽霊屋敷をテーマにしたホラー小説でした。 プロットはそこそこ面白いと思いましたが、イマイチ物語に入り込めませんでした。


2014年7月29日

高田郁の残月を読みました。 みをつくし料理帖シリーズの8巻目でした。
今巻では吉原の火事で亡くなってしまった助っ人料理人の又次を偲ぶつる家の人たちが描かれています。 初めは悲しみにうちひしがれていた澪たちですが、季節が変わる中で悲しみを乗り越えていきます。 又次からの教えを思い出しながら、澪もふきも成長していきます。
佐兵衛を探し続けるご寮さんですが、やっと手がかりがつかめてきます。 しかし、佐兵衛には店を再建する考えはなくなっていたのでした。 そんなご寮さんにも大きな転機が訪れるのでした。


2014年7月26日

内田樹の街場の文体論を読みました。
内田樹の神戸女学院大学での最後の授業であるクリエイティブ・ライティングについての講義録でした。 内田樹の講義を聴いているような気持ちでおもしろく読みました。
印象に残ったのはメッセージとメタ・メッセージという話題でした。 文章というのはその中にメッセージが書かれていますが、その文章ではメタ・メッセージも発信されています。 メタ・メッセージとはそのメッセージを誰に届けたいか、何を届けたいかということです。 試験の回答として書かれた文章は試験官に向けて「合格を出してほしい」というメタ・メッセージを持っています。 評論家の書いた文章の多くは「オレって頭がいいだろう」というメタ・メッセージを持っています。
そして、本当に優れた文章というのは「この文章をあなたに届けたい」というメタ・メッセージを持っていて、届いた人には自分に向けたメッセージであることが直感でわかるものなのです。 私もblogに文章を書きなぐっている一人なので、肝に銘じておこうと思ったのでした。


2014年7月26日

高田郁の夏天の虹を読みました。 みをつくし料理帖シリーズの7巻目でした。
澪は小松原との結婚をあきらめ、料理人として生きていくことを決め、小松原に伝えます。 事情を知らない小松原の妹の早帆は詫びのために来てくれますが、澪は申し訳ない気持ちになります。
自分で決めたこととは言え、婚礼の列が小松原の家に入っていくところを見て、澪はショックのあまり味覚と嗅覚がなくなってしまいます。 つる家の店主種市は翁屋に掛け合い、期間を決めて又次を貸してもらうことにします。
又次が吉原に帰る日に吉原で事件がおきてしまい、物語が急展開します。


2014年7月18日

有川浩の空飛ぶ広報室を読みました。
空井大祐は自動車事故にあってしまったことから戦闘機パイロットの夢を断念し、現在は航空自衛隊の広報室に勤務しています。 帝都テレビの記者、稲葉リカは自衛隊の特集の担当になり、空井と対応して記事をまとめることになります。
アイドルグループ主催のテレビドラマへの協力やメディア対応の模擬訓練などのイベントを続けて空井と稲葉は互いに理解を深めていきます。
有川浩の小説なのにラブコメじゃないのはちょっとものたりない、とは思いましたがおもしろく読みました。
東日本大震災のときは自衛隊の支援で被災地の人たちは助かったと思いますが、あの日の松島の章でそれについても言及されていました。 自衛隊を自国の防衛ではなく他国を攻撃する戦場に送ることになる、集団的自衛権が議決された時期なので印象深く読みました。


2014年7月18日

冲方丁のばいばいアースを読みました。
獣人たちの世界の中で、たった一人の人間:のっぺらぼうの少女が自分の背丈ほどもある大きな剣を武器に冒険していくというファンタジーでした。
この世界では剣は植物として生まれて戦士たちが育てるという設定や、正義(GOD)と悪(DOG)が対峙する世界という設定は面白いと思いました。 荒唐無稽な設定なので、人物の描き込みが薄かったのが残念です。


2014年7月11日

近藤史恵のエデンを読みました。
自転車のロードレースを題材にしたミステリーでした。 ロードレースの選手白石誓は日本での事件の後ヨーロッパに渡ってプロチームの一員として競技に参加しています。 誓はチカと呼ばれてアシストというポジションでチームに溶け込んでいますが、チームのスポンサーが降りるということになり、チーム内に不協和音がでてしまいます。 誓はチームのエースであるミッコのサポートに撤しようとするのですが...
そして、レースの中で薬物を使用しているという選手の噂がたちます。 誓は日本で起きた事件の記憶を新たにして暗澹たる気持ちになるのでした。


2014年7月6日

百田尚樹の海賊とよばれた男を読みました。
戦後の日本で日本の復興のために身体を張って石油の供給の道を開拓した国岡鐵造(出光興産の出光佐三がモデル)の物語でした。 鐵造は幾度となく経営の危機にさらされながらも、社員は何よりもすばらしい財産である、という理念で事業を拡大していきます。 社員たちも鐵造の期待に応えて困難な仕事を精力的にこなしていきます。
戦後、国交のなかったイランと石油輸入の契約を結び、イギリスの駆逐艦を捲いて石油を日本まで持ち帰ったというエピソードが圧巻です。 この事件により石油の国際カルテルに一泡吹かせることが出来たのでした。
物語を通して、会社は国民のためということを第一に考えるべきで、儲けることだけを考えてはいけない、という鐵造の意志の強さが光ります。


2014年7月5日

池井戸潤の民王を読みました。
サイバーテロにより、首相とその息子が入れ替わってしまう、と言う物語でした。 首相とその息子はそれぞれに最善を尽くすのですが...
着想は面白いと思いましたが、池井戸潤のおはこの最後に倍返し、というカタルシスがなかったのは残念です。


2014年6月28日

佐藤正午の取り扱い注意を読みました。
主人公の鮎川英雄は「女をとろけさせ、夢中にさせること」という特技を持っています。 市役所の職員として複数の女と遊びながら過ごしていた英雄は、姿をくらましていた叔父の酔助が現われたことにより無謀な計画に加担することになってしまいます。
佐藤正午らしい語り口と物語展開でおもしろく読みました。
英単語のボードゲーム、スクラブルが物語のキーになっていてその点も面白いと思いました。


2014年6月28日

海堂尊のモルフェウスの領域を読みました。
病気の治療法が開発されるまでの期間、人間を凍らせて眠らせる凍眠の技術が開発されたら、というテーマの物語でした。 凍眠をしている少年、佐々木アツシの生命維持業務を5年にわたって行っている日比野涼子は、アツシが目覚めた後に起きる問題に気づき、アツシを守るために行動を開始するのでした。
新しい技術が開発されたときに、それを現実の世界とマッチさせるためにはいろいろ考えなければならないことがある、という指摘は面白いと思いました。
コールドスリープの装置を開発した技術者、西野は冥府の番人のように登場しますが、この人が不眠症というのは笑えないジョークだと思いました。


2014年6月19日

高田郁の心星ひとつを読みました。 江戸の女料理人澪の物語、みをつくし料理帖の6巻目でした。
つる家の料理が江戸で評判になったことから、扇屋と登龍楼それぞれからつる家を出て大きく店を開かないか、という誘いが入ります。 澪は悩みますが、どちらの誘いも断りつる家で自分の料理の腕を磨くことを選択するのでした。
澪の思い人小松原の妹早帆は二人の思いを知り、身分違いの婚姻が出来るように手を回してくれます。 しかし、澪はうれしい反面、小松原に嫁いでしまえば料理を続けることが出来なくなる事を知り、悩みます。 最後には澪は小松原との婚姻を断って料理一筋に進むことを心に決めるのでした。
これから物語はどのように展開していくのか、楽しみです。


2014年6月15日

米澤穂信の追想五断章を読みました。
菅生芳光は事情により大学を休学して伯父の古本屋でアルバイトをしています。 そこに、北里可南子という若い女性から父親が書いた5つの文章を探してほしいという依頼が舞い込みます。
芳光はその文章を探していくのですが、それらの断章は結末の書かれないリドルストーリーとして書かれていたのでした。 可南子の父親と母親の事件「アントワープの銃声」はこの断章とどのような関わりがあるのか。
ちょっと不気味な5つの断章が全て明らかになったときにそこには事件の真相が現われてくるのでした。


2014年6月15日

小路幸也の花咲小路四丁目の聖人を読みました。
矢車亜弥は花咲小路に住んでいる塾の教師。 亜弥の父親矢車聖人はイギリス人で亜弥の母親と結婚して日本に帰化したんだけど、若い頃はイギリスを騒がせた泥棒セイントだった。
こんな設定から、日常の謎解きの物語なのかな、と思っていたのですが、物語は予想外の展開が...
登場人物の会話は面白かったのですが、物語としてはどうだろうか。


2014年6月8日

アガサ・クリスティーのひらいたトランプを読みました。
コントラクトブリッジをテーマにしたミステリーでした。 ブリッジのテーブルで4人の人物がゲームを楽しんでいます。 暖炉のそばで居眠りをしていた5人目の人が殺されてしまいます。 ブリッジではビッドが終わってプレーが始まると4人のうちの1人がプレーから抜けることが出来るので、犯行が可能となるのでした。 ということで、4人のうちの1人が犯人であることは間違いないのですが、殺人現場の手がかりはブリッジのスコアのみという状況なのでした。
エルキュール・ポワロはブリッジのスコアから4人の性格を分析し、容疑者の過去の事件など他の手がかりを組み合わせて、殺人をするのであればこの人しかいない、ということを推理していくのでした。
ブリッジの性格分析がミステリーのトリックに使われるほど、欧米ではブリッジがポピュラーなんだろうなあ、と思ったのでした。


2014年6月5日

高田郁の小夜しぐれを読みました。 みをつくし料理帖シリーズの5巻目、つる家の女料理人、澪の物語でした。
今巻ではつる家の主人種市の過去おつるにまつわるお話、遊郭の登龍楼での贅を尽くした料理、伊勢屋の美緒の婚礼のお話、と物語の核心に触れるエピソードが満載です。
澪が密かに思いを寄せる小松原についても物語られていて、これからの展開が楽しみです。 まあ、雲外蒼天の人なので、一筋縄ではいかないんでしょうけど。


2014年5月29日

池井戸潤のBT’63を読みました。
主人公の大間木琢磨は心を病んで2年間の闘病生活をおくり、妻にも去られてしまった36歳です。 琢磨が5年前に亡くなった父親大間木史郎の遺品であるボンネットトラック(BT)のキーに触れたとたん、琢磨の頭の中に史郎の若き日の記憶が流れ込んできます。
昭和30年代の世相の中で、史郎の勤め先での仕事ぶり、悲しい恋の物語、闇に生きる日陰者たちとの関わり、そういった出来事が語られます。 琢磨は流れ込んできた記憶を辿りながら、その記憶が正しいものなのか調べていくことになります。 殺人事件に関わってしまったBT21は本当に呪われたトラックなのか、それとも...
父親の青春時代を探っていく旅は、自分のルーツを見つける旅になるのでした。


2014年5月29日

東野圭吾の白銀ジャックを読みました。
スキー場に爆発物が仕掛けられ、身代金が要求されます。 スキー場の索道管理者の倉田は警察に届けることを進言しますが、上層部は身代金を支払うことで解決しようとします。 身代金の受け渡しの日、パトロールの根津は犯人を追って捕まえようとしますが...
スキー場の運営者、スキー場の利用者、スキー場の事故で身内を亡くした父子、地元の町長、と言った利害の対立する人たちの誰が犯人なのか謎が深まっていきます。
登場人物の描き込みがイマイチでちょっと楽しめませんでした。


2014年5月29日

高田郁の今朝の春を読みました。
みをつくし料理帖シリーズの4巻目、俎橋つる家の女料理人、澪の物語でした。
つる家に来てくれるお客様のために澪が工夫する料理でつる家は繁盛しています。 しかし、澪の幼なじみ野江の過去が明らかになってくることで澪は動揺します。 淡い恋にこがれる小松原が実は誰なのかということも分かってきて、恋心を封じようとした澪は料理に実が入らず指に大けがをしてしまうのでした。
澪とつる家の人たち、戯作者の清右衛門、長屋の伊佐三、おりょう、太一の家族などもからんで賑やかに物語が語られます。


2014年5月25日

ジョン・ガイガーのサードマンを読みました。
ヒマラヤ登山や南極横断などの極限状態で幻の同行者が現れることがある、というサードマン現象の解説書でした。 それは最近亡くなった近親者のように感じられたり、守護天使のように感じられたりするとのこと。
私にはそのような極限状態に置かれた経験はないので、ふうん、そういうこともあるのか、と読みました。


2014年5月25日

佐藤多佳子の聖夜を読みました。 School and Musicというシリーズで書かれた小説とのこと。
主人公の鳴海は小さい頃からオルガンを弾いていたので、ミッションスクールの高等部でオルガン部に入っています。 鳴海の母は牧師の父を裏切って駆け落ちしてしまったため、彼はトラウマを抱えて高校生活をおくっています。
母親が好きだったメシアンの曲を選んで練習をするのですが、自分のできばえに納得が出来ません。 発表会当日鳴海は演奏をすっぽかしてしまうのでした。
鳴海と彼を取り巻く友人たちとの交流が温かく描かれていました。


2014年5月20日

太田垣晴子の偏愛博物館スケッチを読みました。
いろいろな博物館や美術館を訪ねるという絵入りのエッセイでした。 私は出不精で、あまり博物館などには行かないので、このような本を読んで行ったような気になるのはいいですね。
面白いと思ったのは江戸東京たてもの園という施設で、宮崎駿が千と千尋を作るときに参考にしたという建物があるとのこと。 ここは、ちょっと行ってみたいかな、と思ったのでした。


2014年5月18日

恩田陸の夢違を読みました。
見ている夢を映像化することが出来るようになったら、というテーマのSFでした。 夢を映像化する機械と夢見で未来を予知することができる能力を持っている人が関わったらどのようなことが起きるのか、という風に物語が語られていきます。
事故で亡くなったはずの未来を予知することが出来る女性が、いろいろな心霊現象を起こしているという設定でした。 物語の語り口は良いので、あっという間に読み終えましたが、設定にちょっとムリがあるかなあ、と感じました。


2014年5月15日

誉田哲也の疾風ガールを読みました。 私は先に続編のガール・ミーツ・ガールを読んでいたので、逆順で読んだことになります。
ロックバンド「ペルソナ・パラノイア」のギタリスト柏木夏美19歳、ギターの腕前は天才的、ルックスも良い、性格はがらっぱちで男前。 柏木夏美のギターに惚れ込んだタレントプロダクションの祐司は夏美と契約を結んで売り出そうとします。 ところが、その矢先、「ペルソナ・パラノイア」のボーカル薫が自殺してしまいます。 しかも城戸薫というのは偽名だということが判明します。 夏美と祐司は薫の手がかりをつかむために新潟に出かけるのでした。
夏美と祐司が交互にそれぞれの視点で語っていくことで、二人をとりまく登場人物たちがくっきりと描かれているのが好印象です。


2014年5月11日

森絵都のアーモンド入りチョコレートのワルツを読みました。
中学生が主人公のクラシック音楽をテーマとした物語が3編収録されています。 表題作のアーモンド入りチョコレートのワルツは中学生の奈緒とピアノ教師の絹子先生、そしてサティのおじさんの物語でした。 絹子先生の友人なのか恋人なのか、フランスから来たサティのおじさんは変わり者で、絹子先生のレッスンの時には一緒に遊んでくれるのでした。 しかし、サティのおじさんは他の生徒たちには評判が悪く、生徒はどんどん減ってしまうのでした。 ちょっと風変わりだけど、楽しかった時間は過ぎていってしまうのでした。
クラシック音楽はなじみがないので、ちょっとイマイチに感じました。


2014年5月7日

池井戸潤のロスジェネの逆襲を読みました。
半沢直樹シリーズの3冊目です。 東京中央銀行から東京セントラル証券に出向している半沢直樹は電脳雑伎集団というIT会社のアドバイザーとなり、企業買収の支援を行うところでしたが、東京中央銀行の証券営業部がこの案件を横取りして電脳雑伎集団とアドバイザリー契約を結んでしまいます。
東京セントラル証券のプロパー社員森山は電脳雑伎集団が買収しようとしている東京スパイラルの瀬名と接触し、電脳雑伎集団の陰謀を阻止しようとします。 半沢は森山らといっしょに、出向元の銀行と対立する東京スパイラルのアドバイザーを引き受けます。
銀行内部のどろどろした人間関係が描かれていますが、それと比較して半沢直樹の潔さが際立ちます。


2014年5月3日

杉浦日向子の東京イワシ頭を読みました。
杉浦日向子が講談社の新人編集者ポワールといっしょに流行迷信(イワシの頭も信心から)を取材するというエッセイでした。 新興宗教、占い師、エステ、ギャンブル、人面魚、ストリップ、げてもの料理、と言ったいろいろな人物や団体を取材して絵付きのエッセイとしてまとめられています。 結構どぎつい取材もあったようですが、杉浦日向子らしい風俗を描く視点でまとめられているので、安心して読むことが出来ます。
書かれたのは1996年のようで、ネタが15年前なので、今読んでみると結構懐かしく感じました。


2014年4月29日

若狭勝の嘘の見抜き方を読みました。
検事として長く容疑者の嘘と対応してきた著者の嘘についての解説書でした。 人が嘘をつく理由の分類や、嘘をつく人の見分け方の解説は面白いと思いました。
ボードゲームの会などでは嘘をつくゲームも遊ばれますが、私は嘘をつくのが下手で真っ先に見破られてしまうので、この本をもう少しじっくり読んで参考にしようかな、と思ったのでした。


2014年4月25日

ジェフリーアーチャーの裁きの鐘はを読みました。
クリフトン年代記シリーズの3巻目でした。 ジャイルズとハリーの相続問題も解決し、晴れてエマと夫婦になることが出来たハリーの次の心配事は息子のセバスチャンのことでした。 言語の習得については並外れた才能を持っているセバスチャンですが、学校からの連絡で友達が出来ない、歴史・地理・自然科学については才能がないという連絡があったのでした。 またハリー夫妻は孤児院からヒューゴーの娘であるジェシカをセバスチャンの妹として養子に取ることにします。
セバスチャンが18歳の時、友人の父親ドン・ペデロから依頼されたアルゼンチンまでの旅で大きなトラブルに遭遇します。 ドン・ペデロはセバスチャンを使って密輸入をしようとするのですが、当局に察知されて失敗してしまいます。 ドン・ペデロはセバスチャンを逆恨みし、交通事故に見せかけた殺害を計画します。
ハリー、ジャイルズ、エマたち主人公側とフィッシャー少佐、ヴァージニア、ドン・ペデロたち敵役側の確執もあり、あっという間に読み終えてしまいます。 次巻が楽しみです。


2014年4月20日

東野圭吾の麒麟の翼を読みました。
加賀恭一郎シリーズの日本橋を舞台にしたミステリーでした。 日本橋の翼を持った麒麟の像の下で会社員が亡くなります。 その会社員は近くのガード下で刺されたのですが、その像までたどり着いて息絶えたのでした。
容疑者として挙げられた青年は警官から逃げようとしてトラックにはねられて意識不明の重体になってしまいます。 マスコミや警察の上部はその青年が会社員を刺殺した犯人と考えますが、加賀はその裏に隠れた事件の真相をあぶり出していきます。
事件を解決しないと被害者の家族も容疑者の恋人も救われない、という加賀の言葉が重く感じました。


2014年4月19日

スチュアート・クラークのビッグクエスチョンズ 宇宙を読みました。
現在の科学で判明している、または研究されているテーマの解説書(宇宙版)でした。
現在の物理学・天文学の最新の研究の成果がわかりやすく解説されています。 宇宙がビッグバンで始まって現在も膨張を続けている、地球外に生命が存在する可能性はあるのか、銀河の動きを調べていると空間に何か観測出来ないものが存在しているはず(それを暗黒物質と呼ぶ)など、おもしろく読みました。
日々の生活には全く関係ありませんが、距離的にも時間的にも遠い世界のことを想像するのも楽しいものです。


2014年4月19日

池井戸潤のかばん屋の相続を読みました。 銀行員が主人公の短編集でした。
芥のごとくでは、女性経営者の苦闘とその結末が苦い後味を残します。 妻の元カレでは、主人公の銀行員のドキドキが描かれています。
かばん屋の相続は、亡くなったかばん屋の経営者とその子供たちの物語です。 父親と一緒にかばん屋を経営していた弟とそのかばん屋を乗っ取ろうとする元銀行員の兄の思惑が交錯します。
池井戸潤らしい切り口の銀行員が遭遇するいろいろな事件を面白く読みました。


2014年4月12日

高野和明のジェノサイドを読みました。
人間たちが血で血を洗う抗争を繰り広げているアフリカの内戦地帯に4人の兵士が特殊な任務を帯びて潜入します。 4人の兵士は致死の病原菌に冒された可能性のあるピグミーの集落を襲い、そこにいる全員を殺害するという任務を受けていました。
その村にたどり着いた兵士たちは、そこに進化した人類の子供がいて、その子供を殺害することが任務の真の目的であったことを知ります。 彼らは一転してその子供を日本に届けることになるのでした。
一方日本では、急死した父親から謎のメッセージを受けた若い研究者が、父親の指示に従いある病気の特効薬の開発を行うことになります。 コンゴに潜入した特殊部隊と日本の若い研究者の接点はどこにあるのか、という謎を抱えたまま物語が語られていきます。
最初は特殊部隊の戦闘がテーマの小説なのかと思いましたが、読んでいくうちにSFミステリーであることがわかってきます。 人類学に対するコメントも面白く、物語を楽しむことが出来ました。


2014年3月30日

池井戸潤の果つる底なきを読みました。
主人公の銀行員伊木は同僚の坂本が事故死したことから彼の担当していた会社を受け持つことになります。 倒産してしまった東京シリコンは信越マテリアルに多額の融通手形を切っていたのですが、そのお金がどのように使われたのかが明らかになっていません。 伊木は坂本の事故死が仕組まれたものだと考え、使途不明金の回収をするために関係する会社の情報を集めていきます。
半沢直樹シリーズのような爽快感はありませんが、銀行を舞台としたミステリーをおもしろく読みました。


2014年3月29日

内田樹の街場のマンガ論を読みました。 内田樹のマンガに関するblogなどを集めたエッセイ本でした。
今の教育が画一的な「犬のしつけ」のようなものになってしまっている状況で、マンガは子供たちに人間的な成長について教えている、と言う指摘は面白いと思いました。
日本でマンガが発達している理由として、日本語の特殊性について言及しています。 日本語が表意文字と表音文字をあわせて使っているため、日本人は言葉を認識するときに脳内の複数の場所を使っている。 マンガも絵と言葉が同時に書かれている表現方法なので、これは日本語の特殊性によって発達した、という説明が面白いと思いました。
少女マンガを読むためには少女マンガリテラシーというようなものが必要だ、という解説を読んで、私は少女マンガは読んでも面白いと思わないのですが、その理由が分かったような気がしました。
私はマンガはあまり読みませんが、そのうち「バガボンド」や「進撃の巨人」なども読んでおかなくちゃな、と思ってしまいました。


2014年3月26日

近藤史恵のサクリファイスを読みました。
自転車のロードレースを題材にしたミステリーでした。 自転車のロードレースは日本ではあまり報道されませんが、ヨーロッパでは盛んなスポーツのようです。
ロードレースにかける登場人物たちの駆け引きや悩みなどが描かれていて楽しめました。 石尾の事故の顛末に関わるミステリーは意外でしたが、石尾ならそのように決断するんだろうな、と納得したのでした。
読み始めてすぐ、あれ、この物語は読んだことがあるような気がする、という既視感にとらわれました。 解説を読んで思い出したのですが、Story Sellerという短編集にこの物語の外伝が収録されていて、それを読んだことがあったのでした。


2014年3月16日

朝吹真理子のきことわを読みました。
15歳だった永遠子と8歳だった貴子のふたりは逗子の別荘で姉妹のように一緒に過ごしていました。 それから25年後、永遠子と貴子は取り壊すことになった別荘で再開し、後片付けをすることになります。 懐かしい思い出、食い違う記憶、思い出の品々、それぞれの年輪を加えた二人は少女の時代に戻って限られた時間を過ごすのでした。
夢と現実、過去と現在が交錯する女性のみずみずしい感性の描かれたちょっと不思議な物語でした。


2014年3月16日

山本弘のニセ科学を10倍楽しむ本を読みました。
と学会会長の山本弘が書いた似非科学の解説書でした。 若い人向けにわかりやすく解説されているのが好感が持てました。
書かれている内容はほとんど知っていることでしたが、アポロは月に行っていない?、という章は結構面白く読みました。 フランスではパロディとして作られた番組が、日本ではバラエティー番組でさも本当のように報道され、それを信じている人がたくさんいる、という構造が面白いと思いました。
フランスでその番組を作った人がメディア・リテラシーを試すためだ、と発言しているというのもうなづけます。 私も騙されやすいので、気をつけたいと思ったのでした。


2014年3月10日

J.D.サリンジャーのフラニーとズーイを読みました。
この本は20年以上前に読んでとても気に入った小説で、私の大好きな本の1冊です。 物語はグラス家の七人兄妹の中で年若い二人、ズーイとフラニーの物語です。
フラニーはボーイフレンドと待ち合わせてデートをするのですが、そのボーイフレンドが軽薄で中身のない男性だということに気づいて落ち込んでしまいます。 フラニーはデートの最中に倒れてしまい、自宅に戻ってきます。
自宅に戻って消耗しているフラニーに母親のベッシーはチキンスープを作って飲ませようとするのですが、彼女は手をつけようとしません。 途方に暮れた彼女は浴槽につかって兄からの手紙を読んでいたズーイのところに来てフラニーを立ち直らせることはできないのかと相談します。
ズーイは何とかフラニーの悩みを解決してあげようと考えますが、その言葉は彼女には届きません。 兄たちの部屋で熟考した後ズーイが取った行動により、フラニーは自分の悩みを解決する糸口を得ることが出来たのでした。
ストーリーも面白いのですが、ズーイの発言がエスプリが効いていてそれも魅力になっていると思いました。 今回、村上春樹訳で読んだのですが、本当におもしろく読むことが出来ました。


2014年3月8日

内田樹の邪悪なものの鎮め方を読みました。 内田樹の主張が記述されているエッセイ本でした。
「子ども」から大人になれない人が増えすぎた社会、習慣としての「読字」の重要性、偏差値教育の弊害、記号的殺人の邪悪性、モラルハザードの構造、「常識」とは、現在の科学では証明出来ないものもあるかも知れないという柔軟性が大事、など面白い話題が満載でした。 それぞれの主張は面白いだけではなく、自分の生き方に組み込んでみたいな、と思うものもたくさんありました。
最後の章は内田樹が学生に向かって語りかける形で書かれていて、こんな先生に指導される学生たちは幸せだなあと思ったのでした。


2014年3月1日

夏川草介の神様のカルテ3を読みました。 神様のカルテシリーズの三作目でした。
夏目漱石の草枕を座右の銘として地域医療に人生を捧げている栗原一止医師が主人公の物語でした。 一止の細君榛名(ハル)や本庄病院の大狸先生、進藤、砂山次郎、東西看護師、外村師長、そして御嶽荘の男爵、屋久杉君、と言った魅力的な登場人物たちが物語を紡いでいきます。
前作で亡くなった古狐先生のあとに美人の小幡医師が赴任してきます。 物語が進むにつれて医師の腕の良い小幡医師の印象がくるくると変わってくるのがおもしろいと思いました。 一止と同じ視点で読んでいる一読者としては、外村師長に栗原先生は人を見る目がないですね、といわれてしまうわけですが。
今回もハルのあたたかさと東西看護師の魅力がひかっていて楽しめました。
漱石の「牛のように図々しく進んで行くのが大事です」という言葉が心にしみてきます。


2014年2月21日

柳内たくみのゲート5を読みました。 自衛隊彼の地にて、斯く戦えりという副題の5巻目、冥門編でした。
自衛隊が特地で戦闘を行っているその時、ゲートの現れた銀座では中国の工作員たちがデモ隊を装って警官隊を制圧しゲートを占拠してしまいます。 このため、特地で戦闘中の自衛隊には退去命令が発せられてしまいます。 あと一歩でピニャたちを勝利に導くことができるところなのに、自衛隊は撤収することになってしまうのでした。
中国の工作員がこのような暴挙に出たのは、ゲートの開閉をする能力を持ったレレイを確保したからなのでした。 中国の工作員が門を破壊する行動に出たため門は閉じてしまうのですが、それは特地と地球双方に大きなダメージを与えることになってしまうのでした。
おもしろく読んでいたゲートの物語でしたが、あっさりと終わってしまいました。 エンディングの描き込みがイマイチ納得出来なかったのは残念です。


2014年2月16日

池井戸潤のオレたち花のバブル組を読みました。 オレたちバブル入行組の続編の半沢直樹シリーズの2冊目でした。
半沢直樹が前作の顛末の結果、営業第二部次長になったところに、伊勢島ホテルの案件が持ち込まれます。 翌月に予定されている金融庁の検査はこの伊勢島ホテルをターゲットにしているということで、銀行の命運が半沢の双肩にかかるという事態になってしまいます。 行内の派閥争いも関連して半沢は苦境に立たされますが、半沢らしいスジを通すやりかたで金融庁の検査を乗り切っていきます。
この物語では、強い半沢直樹と対照的な心を病んだことがある近藤が登場します。 近藤は出世ルートを外れ、タミヤ電機という中堅の会社に出向を命じられて総務部長として仕事をしていますが、田宮社長や部下の野田課長は銀行のひも付きの近藤と距離を取っているため閉塞感にさいなまれています。 しかし、自分の本分をなすために彼も行動していくのでした。
半沢直樹の活躍もおもしろいのですが、近藤の復活の物語もよかったと思いました。


2014年2月14日

中道裕大の放課後さいころ倶楽部2を読みました。
女子高校生三人組がボードゲームを楽しむというボードゲーム紹介のコミックでした。 今回紹介されているゲームはガイスター、インカの黄金、カタンの開拓者たち、テレストレーション、ファウナ、と言った日本語版も発売されている定番ゲーム5つでした。 まあ、マキちゃんが登場したときに髑髏と薔薇が紹介されるんだろう、と思ってしまったのは作者の引っかけでしょうか。
ガイスターは定番ゲームなのに私は所持していないのでそのうち手に入れておこうと思いました。


2014年2月12日

吉野源三郎の君たちはどう生きるかを読みました。 1934年に当時の中学生を対象として書かれた、人はどのように生きるか、ということをテーマにした本でした。
中学1年生のコペル君は父親を亡くして母親と生活しています。 コペル君は潤一という名前の少年ですが、あるきっかけのあと、叔父さんからコペル君と呼ばれることになります。 叔父さんはコペル君の行動を見守ってくれていて、コペル君がいろいろ考えたことに対しての解説をノートに記録してくれます。
東京の街をビルの屋上から見て考えたこと、学校でのいじめに対する態度、貧しい友の生活を見ての感想、約束が守れなかったことに対する後悔、といったコペル君の経験が物語られ、それぞれの経験に対する叔父さんの助言が語られます。
日本が太平洋戦争に突入していく前夜、このような本が出版されていたということはすばらしいことだと思いました。


2014年2月11日

池井戸潤のオレたちバブル入行組を読みました。
東京中央銀行大阪支店に勤務する半沢直樹はバブル入行組。 ところが、人事部から異動してきた支店長浅野の策略により、融資課長として焦げ付いた不良債権の責任を取らされそうになります。 その策略を覆すためには、計画倒産した会社の債権を回収することが絶対条件になります。 半沢直樹の反撃が始まります。
最初に明らかになった状況の裏にもう一つの策略が隠れている点は面白いと思ったのですが、読み終わった後の爽快感に欠けるのはちょっと残念でした。 直樹の妻の花のコメントが的を射ていて面白いと思いました。


2014年2月8日

村上春樹の色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年を読みました。
多崎つくるは36歳。駅を作る仕事をしています。 彼が高校生の頃に仲のよかったアカ、アオ、シロ、クロという四人とボランティアをきっかけとして友人になります。 自分は色彩を持たないけれど、五人は理想的な友人関係だと思っていました。
ところが、大学に入学した後、彼は仲間たちから唐突に拒否されてしまいます。 彼はショックを受け、ひどく落ち込んでしまい、そのトラウマをずっと抱えて生きてきました。
彼の新しい恋人沙羅は、その時に何が起こったのかを友人たちに会って聞き出すことによって、多崎つくるの中にこごっている何かを解きほぐすことが出来ると予言します。 彼は高校時代に過ごした街や遠くヘルシンキに友人を訪ね、当時何が起こったのか、それによって仲間たちにもいろいろな影響があったことを知ります。 その巡礼の旅により彼の心のしこりはゆっくりと融けていくのでした。


2014年2月2日

百田尚樹の幸福な生活を読みました。 驚きの結末が待っているショートショート集でした。
それぞれの物語の結末が章の最後のページをめくったところに1行で書かれていてうまく編集されています。 その1行を読んで、ゾクリとするような怖い結末もいくつかありました。


2014年1月30日

三上延のビブリア古書堂の事件手帖5を読みました。 栞子さんと繋がりの時という副題のついたビブリア古書堂の事件手帖シリーズの5冊目でした。
今巻でも古書にまつわる人間模様と栞子さんの謎解きがが楽しめます。 手塚治虫のブラックジャックに関する章は収録されている物語や収録される基準などの話題があって面白く読みました。 もちろん、その本を大切にしている人たちの物語も良かったのでした。
謎解きがビブリア古書堂に持ち込まれるのですが、篠川智恵子が裏で画策していることが分かってきます。 五浦からプロポーズされている栞子は智恵子と会うことによって自分の気持ちを固めようと考えるのでした。
物語は五浦と栞子さんの視点から語られていきますが、断章という形で別の登場人物の視点でも語られているのが新鮮でした。 そして、今巻の最後にまた事件が起きてしまいます。 剛力彩芽主演のドラマの中で事件が起きるときの音楽が頭の中に鳴り響いたのでした。


2014年1月27日

絲山秋子の絲的炊事記を読みました。 絲山秋子が毎回テーマを決めて料理をするエッセイでした。
例えば、一回目のテーマは「力パスタ」、カパスタではなく、ちからパスタです。 もちといかすみパスタの相性はどうだろうか。 実は、美味しかった、と書かれています。
何しろ絲山秋子が書くエッセイですから、腹を抱えて笑えることもあれば、ちょっとしんみりしてしまうこともあります。 そして、一つのテーマを決めたら一直線で突き進む突進力は見事です。
墨絵で描かれている挿絵も味があって面白く読みました。


2014年1月27日

江國香織の雪だるまの雪子ちゃんを読みました。
野生の雪だるま、雪子ちゃんが主人公の童話でした。 雪子ちゃんが空から振ってきたとき、画家の百合子さんと出会いました。 百合子さんは自分の家の物置を雪子ちゃんに貸してあげることにしました。
雪子ちゃんは野生の雪だるまなので、食事もするし、家に住んでいるねずみと遊んだりします。 学校に出かけていって一緒に勉強したり、百合子さんのところでトランプをして遊んだりします。 かわいい雪子ちゃんの行動がほほえましい物語でした。


2014年1月27日

三浦しをんの天国旅行を読みました。
「死」をテーマにして書かれた短編集でした。 死を覚悟したとき、誰かの死に立ち会ってしまったとき、人は何を考えるのか。
物語として気に入ったのは「初盆の客」でした。 ウメおばあさんの初盆に焼香に訪れた客は、おばあさんの孫娘とウメおばあさんに関する昔の話を懐かしそうに話します。 ところが、その客は忽然と消えてしまいます。 不思議に思った孫娘は逆にその客の家を訪れるのですが、その客はずいぶん昔に亡くなった人だったのでした。 昔のエピソードを聞いていくうちにウメおばあさんの若い頃の姿が明らかになってきます。
この本に収録されている物語は暗い物語が多いのですが、これはちょっと気持ちが温かくなる物語でした。


2014年1月18日

高田郁の想い雲を読みました。 江戸を舞台に料理をテーマにした物語、みをつくし料理帖シリーズの三巻目でした。
元飯田橋に引っ越して開店したつる屋では、澪の料理を食べたいという客で繁盛していました。 ところが、神田御台所町の旧つる屋跡地を借りて女料理人が料理を出す偽物のつる屋という店が開店していたのでした。 憤慨する澪、その顛末を聞いて小松崎は心配を口にするのでした。 小松崎の心配の通りその店はつる屋の看板を詐称するだけでなく、食あたりを出してしまいます。 そしてこれによりつる屋の営業にも影響が出てしまいます。 また客を招き入れるためにはどうすればいいか、澪の挑戦がはじまります。
いろいろな障害があっても美味しい料理をお客様に食べていただくのが一番と料理に精を出す澪の姿が描かれています。 読み終えると、ちょっと気持ちが温かくなる物語なのでした。


2014年1月17日

池井戸潤の下町ロケットを読みました。
下町の中小企業佃製作所の社長佃航平は自分が開発責任者だった国産ロケットが打ち上げに失敗したという過去を持っています。 いまは、自分の会社を経営していますが、ロケット打ち上げのキーデバイスの開発も継続して行っています。
物語の前半では、佃製作所は主要取引先から取引の中止を申し渡され、さらに自社が開発したはずの技術で特許訴訟ゴロの会社から特許侵害の訴えを受けるという、危機的状況に陥ってしまいます。 技術的な訴訟に理解の深い弁護士の協力を得ることにより、佃製作所は危機を脱することが出来ます。
しかし、国産ロケットの開発をしている大企業帝国重工からキーデバイスであるバルブの特許使用権の許諾依頼があり、社内は二つに分裂してしまいます。 特許使用権を許諾して手っ取り早く確実にお金を手に入れたいと考える社員たちに、佃社長は「大型ロケットにキーデバイスを供給すれば何かが見えてくるはずだ。このプロジェクトをやり遂げることでうちが得るノウハウは計り知れない。」と説得します。 しかし、社員たちは部品供給のテストにパスしなければ特許使用権許諾で落ち着くだろうと考えます。 ところが、帝国重工の検査担当者の中小企業を見下げた態度に佃製作所の社員たちはプライドを傷つけられ、部品供給のテストに佃プライドで臨んでしまうことになってしまいます。
社長の佃、銀行からの出向者殿村、会社を支えてくれる社員たち、研究者である元妻沙耶、娘の利菜、神谷弁護士、帝国重工の財前、といった登場人物たちがいきいきと物語の中で活躍します。 この小説を読んで、自分は仕事に夢を持って生きているか、と考えてしまいました。


2014年1月12日

あずまきよひこのよつばと!を大人買いしました。
主人公のよつばはちょっと変わった小さな女の子。 でも、好奇心いっぱい、毎日楽しく生活しています。
よつばのとーちゃん、隣の家の3姉妹(あさぎ、風香、恵那)、とーちゃんの友達ジャンボ、恵那の友達みうらちゃんと言った登場人物たちとよつばの楽しい毎日が描かれています。
いっぺんに読んでしまうのがもったいないので、少しずつ読んでいきましょう。


2014年1月12日

筒井康隆の旅のラゴスを読みました。
北方の生まれた街を出てラゴスは南方の目的地に向かって旅をしていきます。 ラゴスの世界は、テレポーテーションや精神感応の能力を持つ住人たちが住む古代世界のような場所です。
物語が進むにつれて、この世界の成り立ち、そしてラゴスの目的が明らかになってきます。 ラゴスは旅の終わりに自分の生まれた街に戻りますが、やがて最後の旅に旅立ちます。
ファンタジーとSFが融合したような世界を舞台に、ラゴスの旅が静かな物語として描かれているので気に入りました。


2014年1月8日

加納朋子のぐるぐる猿と歌う鳥を読みました。
東京の小学生高見 森(たかみ しん)は高いところが大好きな向こう見ずの少年です。 森は公園の隣の家のあやという女の子と友達になり、一緒に遊んでいたのですが、森が誘拐されそうになった事件のあと忽然と姿を消してしまいます。
森は父親の転勤で北九州市に行くことになり、そこで気の強い女の子十時あや、気の弱い男の子ココちゃん、竹本5兄弟といった友人たちと学校生活をすることになります。 それにパックという正体不明の少年が絡んで物語が進んでいきます。
プロローグで消えてしまったあやは誰なのか、パックはいったい誰なのか、というようなことが明らかになるにつれて、ジュブナイルの顔をした小説の正体が見えてきます。
巻末の解説で知ったのですが、加納朋子は最近大きな病気をしたそうで、一時は覚悟をきめたそうです。 身体を大事に、まだまだ作品を発表してもらいたいと思ったのでした。


2014年1月8日

仁木英之の先生の隠しごとを読みました。 僕僕先生シリーズの5作目です。
前作の最後で僕僕先生はいにしえの神々の戦いに参戦していたということが語られましたが、今作ではその続きでその時の戦友の生まれ変わりのような青年ラクスが登場します。 ラクスの作るユートピアのような理想の国は、その裏に奴隷のように働いている人間たちや、非人間的な殺人者たちによって維持されているのでした。
僕僕はそのような事を知ってか知らずかラクスの妻になることを了承してしまいます。 王弁たちは僕僕の目を覚ますために行動を起こすのですが、僕僕はもちろん全てを知っていたのでした。
このシリーズは僕僕や王弁たちのいろいろな人たちとの出会いが面白いのですが、今回はちょっと失敗作かな、と思いました。


2014年1月3日

村上春樹の村上ラヂオを読みました。
以前読んだことがあったか忘れてしまったけど、本屋で見かけたので買って読みました。 村上春樹らしいこだわりがほんわりとあったかくなるエッセイでした。
寒い日はオーバーの中に子犬を入れて歩きたい。


2014年1月1日

今年も、面白そうな本を探して読んでいきたいと思います。 そしてなるべく本を選ぶときに参考になるようなコメントを記録していきたいと思います。 どうぞよろしくお願いいたします。
新年に当たり、konnokのお勧めの100冊を更新してみました。




2013年に読んだ本の感想