2013年に読んだ本の感想


ブクログブクログに読んだ本の感想をアップしています。


2013年12月28日

夏海公司のなれる!SE 11を読みました。 絶対?管理職宣言という副題のついた、なれる!SEシリーズの11冊目です。
スルガシステムの新入社員、桜坂工兵は毎回の無茶振りも何のその、仕事をこなしているのですが、今回はスルガシステムが買収した会社の管理作業を振られてしまいます。 六本松社長が利益が上がるはずと言って買収した会社は、コスト割れの保守契約案件に苦しんでいたのでした。
部長代理という肩書きをもらってしまった工兵は収支を改善しようと奮闘するのですが、当の会社の社員からの協力も得られず、このまま行くと会社を精算するしかない、という絶体絶命の状況になってしまいます。
物語はもちろん工兵の活躍により、打開策が見つかってめでたしめでたしとなるのですが、コスト割れの保守案件などということは他人事じゃないよなあ、と思ったのでした。


2013年12月26日

池井戸潤の空飛ぶタイヤを読みました。
小さな運送会社を経営する赤松はホープ自動車製のトラックを使っていました。 ところが、会社のトラックの車輪が外れるという事故が起きてしまいます。 車輪は道を歩いていた主婦を直撃して、その主婦は亡くなってしまいます。
ホープ自動車からは整備不良という診断結果が返ってきますが、赤松はその診断結果の裏にリコール隠しがあるのではないかと疑います。
赤松は整備不良が原因で過失致死の家宅捜索を受け、会社の信用も落ちてしまい、主要な取引先からも取引を断られるという四面楚歌の状態になってしまいます。 しかし、亡くなった主婦の無念を晴らすためにホープ自動車に戦いを挑むのでした。
赤松の無力感、仲間からの激励、状況の変化に対する一喜一憂が我が身のように感じられました。 エリート意識に凝り固まるホープ自動車の役員・社員たちも血の通った人間として描かれていて彼らの行動に憤りを感じてしまいました。
とても面白く読みました。池井戸潤の他の本も読んでみようと思ったのでした。


2013年12月20日

高田郁の花散らしの雨を読みました。 江戸を舞台に料理をテーマにした物語、みをつくし料理帖シリーズの二巻目でした。
今回も、下がり眉のヒロイン澪がいろいろな料理をお客様にふるまいます。 各章のテーマも、登龍楼から料理のレシピを盗まれてしまうお話、店を手伝ってくれた人がはしかにかかってしまうお話、お侍さんはキュウリを食べないというお話など、澪のまわりの出来事が物語られていきます。
料理がまつわるエピソードなので、おいしい料理を食べたいなあと思いながら読んだのでした。


2013年12月18日

東野圭吾の疾風ロンドを読みました。
雪山に隠された細菌兵器の入ったカプセルをスキーヤーたちが探す物語でした。 雪山をスキーで滑る描写を読んだときは、若い頃に戻ってゲレンデを滑ってみたいなあ、と感じたのでした。
感想としては、謎解きがあっさりしているし、登場人物もステレオタイプだし、エンディングもちょっと物足りないと感じました。 東野圭吾の小説としてはちょっと残念な感じでした。


2013年12月15日

R.L.スティーブンソンのびんの悪魔を読みました。
びんの中にすむ悪魔を題材にしたファンタジーの童話でした。 ハワイに住む青年ケアウエはひょんなことから悪魔の入ったびんを譲り受けます。 このびんを持っている人間はびんの悪魔の力を借りて何でも望みが叶います。
しかし、このびんを持ったまま死んでしまうと、地獄で永遠の業火に焼かれてしまうのです。 しかも、買ったときより1セントでも安い価格で別の人に譲らないと、そのびんはいつの間にか戻ってきてしまうのでした。
この本を題材にした、 The Bottle Imp というカードゲーム(変則トリックテイキング)を気に入っているので、買って読んでみました。 ゲームは原作に忠実に作られていて、カードには物語のイラストなども描かれていたので、再度確認してニヤリとしてしまいました。


2013年12月14日

三浦しをんの私が語りはじめた彼はを読みました。 古代史を専門とする大学教授村川融は妻の他に愛人を持ち、その後妻と離婚して愛人と生活していきます。
彼に関わる人物たちの視点から物語が語られます。 それぞれの人物たちが心の中に暗い情念を抱えて生きていく様子が描かれていきます。
三浦しをんの著作は若者が主人公の青春の物語と腐女子の明るいエッセイしか読んだことがなかったので、こんな物語も書く人なんだなあと再認識したのでした。


2013年12月14日

畠中恵のやなりいなりを読みました。 江戸時代の妖が活躍するしゃばけシリーズの10冊目です。
今巻は料理をテーマにした短編が収録されています。 シリーズに登場する料理とそのレシピが紹介され、その後にその料理に関わるエピソードが展開されます。
とは言え、今巻はちょっと謎解きもキレがなく、ちょっとマンネリ気味かなあ、と感じました。


2013年12月10日

七尾与史の死亡フラグが立ちましたを読みました。
「死神」と呼ばれる殺し屋は、ターゲットの人物を事故死に見せかけて殺すことが出来るのでした。 周到に幾重にも張り巡らされている偶然に見せかけたトラップで、ターゲットは24時間以内に事故死としか見えない死に方をしてしまうのでした。
あるヤクザのボスは、バナナの皮ですべって転倒し、たまたまそこに置いてあった(!)鉄アレイに頭をぶつけて死んでしまいます。 都市伝説とも思える「死神」を追って、ルポライターの陣内は取材を続けるのですが...
荒唐無稽な設定にもかかわらず、つい物語に引き込まれてあっという間に読み終えてしまいました。


2013年12月9日

佐藤正午の身の上話を読みました。
ヒロイン、古川ミチルは地方都市に住む23歳の書店員です。 ミチルは「土手の柳は風まかせ」という評価の通り、自己主張も少なく周囲に流されやすい性格です。
物語の冒頭、ミチルは不倫相手の豊増を追って東京に行ってしまいます。 強い主張もなく流されるままに東京に来てしまったミチルは、子供の頃からの知人、竹井を頼ってそのマンションに転がり込みます。 そして、高額当選の宝くじを入手してしまったところから、彼女の運命が狂いだすのでした。 高額のお金を持っているという意識が、彼女を追い詰めていきます。
ところで、終盤物語が急展開するところで竹井が重要な役回りを担うのですが、この人物の得体の知れなさは怖いと思いました。
人々は宝くじを気軽に買いますが、運良く(運悪く?)高額当選してしまった場合には、当選者には厳しい試練が待っていて、最悪の場合は身の破滅もありそうだなあ、と思ったのでした。


2013年11月30日

瀬尾まいこの戸村飯店青春100連発を読みました。
大阪の庶民的な中華料理屋戸村飯店の兄弟ヘイスケとコウスケの物語でした。 見た目が良く要領の良い兄ヘイスケは、高校卒業後、家を出て東京に行きレストランでアルバイトを始めます。 そこで知り合った仲間たちと自分を見つめ直します。 ボケがうまく店の客たちにも愛されているコウスケは家を継ぐつもりでしたが、父親から言われて東京の大学に進学することになります。
兄弟が二人とも素直でやさしい気持ちの子供たちなので、暖かな気持ちで物語を楽しみました。
家を出る長男に父親が渡した紙封筒は長男は開けるつもりはなかったのでしたが、兄弟がそろったときにその封筒を開けてみるとお金と一緒に手紙が入っていました。 「おまえがこれを開けるときは、終わったときだろう。50万円くらいではどうしようもないようになったんだろう。帰ってこい」 この父親の気持ちはよく分かるなあ、と思ったのでした。


2013年11月28日

海堂尊のジェネラル・ルージュの伝説を読みました。
ジェネラル・ルージュ速水医師の新人時代、ジェネラル・ルージュの凱旋の裏話、そして速水医師が去った後の東城大の時期、を描いた短編集でした。 速水医師と花房看護師の新人時代の初々しい物語が気に入りました。
海堂尊の自分史や自作解説、登場人物一覧なども書かれていました。(が、ななめ読みしました)


2013年11月28日

高田郁の八朔の雪を読みました。 みをつくし料理帖というシリーズの江戸時代を舞台に料理をテーマにした物語でした。
上方育ちの澪は水害で両親を失い、天満一兆庵の女将さんに拾われます。 料理の修業をさせてもらえるところで、天満一兆庵は火事にあってしまい、江戸に流れてきます。 ここでも、つる屋の種市に拾われ、料理を始めるのですが、いろいろな災難に遭ってしまいます。
易者の見立ての「雲外蒼天」(つらいことも多いが、それを乗り越えれば青い空が広がる)という言葉を支えに料理に精進する澪なのでした。


2013年11月28日

夢枕獏の陰陽師 醍醐の巻を読みました。 陰陽師シリーズの最新刊でした。 陰陽師の安倍晴明と笛の名手源博雅が主人公の伝奇小説です。 今回もマンネリ感はあるものの、面白く読みました。


2013年11月23日

アンソロジーのチーズと塩と豆とを読みました。 角田光代、井上荒野、森絵都、江國香織というおしゃれな小説を書く女性作家たちの短編集でした。 西ヨーロッパを舞台にした、美味しく食べることと生きることをテーマにした物語が語られます。
一番気に入ったのは森絵都のブレノワールでした。 伝統を重んじて正直に信心深く生きているブルゴーニュ地域、家族のその息苦しさを嫌って家を飛び出してしまい、シェフの修行をしているジャン。 ジャンは母の危篤の知らせを聞いて家に戻りますが、母はジャンと会話をした翌日に亡くなってしまいます。 街に戻ったジャンはシェフの修行を続けていきますが、ブルゴーニュ地域に戻って美味しい料理を出す民宿を開くことを決意します。 そして、ジャンは母が大切に守っていた料理がどのような意味を持つかを理解するのでした。


2013年11月21日

海堂尊の極北ラプソディを読みました。 極北クレイマーの続編で、ジェネラル・ルージュの凱旋とも物語のつながりがある小説でした。
財政破綻した極北市の市民病院は病院長世良医師の判断により、救急患者の受け入れを中止しました。 そして救急患者は隣の雪見市の救急センターに全面委託することになったのでした。 極北市民病院は世良医師、今中医師、角田師長、佐竹看護師の4名だけで医療を行っていましたが、その中から今中医師は雪見市の救急センターに派遣されることになります。 そこには、将軍速見医師、花房師長をはじめとするスタッフによりドクターヘリの救急体制が敷かれていたのでした。
極北市民病院を建て直そうとして奮闘する世良医師、救急センターを支えている速見医師、そして神威島で地域医療を続けている久世医師といった魅力的な登場人物たちが、地域医療を支えていく姿が描かれます。
花房師長の隠された物語、後藤医師のその後、CSの越川やパイロット大月の過去、魅力的な五條看護師など、登場人物のエピソードも楽しめました。


2013年11月18日

海堂尊のマドンナ・ヴェルデを読みました。
ジーン・ワルツの続編で、同じ期間の物語でした。 曾根崎理恵は日本ではまだ許されていない代理母出産を自分の卵子を使って行おうとします。 理恵は代理母の役割を理恵の実の母の山吹みどりに頼み込むのでした。 ジーン・ワルツが表ならマドンナ・ヴェルデは裏ということで、物語の期間は同じですが、人物の描かれ方も対照的です。
今回はライオン・ユミちゃんの「大切なのはこの双子ちゃんたち」という言葉が気に入りました。


2013年11月16日

養老孟司と宮崎駿の虫眼とアニ眼を読みました。
現在の子供たちは自然がどのようなものかを知ることなく、火や刃物を扱うことなく育っている。 それが、子供たちの生きていくための武装が欠けているという状況を生み出している。
どのようにしたら、日本人が活力を持つことが出来るだろう、ということが対談されています。
巻頭の宮崎駿の子育てに理想の街という絵と宮崎駿らしいコメントが面白いと思いました。


2013年11月9日

貴志祐介の雀蜂を読みました。
小説家安斎智哉は雪に閉じ込められた山荘で目を覚まします。 ところが、その山荘のボイラー室には雀蜂の巣が作られていたのでした。
一度雀蜂に刺されたことがある安斎は、今度蜂に刺されてしまうと重度のアナフィラキシーショックで死に至ることもあります。 外に助けを求めようとしても、通信手段は切断されており、一緒にいたはずの妻の夢子は何故か慌てて外出してしまったようで、絶体絶命の状況なのでした。 安斎は少しでも状況を改善しようと戦いを挑むのでしたが...
そして、最後に大きなどんでん返しが用意されています。 プロローグで物語られている夢の記述もどんでん返しの伏線になっているのでした。
終盤のどんでん返しは面白かったのですが、貴志祐介の小説としてはちょっと期待はずれかなあと思ってしまいました。


2013年11月6日

伊坂幸太郎のマリアビートルを読みました。 グラスホッパーの続編でした。
今回の舞台は東京から盛岡まで走り抜ける新幹線の中です。 殺し屋の七尾は、東京駅で新幹線に乗ってトランクを盗み上野で降りる、という簡単なお仕事を引き受けます。 ところが、運に見放されている七尾は次々とトラブルに巻き込まれ、結局盛岡まで新幹線に乗っていくことになってしまいます。
この電車には数組の殺し屋たちが乗り込んでいて、互いに抗争しながら一人ずつ殺されていきます。
しかし、この物語の中で殺し合いよりずっと不気味な存在は中学生の王子です。 表面上は真面目な中学生をよそおいながら、他人を脅したり恐怖を与えたりして自分の意のままに動かそうとするのでした。 その悪意は、読んでいて気分が悪くなるほどです。 終盤に登場する木村のじいさんは悪意を臭いで感じる能力があり、王子に対して「おまえは臭い」と言い放ちます。
このような悪意に対抗するにはどのような能力・スキルが必要なんだろうな、と考えてしまいました。


2013年11月2日

ジェフリー・アーチャーの死もまた我等なりを読みました。 時のみぞ知るの続編でクリフトン年代記第2部とサブタイトルがついています。
第一部では学生だった、主人公ハリー、その親友ジャイルズ、親友の妹のエマたちが第二次世界大戦の時代の中、それぞれの立場で運命を切り開いていきます。 そして乗っていた車が地雷を踏んでしまったために負傷したハリーと、トブルクでドイツ軍の捕虜になりその後脱走に成功したジャイルズはイギリスに戻ります。 そこでは、バリントン家の相続に関わる重大な出来事が二人を待っているのでした。
ジャイルズの父親ヒューゴーやハリーの母親メイジーをはじめとした大人たちも魅力的に描かれています。 物語の展開が早く、想定外のことが次々と起こるので、面白く読むことが出来ました。


2013年10月26日

上橋菜穂子の獣の奏者 外伝(刹那)を読みました。 獣の奏者の物語の外伝として、エリンやエサルが女性としてどのように生きたのかが描かれています。
刹那では、エリンがイアルと恋に落ち、身ごもってジェシを出産するまでのいきさつが描かれます。 王国の行く末を左右しかねない立場になってしまったエリンの、それでも愛する人の子供を持ちたいという希望が暖かく感じました。
秘め事ではエリンの良き理解者であるエサルの若い頃の情熱的な恋の顛末が描かれます。 どちらの物語も、本編では落ち着いて見える女性たちの情熱的な面が描かれていて魅力的でした。
そして、エリンの母ソヨンを描いた掌編、綿毛はエリンがどのように育てられたのかが描かれています。 私たちの祖母より前の世代は子供を産むのも命がけだったんだよなあ、それでも彼女たちが子供を残したから今の私がいるんだよなあ、と思ったのでした。


2013年10月24日

西村義樹と野矢茂樹の言語学の教室を読みました。 哲学者と学ぶ認知言語学という副題のついている、認知言語学の解説書でした。
私は言語学というと文法構文と語彙が独立して構成されているように感じてしまいます。(コンピュータの言語を扱っているからかもしれませんが) しかし、現代の言語学の最先端では、文法は意味から独立することはできない、というふうに理解されているとのこと。 つまり文法的に正しい文のようでも意味的に正しくなければ正しい文とは見なさないということです。
また、語彙というものは中心となる典型的な意味といくぶん意味的に外れる周辺的な意味を含めて構成されるものだと理解されているとのこと。 例えば、鳥という語彙では典型的な鳥はスズメやツバメだけど、ペンギンやダチョウも鳥の一種ではある、というように。
難しくて理解が及ばないところも多かったのですが、例題や議論は面白く読みました。


2013年10月24日

米澤穂信の犬はどこだを読みました。
ある事情で会社を退職せざるを得なくなってしまった主人公紺屋長一郎は紺屋S&Rという調査事務所を開設します。 この事務所の業務内容は失踪した犬を探して飼い主に返してあげることです。
ところが、持ち込まれた案件は、失踪した若い女性の捜索と古文書の解読なのでした。 紺屋と押しかけ調査員の半田平吉は調査を開始するのですが...
この二つの案件は実は関連していることがわかってきます。 そして、女性の失踪事件は意外な様相を見せてくるのでした。
紺屋の妹やネットの向こうで紺屋を助けてくれる友人など多彩な登場人物たちも魅力的でした。


2013年10月19日

有村浩のヒア・カムズ・ザ・サンを読みました。 有村浩と演劇集団がコラボした舞台化を視野に入れた物語でした。
真也は物に残された人間の記憶を見ることが出来る。 真也と同僚のカオルは20年ぶりにアメリカから帰ってくるカオルの父親を空港まで迎えに行くが、そこで見た記憶は聞いた話とは全く違う物だった...
というプロットから全く違う物語(しかもどちらも面白い)を2作書いてしまうのは有村浩と言う作家の才能なんだろうな、と思ってしまいます。


2013年10月12日

三浦しをんの乙女なげやりを読みました。
三浦しをんが自分の趣味と妄想をテーマにだらだらと日常を書いたエッセイでした。 少女漫画やハリウッドスターなどに対するオタク趣味が奔放に描かれています。
書かれている内容は長女の普段の発言に似ているような気がするので、今度長女に読ませて感想を聞いてみよう。
この中で「本」に対する感じ方の話題が出ています。 三浦しをんの友人が初めてのデートで待ち合わせて「待たせた?」「本を読んでいたから大丈夫」というやりとりがありました。 ところが相手の読んでいた「本」が少年ジャンプだったのにとても大きな違和感を感じたというくだりです。
konnok的にはコミックの単行本は「本」だけど、少年ジャンプや週刊ポストやAERAは「本」じゃない、と感じます。 三浦しをんの感じ方である、「上司とうまく行くためには」というようなハウツー本は「本」じゃない、というのも微妙なところです。 世間一般はどうなんだろうか。気になります。


2013年10月7日

柳内たくみのゲート4を読みました。 自衛隊彼の地にて、斯く戦えりという副題の4巻目、総撃編でした。
今巻では、日本の銀座と特地の間に開いた「門」ゲートが、双方の世界にひずみを広げているという事が明らかにされます。 双方の世界の破滅を防ぐにはゲートを閉じる必要があるのでした。 自衛隊が日本に帰り、門が閉じるということが現実になることになったため、フォルマル伯爵家の暫定政権はシェリーを特使として日本に派遣し、ゾルザルの軍隊を殲滅することを約束させるのでした。
自衛隊とゾルザル軍の激突が描かれますが、特地のモンスターを動員したゾルザル軍も善戦します。 そしてゾルザルは精鋭の舞台を率いてフォルマル伯爵家を急襲するのでした。 さて、暫定政権の命運はいかに、次巻をお楽しみに。
指輪物語はフロドたちの少人数の冒険とエルフやドワーフたちと闇の軍団の大規模戦闘が交互に描かれています。 ゲートも同じような構成になっていて、伊丹たちのチームが物語の核心に近づいて謎解きをする物語と、自衛隊と帝国軍の激突が交互に描かれています。 まあ、伊丹が連れているメンバーは女性エルフや少女姿の亜神といったオタク好みのメンバーなので、雰囲気はまるっきり違いますが。


2013年10月2日

本多孝好のMEMORYを読みました。
MOMENT、WILLに続く神田・森野の物語3冊目でした。
MOMENTは、神田が「死を前にした人の願いを聞いてくれる黒衣の仕事人」として働く物語でした。 WILLは、前作にも登場する葬儀屋の森野が主人公で、葬儀屋に届く死者のメッセージが解き明かされる物語でした。 そして今作は神田と森野に関連するエピソードが描かれた短編集でした。
途中までは、ピントがぼやけた物語たちだなあ、と思って読んでいたのでした。 ところが、最後の1ページを読んだときに、ああ、それぞれのエピソードはこの最後の1ページに収斂するために書かれた物語たちだったんだなあ、と納得しました。 それぞれの物語がしっくりと収まるべきところに収まったのでした。


2013年9月31日

貴志祐介のダークゾーンを読みました。
奨励会の三段、20歳の塚田裕史は異世界で目を覚まします。 そこは、将棋に似たルールで人間が駒となって闘う戦場だったのでした。 7番勝負で4勝した陣営が勝つ、負けた陣営は消滅させられてしまうというルールで血みどろの戦いが始まります。
1局が終わる毎に断章という形で塚田の記憶が戻ってきます。 なぜ、このような異世界で塚田が闘うことになったのかが解き明かされていきます。
ダークゾーンと呼ばれる異世界の軍艦島を舞台に、将棋をベースにして戦術級シミュレーションウォーゲームや中国将棋のテイストを加えたゲームが作られています。 ゲームの基本的なルールは序盤で説明されますが、そのルールをもとにした戦術や戦略がどのように組み立てられるのか、ということが1局1局の戦闘の様子として描かれていきます。 塚田と対戦相手の奥本が知力の限りを尽くして闘う描写が(グロテスクですが)圧巻でした。
konnokの好きなフレドリックブラウンの闘技場という短編がモチーフになっているというということで、そういう意味でも気に入りました。


2013年9月27日

富士見書房の「人狼」カード&プレイブックを読みました。 「嘘つき」を見つける推理ゲームという副題がついています。
タブラの狼に代表される人狼ゲームの解説書でした。 カードが付属していて、初心者でも遊べるというのはいいのですが、解説されている情報に目新しい情報がなかったのは残念でした。


2013年9月27日

徳岡正肇のアプリでボドゲを読みました。 スマホやタブレットで遊ぶ卓上ゲームという副題がついています。
iPhoneやiPad、androidなどで遊べるボードゲームが紹介されています。 定番のカタンやカルカソンヌはもちろん、ケルト、プエルトリコ、ラー、メディチやラミーキューブなど45本のゲームが紹介されていました。 カタンやプエルトリコなどはプレイヤーのスキルの差が大きいと仲間とのボードゲームではなかなか勝てませんが、アプリなら短時間で練習することが出来るので、私も利用しています。
ちなみに、45本紹介されているうち、私のiPadにインストールしているのは20本ありましたが、この本で紹介されていないゲームも10本あったので、アプリになっているゲームは結構あるんだなあ、と再認識しました。 アプリになっているゲームは一般に遊ばれているゲームだと考えられるので、仲間とも遊べるように準備しておこうと思いました。


2013年9月23日

中道裕大の放課後さいころ倶楽部を読みました。 すごろくやが協力している、ボードゲーム漫画と言うよりはボードゲーム販促用の冊子のような趣のコミックでした。
今巻で取りあげられているのは、マラケシュ、ゴキブリポーカー、ねことねずみの大レース、はげたかの餌食、ミラーズホローの人狼、でした。 いずれも、面白さが定番のゲームで、うまく紹介されていると思いました。
以前、ミラーズホローの人狼を遊んでもらったときに、なんで霊媒師のカードがないんだろう、と不思議に思ったことがありました。 このゲームでは吊られたり喰い殺されたりしたら役職カードを公開するというルールなんですね。 永年の疑問が一つ解決しました。


2013年9月23日

坂口三千代のクラクラ日記を読みました。 坂口安吾の妻三千代が安吾との結婚生活を書いた回想録でした。
安吾は覚醒剤を常用していたため、時々薬が原因で暴れることがありました。 それが原因で友人と仲違いし、引越しを余儀無くされることも多かったようです。 そんな中でも、明るく安吾に従って生活を続けた三千代の健気さが心にせまってきます。 こんな女性を妻に出来た坂口安吾は幸せだったんじゃないかと思いました。
この物語が永く読者に愛されているのも、ビブリア古書堂で取り上げられているのも、うなずけますね。


2013年9月19日

ネレ・ノイハウスの深い疵を読みました。
ユダヤ人で元アメリカ大統領顧問まで務めた男性がドイツに戻った時に拳銃で殺されてしまいます。 司法解剖の結果、その男性はナチスの親衛隊に入っていたことが判明します。 なぜ、ナチスの親衛隊にいた男性がユダヤ人を騙って生活していたのか。
そして、第2第3の殺人事件が起きてしまいます。 オリバーとピアは事件の解決に向けて捜査を開始します。 しかし、入り組んだ謎を解きほぐしているうちにさらに殺人事件が発生してしまいます。 最後は事件の核心に到達したピアは殺人犯に命を奪われそうになってしまうのでした。
登場人物が多いので、それぞれの人物の関連を頭に入れながら物語を追っていく必要がありますが、面白く読むことが出来ました。 オリバーとピアの個人的な事情も描かれていて、親近感が持てます。 そういえば、ピア・キルヒホフと誉田哲也が描く姫川玲子の刑事になったきっかけが同じ設定なのはちょっと面白いと思いました。


2013年9月11日

夏海公司のなれる!SE10を読みました。 闘う?社員旅行という副題のついた、なれる!SEシリーズの10冊目です。 今回は4つの短編が収録されている短編集でした。
社員旅行の章は、スルガシステムで六本松社長の肝入りの社員旅行が開催されます。 カラオケ大会の賞品が1週間休暇取得の権利(社長が責任を持って稼働調整する)、というのがブラック企業らしいですね。
社員たちはみんなその権利を獲得するために準備をしているのですが、次々と顧客からの緊急対応依頼で呼ばれていってしまい、カラオケを歌うこともできない、という設定も、他人事ではありません。胸が苦しくなります。
他の2編も社長や妹に攪乱されてしまう桜坂工兵の日常を描いています。
次郎丸縁が登場する1編は逆の意味であり得ない設定ですが、桜坂工兵の現状を裏返しで描いていると考えると、妙に納得してしまいます。


2013年9月9日

小路幸也のレディ・マドンナを読みました。
一昔前のホームドラマ東京バンドワゴンの7クール目でした。
おなじみの登場人物たちがホームドラマを繰り広げます。 父と娘の人情話あり、我南人の「LOVEだねえ」あり、勘一の父親の秘められたエピソードあり、盛りだくさんで楽しめます。
登場人物が多くなってきたので、謎解きの比重が少なめになってきているのがちょっと残念です。


2013年9月4日

夏海公司のなれる!SE9を読みました。 ラクして儲かる?サービス開発という副題のついた、なれる!SEシリーズの9冊目です。
本編では、桜坂工兵はサービス開発の企画・開発を命じられます。 工兵が企画したのはIPV4とIPV6のトランスレートサービス、名付けてSRG46。 ターゲットのクライアントに導入するシステムをサービス化して一般ユーザーに提供しようという企画です。
他のユーザーからはカスタマイズ要求が発生し、競合の業者が低価格でサービスを提供してくるなど、障害が立ちふさがる中、工兵と室見、姪乃浜はサービスの提供を進めていきます。
いつものとおり、大きな問題が発生した後、室見や姪乃浜の機転により問題が解決してめでたしめでたしとなるのですが、六本松社長の無茶ぶりはまだまだ続いていくのでした。


2013年9月4日

夏海公司のなれる!SE9を読みました。 ラクして儲かる?サービス開発という副題のついた、なれる!SEシリーズの9冊目です。
本編では、桜坂工兵はサービス開発の企画・開発を命じられます。 工兵が企画したのはIPV4とIPV6のトランスレートサービス、名付けてSRG46。 ターゲットのクライアントに導入するシステムをサービス化して一般ユーザーに提供しようという企画です。
他のユーザーからはカスタマイズ要求が発生し、競合の業者が低価格でサービスを提供してくるなど、障害が立ちふさがる中、工兵と室見、姪乃浜はサービスの提供を進めていきます。
いつものとおり、大きな問題が発生した後、室見や姪乃浜の機転により問題が解決してめでたしめでたしとなるのですが、六本松社長の無茶ぶりはまだまだ続いていくのでした。


2013年9月4日

米澤穂信の折れた竜骨を読みました。
中世のイギリスの島を舞台にしたファンタジー風味のミステリーでした。 ロンドンから海路3日のソロン島で起きた領主殺人事件。 騎士ファルクの調査の結果、暗黒魔法により操られて<走狗>となってしまった人によって領主のローレントが殺されたことが判明します。 領主の娘アミーナと騎士ファルク、その従者ニコラは容疑者の中から<走狗>を見つけ出そうとするのですが...
領主の亡くなった翌日、ソロン島は呪われたデーン人に襲撃されます。 ローレントが集めた傭兵たちにより、なんとかデーン人を撃退することができた後、ファルクは容疑者たちを一堂に集めて謎解きを行い、意外な人物が<走狗>であったことが判明するのでした。
ファンタジーの世界の物語としては面白く読みましたが、ミステリーとしてはどうだろう、と思いました。


2013年9月1日

アンソロジー、栞子さんの本棚を読みました。
ビブリア古書堂の事件手帖シリーズに登場した小説を収録したアンソロジーでした。 全ての小説は収録出来ないので一部抜粋の部分もありますが、栞子さんの物語の雰囲気を感じることが出来ます。
たんぽぽ娘、は番組のエンディングであらすじは紹介されていて読みたいなあと思っていたのですが、オリジナルが読めて良かった。
クラクラ日記は抜粋ですが、面白く読みました。 坂口安吾は私も若い頃何冊か読みましたが、クラクラ日記の方がずっと面白そうです。 今度購入して読んでみることにしましょう。
春と修羅は序文の以下の文章がとても気に入っているのですが、

わたくしといふ現象は
假定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景やみんなといっしょに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です
(ひかりはたもち、その電燈は失はれ)

私は詩集はほとんど読まないので、本文は読んでいなかったのでした。 今回抜粋を読んでみて、宮澤賢治の詩もいいなあと思ったのでした。


2013年8月31日

恩田陸のブラザーサンシスタームーンを読みました。
中学時代の同級生、綾音、衛、一の三人は高校時代の自由研究で一緒になって不思議な体験をします。 同じ大学で青春時代を過ごした後、それぞれの道に進んでいきます。
長編小説の導入部のような感じなので、続編に期待といったところです。


2013年8月27日

越谷オサムの陽だまりの彼女を読みました。
鉄道会社関連の広告代理店に勤務する浩介は、クライアントとして現れた真緒と再会します。 中学時代の同級生でいじめられっ子だった真緒は、仕事ができる大人の女性に成長していたのでした。
浩介と真緒はつきあい始めて幸せに結婚生活をしていくのでした。 幼いところもある人なつこく気まぐれな真緒の魅力が描かれています。
ところが、真緒には大きな秘密があったのでした。 まあ、よくある悲恋系のラブストーリーかと思わせておいて、予想もつかないような結末に持って行かれてしまったのは驚きでした。


2013年8月25日

ネレ・ノイハウスの白雪姫には死んでもらうを読みました。
ドイツの片田舎で10年前に起きた美少女失踪事件、状況証拠からその犯人として逮捕され、刑に服したトビアスが出所してその村に帰ってきます。 ところが、その村から離れた空軍既知跡地でその事件で失踪した少女の白骨死体が発見されます。
オリバー主席警部とピア警部は現在起きている事件と10年前の冤罪事件の事実を解明しようとするのですが、村人たちの結束に阻まれてしまいます。
登場人物も多く、最初のうちは巻頭の登場人物一覧と引き比べながら読んでいましたが、だんだん物語に引き込まれてくると気にならなくなってきました。 それでも、つぎつぎと事件が起きてしまい、誰が犯人なのかわからない展開なので、どきどきしながら読みました。
オリバーもピアもそれぞれ妻と夫を持ちながら、すてきな異性が現れると心を奪われてしまうという描写が多いのはちょっと驚きましたが、これは作者が女性だからなのでしょうか。 そういえば、桐野夏生の警察小説でもそうだったような気がします。


2013年8月20日

東野圭吾の新参者を読みました。 悪意にも登場した加賀恭一郎が主人公の推理小説でした。
日本橋署に配属された加賀は中年女性の殺人事件の捜査のために、日本橋浜町水天宮界隈の住人たちを訪ねます。 それぞれの家の中の小さな秘密、そしてそれを解決していく加賀。 それらを解決していく先に、殺人事件の真相が現れてくるのでした。
謎解きも面白かったのですが、例えば「瀬戸物屋の嫁」のように下町に生きる人々が暖かく描かれているのが気に入りました。


2013年8月18日

ジャレド・ダイアモンドの人間の性はなぜ奇妙に進化したのかを読みました。
動物の生態を観察して得た知識をもとに、人間の性行動を論説した本でした。 なぜ人間の性行動がこのように進化したのか、という事についてはそれなりに納得しました。
しかし上野千鶴子のスカートの下の劇場のようなもう少しつっこんだ議論が読みたかったなあ、と感じました。


2013年8月14日

上橋菜穂子の流れ行く者を読みました。 精霊の守り人シリーズの外伝の短編集でした。
精霊の守り人ではバルサは20代後半の女性として物語の中で活躍しますが、この短編集では十代の頃のバルサとタンダが描かれています。 カンバル国を追われてジグロとともに逃避行を続けるバルサ、タロガイ師のもとに身を寄せるバルサに恋心を覚えるタンダ。
そしてこの短編集では、老境に入った大人たちの身の振り方がもう一つのテーマになっています。 守り人シリーズの世界で人々はどのように老いていくのか、考えさせられます。
物語の中で、この世界で遊ばれているススットというゲームが描かれています。 konnokのイメージではシミュレーションウォーゲームのような盤の上で、ダイスの目により役割が変わる駒を操って領地の奪い合いをするゲームのようです。 しかし、勝利条件は一つではなく、領地を大きく取ったプレイヤーは王として勝利し、商人として銀貨を集めて金持ちになるという勝利条件もあるようです。
面白いのは、一晩で勝負がつくタィ・ススットと数年をかけて勝負を続けるロトイ・ススットというゲーム形式あると言うことでした。 上橋菜穂子は文化人類学の造詣が深いので、どこかで調べた中からこのようなゲームのイメージが作られたのだと思います。
ボードゲームをかじった事のある人間としては、このゲームのルールである、「運命の書」を見てみたいと思ったのでした。


2013年8月14日

宮部みゆきの<完本>初ものがたりを読みました。 表題に<完本>という記述があるとおり、以前発売されていた短編6編に新しく3編を追加して再版されたものです。
回向院の茂七親分と謎のいなり寿司屋が登場して本所深川で起こる事件を解決していきます。 宮部みゆきらしく、人情味にあふれる登場人物が活躍します。
茂七親分というと、霊験お初が登場する震える岩や天狗風の印象の方が強いのですが、オリジナルはこちらでしたね。


2013年8月10日

宮部みゆきのここはボツコニアン3を読みました。 テレビゲーム好きで知られる宮部みゆきが書いたボツネタ・パロディ満載のギャグ小説ここはボツコニアンシリーズの3作目です。
今巻では三国志ゲームのボツネタパロディ、ホラーゲームのボツネタパロディが展開されます。 私は三国志ゲームやホラーゲームは遊ばないので、パロディの内容はいまいちピンと来ませんでしたが、作者が楽しんで書いているのだけは伝わってきます。 6つのジャンルでパロディの物語が展開されるようなので、この先も楽しみです。


2013年8月6日

南場智子の不格好経営を読みました。 チームDeNAの挑戦、という副題がついています。
マッキンゼーのコンサルタントをしていた南場智子が一念発起してDeNAを起こし、その会社がモバイル事業を拡大していく様子を描いたノンフィクションでした。
南場智子と一緒に事業を始めたメンバーとの苦闘が描かれています。 才能があって努力することをいとわない優秀な人たちがプロジェクトを進めていく。 いろいろな壁にぶち当たるけれど、何とかその壁を乗り越えてプロジェクトが成功していく。 という物語を読んで、うらやましいなあ、でも私が住んでいる世界とは別次元なんだろうな、と思ってしまいました。
ところで、私は携帯電話は音声通話とメールしか使っていないしパケット定額も契約していないので、DeNAという名前もベイスターズを買ったときにそんな会社があるんだなあと思った程度なのですが、この本を読んで少し興味がわきました。 私は親の遺言でオンラインゲームはやらないのですが、ちょっと覗いてみようかな、と思ったのでした。


2013年7月31日

百田尚樹のモンスターを読みました。
不美人に生まれてしまった主人公は、つらい高校生活をおくります。 東京に出た主人公は水商売でお金を得ながら、美容整形で顔を変えていきます。 とびきりの美人に生まれ変わった主人公は、ある想いを胸に故郷に帰ってきます。
百田尚樹の小説では強い想いを心に秘めた人物が登場しますが、この主人公もそうでした。 物語の最後に彼女の願いは遂げられたのでしょうか。


2013年7月31日

内田樹の街場の教育論を読みました。 最初に教育とは何か、ということについて「学び」の場であるべきであることが述べられています。 また、教育は惰性の強い制度であり、方向修正をするにしても「現に瑕疵のある制度」を利用しながら改修していく必要がある、と述べられています。
グローバルスタンダードということを教育に導入した事による弊害や評価制度を導入することの弊害はわかりやすく解説されていて面白く読みました。 学力上げることを目的として狭い世界に競争を導入すると、子供たちは他人の足を引っ張ることにより相対的に自分の成績を上げることを目的とするようになり、結果的に学力は底なしに落ちていく、というような解説は納得出来ました。 なぜ、いまいじめが問題になっているのか、ということについても、個性化=モジュール化が進行した結果であるという推論も面白く読みました。
教育は危機的状況になっていると主張されているのですが、「危機」は単一のソリューションでは解決出来ない、という主張は、文明崩壊の主張と通ずるところがあると思いました。。 最後に孔子の「礼」について内田樹の考え方が書かれていました。 これも、忘れてはいけないことだな、と思ったのでした。


2013年7月28日

三浦しをんの仏果を得ずを読みました。
文楽をテーマにした青年の成長の物語でしたが、ピンと来ませんでした。 神去なあなあ日常や風が強く吹いているは結構面白く読んだのですが。 私が一度も人形浄瑠璃を観たことがないからなのかもしれませんが。


2013年7月24日

宮部みゆきのあんじゅうを読みました。 三島屋変調百物語事始と題されたおそろしの続編でした。
不幸な事件によって幼なじみの許嫁を亡くしてしまったおちかは伯父の三島屋伊兵衛のところに身を寄せます。 おちかが百物語ということで、江戸の不思議な物語を集めることになります。
今回の物語でも空き家の怪異が描かれていますが、前作で描かれたようなまがまがしい物語ではなく心温まるせつない物語になっています。
そして、物語が一つずつ片付くにつれて、おちかのまわりに百物語に関連したいろいろな仲間が増えていくのでした。 この物語がどのように続いていくのか楽しみになります。


2013年7月16日

伊坂幸太郎のオー!ファーザーを読みました。
高校生の由紀夫には父親が4人います。 出張中という設定でこの物語にはほとんど登場しない母親が四股をかけていて、そして由紀夫が生まれた後そのまま4人の夫と暮らすことになったからなのでした。
個性豊かな4人の父親とガールフレンドの多恵子、悪友の鱒二、裏社会のボス富田林といった人物たちが登場します。 知事選挙が行われている中、登校拒否になった友人を訪ねていった由紀夫はとある事件に巻き込まれてしまいます。
それを知った父親たちは由紀夫を助け出すために行動を起こします。 伏線がいろいろなところに張ってあって、なるほどそういうことだったのね、という面白さがありました。


2013年7月13日

内田樹と岡田斗司夫の評価と贈与の経済学を読みました。 内田樹と岡田斗司夫という全く異なる考え方の二人が、若者たち論、これからの日本論と言ったテーマについて対談しています。
途中の議論も面白く読んだのですが、これからの日本人はどうあるべきか、という議論で、これから求められる人間像はまず自ら与える側に立つ人間だ、というのが面白いと思いました。 まず、贈与する。その後に他の人からの支援があればうれしい。
投資したものは決められた期間内にリターンがなければならない、という性急な成果主義ではこれからの日本は立ちゆかなくなるだろう、という主張でした。 内田樹の主張は他の著作と同じでしたが、岡田斗司夫がそれにコメントをしていくことで面白い議論になっていると思いました。


2013年7月9日

柳内たくみのゲート3を読みました。 自衛隊彼の地にて、斯く戦えりという副題の3巻目、動乱編でした。
炎龍を命からがら倒すことが出来た伊丹たちは、レレイの導師試験を受けるために学都ロンデルに向かいます。 そこで、レレイは義姉アルペジオと派手な姉妹喧嘩を起こしたりしながら、導師試験の準備を進めます。
一方、自衛隊の実力を知る皇女ピニャは講和をめざすのですが、帝国の皇帝が病に倒れてしまうと抗戦派の皇太子ゾルザルの陰謀により講和派の議員たちは親衛隊により投獄されたり暗殺されたりしてしまうのでした。
帝都が抗戦派により掌握された、と見えたそのとき自衛隊の空挺部隊の降下が始まったのでした...
今回も面白く読みました。今後物語がどのように展開していくのか楽しみです。


2013年7月7日

小野不由美の丕緒の鳥を読みました。
十二国という架空の世界を構築し、その世界に生きる人々の行動を描くことによって、人間はどのように生きていくべきなのかということを示してくれる、十二国記シリーズの短編集でした。
4つの短編では運命に翻弄されながら、それでも強く正しく生きていこうとする人たちの苦闘が描かれています。 丕緒の鳥は慶の物語、落照の獄は柳の物語ですが、青条の蘭と風信はどの国の物語か書かれていないので気になります。
風信は多分慶の陽子が王になる前の物語でしょうか。 青条の蘭は恭なのか雁なのか。 今までのシリーズをちゃんと読んでいればわかるんだろうと思いますが...


2013年7月3日

百田尚樹のボックス!を読みました。
高校生の天性のボクサー鏑矢を中心に、その幼なじみでいじめられっこの優紀のボクシングの物語でした。 優紀は鏑矢にあこがれてボクシング部に入部します。 コーチの沢木の指導の下、優紀はボクシングの基礎を身につけていくのでした。
彼らの英語教師耀子、病弱だけど明るいボクシング部マネージャーの丸野、そして弱小ボクシング部の先輩たちにかこまれて二人は成長していくのでした。 天才的なボクサー鏑矢と努力家の優紀の対比が面白く、また優紀のあこがれの教師耀子に対する恋心も描かれています。
風のような鏑矢の天真爛漫な行動が魅力的な物語でした。


2013年6月30日

恩田陸のクレオパトラの夢を読みました。
北海道のH市を舞台に、製薬会社の研究所に勤務する神原恵弥とその妹和見がクレオパトラの夢と言われる謎を追いかけます。 和美の不倫の相手の医師若槻が事故死してしまうところから物語が始まります。 そして、若槻が保管していたH市の古地図からH市にまつわる謎が解き明かされていきます。
前作のMAZEの時も思ったのですが、恩田陸の物語で謎のすっきりした解明を期待してはいけないですね。 恵弥と和見の掛け合いなど登場人物たちの会話は面白かったのですが。


2013年6月23日

梨木香歩のf植物園の巣穴を読みました。
植物園に勤務している主人公の男性が一人語りで物語を語っていきます。 犬になってしまう歯科医の「家内」や、水辺に住んでいるカッパのような男の子と言った人々が登場する、現在と過去が混然とした物語なので、夢の中の物語なんだろうな、と思って読んでいきました。 夢の中だったらこんな風に場面が展開し、抑圧された自分の記憶が明らかになっていくということもあるよなあ、と思うような物語でした。
最後はちゃんと目が覚めてほっとする展開なのでした。


2013年6月22日

ジャレド・ダイアモンドの文明崩壊を読みました。
過去に滅んだ文明を考古学的に調べていくと、文明が栄えるに従って自分たちの文明の基幹をなす環境を破壊してしまうことになり、その結果その文明が滅びてしまうということが繰り返されている、ということが解説されています。
その環境破壊を食い止めたことにより長く続いている文明と環境破壊により滅びてしまった文明の違いはどこにあるのか、ということが複数の文明を例に紹介されています。
例えば、イースター島のモアイ像はその島に森林があってその木材を利用して建てられたのですが、いま、イースター島には木は1本も生えていません。 イースター島に住んでいた人たちが森林を全て伐採してしまったからです。 島に森林が亡くなったために地表が流されてしまい、農業も出来なくなってしまったため、文明が滅びてしまったのでした。
振り返ってみると今グローバルな世界で行われていることはイースター島で行っていたことと規模が違うだけで同じ事なのではないか、という主張なのでした。
私たちの世代は戦争で負けたために貧しかった時代から豊かな時代まで過ごしてきたのでしたが、私の子供や孫の世代は現在の豊かな時代から、資源が枯渇して苦しくなる時代を生きなければならないのかも知れません。 それを避けるために何か今の時代に出来ることはないのか、と考えさせられます。


2013年6月2日

北尾まどかのどうぶつしょうぎのほんを読みました。
将棋を子供も楽しめるようにシンプルにリメークした、どうぶつしょうぎの解説書でした。 カバーを切り抜くとそれだけでどうぶつしょうぎが遊べるという付録もあります。(まあ、やりませんが)
面白いと思ったのは、子供が遊んで理解することを目的としているので、悪手は自分で経験して覚える、(おとなが先回りして教えない)というコンセプトになっていることです。 小野卓也のボードゲームワールドでも解説されているボードゲームの「老害」に対しての明快な答えだなあ、と思ったのでした。


2013年6月2日

東野圭吾の真夏の方程式を読みました。 探偵ガリレオシリーズのミステリーでした。
ガリレオこと湯川学は海底熱水鉱床の海洋探査船の説明会に同席するため、海水の綺麗な玻璃ヶ浦に滞在することになります。 そこで、元刑事が崖下に落ちて死んでいるのが発見されるという事件が発生します。
湯川の推理を支援するために、東京では草薙と内海が捜査を開始します。 そして、湯川の推理により事件の真相が明らかになるのでした。
今回の事件では、それぞれの登場人物の行動の動機が明らかにされていない部分があって、ちょっと欲求不満がたまってしまいました。 なぜ、沢村はそういう行動を取ったのか、重治はどこまで知っていてどのような覚悟で行動したのか。


2013年6月2日

ジェフリー・アーチャーの時のみぞ知るを読みました。 クリフトン年代記第1部とサブタイトルがついています。
ブリストルの港湾の貧民街で生まれたハリー・クリフトンは聖歌隊での歌声と優秀な学業の成績を認められて上級の学校に進学することになります。 ジャイルズ・バリントン、アル・ディーキンズとの友情やオールド・ジャック・ターの助言をうけてハリーは成長していきます。
ジェフリー・アーチャーの小説なので、ハリーの味方をしてくれる人やハリーの敵などが入り乱れて物語が語られていきます。
第1部の終わりで、ハリーは恋人エマ・バリントンが実は父親が同じ妹だった、という衝撃の事実を聞いてしまいます。 折からの戦争に志願するための準備にハリーが乗り込んだ貨物船はドイツの潜水艦の攻撃により沈没してしまいます。 運良く通りがかったアメリカ船籍の船に助けられたハリーは亡くなった同僚の名前を借りて新しい人生を始めようとするのですが...


2013年6月2日

有川浩の旅猫リポートを読みました。
サトルに拾われた野良猫ナナは幸せに暮らしていたのですが、あるときサトルがナナを飼い続けることが出来ない事情がでてしまいます。 サトルとナナは、サトルの古い友人たちを訪ねて、ナナの引取先を探す旅に出ます。
その旅の顛末がナナの視点で語られていきます。 小学生の頃猫を拾って育てたコースケ、両親が離婚して田舎の祖母のところに行くことにしたヨシミネ、大学時代の友人スギとチカコ、叔母さんのノリコと言ったひとたちとサトルの交流が描かれていきます。
最後はちょっと悲しい物語になっていますが、猫のキモチが描かれていて気持ちよく読むことが出来ました。 猫好きにはたまらない物語だろうな、と思いました。


2013年5月19日

乾緑郎の完全なる首長竜の日を読みました。
少女漫画家の和淳美は、自殺未遂により意識不明の弟の浩市とSCインターフェースと呼ばれる装置を使って対話を続けています。 この装置は夢の中のような世界でインターフェースする機械なので、だんだん夢と現実の境が曖昧になってきます。
この対話を続けているうちに、だんだん淳美のまわりに不思議なことが起き始めます。 後半で明かされる衝撃の事実に淳美は立ち向かおうとするのですが...
岡嶋二人の小説クラインの壺(現実とバーチャルリアリティの境がなくなってしまう)と似た読後感を持った小説だと思いました。 サリンジャーのバナナフィッシュ日和がモチーフになっていて、そういう意味でも気に入りました。


2013年5月12日

萩原規子のRDG5レッドデータガール5を読みました。 RDGレッドデータガールのシリーズ5作目で「学園の一番長い日」というサブタイトルがついています。
鳳城学園の学園祭が始まります。 今年のテーマは「戦国学園祭」、八王子城の攻防をテーマに学園祭が開催されます。 泉水子や深行、宗田姉弟や高柳はバックとなる陰陽師の仲間や戸隠の仲間の支援を受けて学園祭の主導権を握ろうとします。
伝奇的な設定については、酒見賢一の陋巷に在りのような霊的な空間が設定されていてそれなりに楽しめました。 しかしながら、現実世界の描写がイマイチで(例えば学園祭での八王子城の仮想攻防戦のボードゲームがなぜバックギャモンなのか!?)ちょっと残念でした。


2013年5月12日

萩原規子のRDG4レッドデータガール4を読みました。 RDGレッドデータガールのシリーズ4作目で「世界遺産の少女」というサブタイトルがついています。
姫神憑きの少女鈴原泉水子は、陰陽師の伝統を引き継ぐ高柳や戸隠の伝統を引き継ぐ宗田姉弟などと関わり合いながら学園生活をおくっています。 今年の学園祭のテーマは「戦国学園祭」ということで、生徒会を中心に準備が進められていきます。 学園祭の準備でお姫様の装束をまとった泉水子に姫神が憑いて、深行は慌てるのでしたが...
泉水子と深行の掛け合いは相変わらず面白く読みましたが、世界遺産の少女という設定はちょっと突飛すぎるのではないかと思ってしまいました。


2013年5月5日

萩原規子のRDG3レッドデータガール3を読みました。 RDGレッドデータガールのシリーズ3作目で「夏休みの過ごし方」というサブタイトルがついています。
生徒会執行部では、今年の学園祭のテーマを戦国時代に設定することになりました。 その学園祭の計画をするために生徒会執行部は宗田真響・真夏姉弟のふるさと、戸隠で合宿をすることになります。 真響の思惑と如月生徒会長の思惑との確執や、真夏のかわいがっていた馬タビの死といった事件が起きて、泉水子や深行は大きな事件に巻き込まれていきます。
何とか事件も解決して、泉水子と深行は戸隠の里を後にするのでした。


2013年5月4日

萩原規子のRDG2レッドデータガール2を読みました。 RDGレッドデータガールのシリーズ2作目で「初めてのお化粧」というサブタイトルがついています。
今回は泉水子と深行が東京の鳳城学園に入学するところから物語が始まります。 泉水子は寮で同室になった宗田真響やその弟真夏と友人になります。 そして、泉水子たちは陰陽師の高柳一条の術を見破り、その術を破ることが出来たのでした。
真響や深行の勧めで生徒会にも参加するようになった泉水子はだんだん高校の生活にも慣れていきます。


2013年5月4日

萩原規子のRDGレッドデータガールを読みました。 RDGはRDBにかけたネーミングで、絶滅危惧種の女の子を指してるようです。 「初めてのお使い」というサブタイトルがついています。
鈴原泉水子は紀伊山脈の奥にある玉倉神社に住む中学生。 泉水子は引っ込み思案で、自信のない女の子ですが、生まれつき怪異を見ぬく能力を持っていたのでした。
泉水子と身の回りの世話を焼いてくれる末森佐和、山伏修行中の相楽深行、その父相楽雪政と言った人たちとの関わりの中で、自分の能力を自覚します。 そして、玉倉山の自然の中で育った泉水子は東京の高校に進学することになります。
最初は仲が悪い泉水子と深行ですが、物語が進むにつれて、重要なパートナーになっていくのでしょうか。 学園伝奇ものは嫌いではないので、続編に期待してしまいます。


2013年5月4日

小路幸也のオブ・ラ・ディ オブ・ラ・ダを読みました。
一昔前のホームドラマ東京バンドワゴンの6クール目でした。
物語も6クール目になってくると研人と花陽の二人も中学生、赤ちゃんたちも大きくなってきました。 いつも通りの賑やかな登場人物たちが謎を解いていきます。 今回は別れもあり、それに関連するエピソードもあり、家族のかかわりが描かれています。
物語に1回は登場する我南人の「LOVEだねえ」はこの物語の華ですね。 お約束の物語展開ではありますが、安心して読むことの出来る物語です。


2013年5月4日

井上夢人のザ・チーム The Teamを読みました。
盲目の霊導師能城あや子、その敏腕マネージャー鳴滝昇治、調査・侵入のプロフェッショナル草壁賢一、天才ハッカーの藍沢悠美のチームが活躍する物語でした。
テレビ番組の1コーナーで能城あや子が霊視をするのですが、彼女の霊視は隠されたものまで見通すことが出来る、という評判が立ちます。 それは、事前にチームのメンバーが相談者の周辺を調べ、その情報をもとに能城あや子が霊視をするので、隠された謎まで解決することが出来るのでした。
それぞれの相談内容に対する謎解きも面白くよみましたが、物語の後半、チームの活動に瑕疵が生じてしまった後の去り際の見事さも印象的でした。


2013年5月4日

朝井リョウの桐島、部活やめるってよを読みました。 等身大の高校生たちの息づかいが聞こえてくるような小説でした。
6人の高校生がそれぞれ自分の視点で物語を紡いでいきます。 それぞれの登場人物たちが感じている、いま、このとき、がまぶしく描かれていました。
ひかりや空の色が効果的に使われているのは良い感じです。


2013年4月21日

近藤史恵のモップの精と二匹のアルマジロを読みました。 天使はモップを持ってシリーズの最新作でした。
ポップな服装の掃除人キリコの活躍を描いた小説です。 今回は長編ということでしたが、謎解きがイマイチでした。 キリコの物語はやはり短編の方がキレがあっていいと思いました。 キリコと大介のからみは面白く読んだのでしたが。


2013年4月21日

東野圭吾のプラチナデータを読みました。
DNAの解析が進んだ近未来、国民のDNAを全てデータベース化し、犯罪者のDNAと突合して犯人を逮捕しようというプロジェクトが発足します。 そのプロジェクトにかかわっていた神楽龍平は、プロジェクトの頭脳とも言える天才数学者蓼科早樹の殺人の容疑をかけられてしまい、逃走しながら真相を解明しようとします。
蓼科早樹が殺される前に開発していた「モーグル」とはどのようなプログラムなのか、それと関連する「プラチナデータ」とは何なのか、謎は深まっていきます。
DNA解析というような最先端の技術でも、人間くさい犯罪は起きうるという指摘が面白いと思いました。


2013年4月21日

有川浩の県庁おもてなし課を読みました。
高知県にあるというおもてなし課を題材にした地域観光がテーマの物語でした。 県庁でおもてなし課に配属された掛水は観光特使をお願いするために連絡を取った吉門と対応していくうちに、県と民間の感覚の違いを見せつけられてしまうのでした。 吉門や吉門の義父で元県職員の清遠らの助言をもらいながら、掛水たちは県の観光振興を立ち上げていきます。
有川浩らしいラブコメ味もついていて面白く読みました。


2013年4月14日

三崎亜記の刻まれない明日を読みました。
10年前にある街の数ブロックから突然消えてしまった3095人の残留思念は、今でも、その事故で消えてしまった図書館の貸出簿として、街のFM局へのリクエストとして残り続けているのでした。 彼らの痕跡は青い蝶の絵となって建物に映り続けています。
そして、その事故の生き残りの少女や少年も10年のうちに成長し、事故の真相に迫ろうとするのでした。
失われた街とも関連する物語で、奇抜なプロットながら、三崎亜記らしい暖かい物語になっています。


2013年4月7日

中島京子の小さいおうちを読みました。
戦前から戦後にかけて女中をしていたタキが懐かしく思い出す、赤い三角屋根の洋館での生活が描かれています。 玩具会社で仕事をしていた旦那様、美人の奥様、足が不自由なぼっちゃんとの生活が思い出の中で描かれています。 そして旦那様の部下の板倉さんとの思い出も描かれています。
敗戦前の時期で暗い世相だったはずですが、タキは懐かしく思い出すのでした。 タキの甥の次男健史はそれを読んで批判的な意見を述べるのでしたが。
最終章では、タキが亡くなった後、健史がイタクラ・ショージという漫画家の記念館を訪れます。 健史は板倉さんが赤い三角屋根の洋館をずっと心にとどめていたことを知るのでした。


2013年4月7日

米澤穂信のボトルネックを読みました。
恋人が東尋坊で崖から落ちて亡くなってから二年、嵯峨野リョウは彼女を弔うために東尋坊を訪れます。 そこでリョウはパラレルワールドに落ちてしまいます。
パラレルワールドは、リョウの姉サキが生きていて、リョウはいない世界なのでした。 そしてその世界では、リョウの恋人も生きていたし、リョウの世界では仲違いしていた両親も仲良く生活しているのでした。 自分が出会った不幸は仕方のないものだと考えていたリョウは、サキの世界がいくつもの不幸を回避していることを知って暗澹たる気持ちになるのでした。
そして、自分の世界に戻ったリョウは...


2013年3月2日

柳井たくみのゲート2.炎龍編を読みました。 「自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」という副題のゲートの続編です。
銀座に突然開いてしまった異世界との門(ゲート)の向こう側で自衛隊の伊丹が活躍します。
今巻では、緑の人(自衛隊)に助けを求めるためにダークエルフの女性が訪ねてきます。 ダークエルフの集落を炎龍が襲い、エルフたちを食べてしまっているというのです。
炎竜は空飛ぶ戦車と言えるほど装甲が堅く、自衛隊の戦力を持ってしても容易に倒せる相手ではありません。 このため、自衛隊幹部は出動を断ります。
しかし、伊丹は上司の指示に従わず、ダークエルフと前作で仲間になったエルフ、亜神、魔術師たちと一緒に炎龍を倒しに行くのでした。
伊丹の冒険譚以外だけでなく、ゲートの向こう側の政治的な策略、こちら側の国際的な政治の策略も描かれていて、面白く読みました。


2013年4月7日

伊坂幸太郎のバイバイ、ブラックバードを読みました。 太宰治の未完の小説グッド・バイを下敷きに書かれた小説だそうです。
主人公の星野一彦は、借金で首が回らなくなった上に、虎の尾を踏んでしまったため<あのバス>で連れて行かれることになってしまいます。
星野一彦は五股をかけて女性たちとつきあっていたので、プロレスラー並みの体型の繭美と言う女性と一緒に、それぞれに別れをつげるため訪れるのでした。 つきあっていた女性たちそれぞれとの別れに際した行動が描かれていきます。
そして、最後には悪役として描かれている繭美という女性が魅力的に思えてくるのが不思議なのでした。


2013年3月22日

東野圭吾の怪しい人びとを読みました。 いろいろな事件に巻き込まれてしまう普通の人々を描いた短編集でした。
自宅から会社に通っている同僚に、自分の部屋を逢い引き用に貸した男が遭遇する事件。 自分の娘を殺した婚約者との新婚旅行の先でその男が知った真相とは。 友人からの結婚報告が届いたのに、同封されていた写真には別の女性が写っていた。
というような不思議な物語が語られていきます。 東野圭吾らしいトリックが満載で面白く読みました。


2013年3月22日

誉田哲也のヒトリシズカを読みました。
いくつかの事件に関連した複数の登場人物たちから見たヒロイン伊東静加の行動が描かれていきます。 暴力に加担し犯罪に手を染めていく静加はいったい何を考えて行動しているのか、というのがテーマとなっています。
不思議な余韻の残る物語でした。


2013年3月17日

三浦しをんのきみはポラリスを読みました。
秘められた恋、がテーマの短編集でした。 ごく普通に生きている人たち(+犬が1匹)の秘められた想いが描かれていきます。
一番気に入ったのは、森を歩くという短編でした。 OLのうはねと自称プラント・ハンター捨松のほのぼのとした同居生活が描かれています。 アマゾンのインディオの間では、「あなたと森を歩きたい」というのは... というくだりが妙にツボにはまりました。


2013年3月9日

ネイサン・ウルフのパンデミック新時代を読みました。 人間と微生物やウィルスとのかかわりを解説した本でした。
人類の生い立ちを遡って類人猿とウィルスの関わりが解説されていて、人類が一度絶滅の危機に瀕するほど個体数が減少してしまったために、感染症に対する耐性が低くなってしまっていると解説されています。 また、昔は悪性のウィルスが発生したときに局地的に感染が広がる(アウトブレイク)だけだったのが、現在は世界が航空機の交通網によりつながったことにより、広く世界中に感染が広がってしまう(パンデミック)リスクが大幅に増加してしまったことが解説されています。
ジャレド・ダイアモンドの銃・病原菌・鉄と関連する解説もあって面白く読みました。
人間はたくさんの微生物と一緒に生きているので、微生物を絶滅するのではなく、身体の中に良い微生物を増やすことが重要だ、という解説は面白いと思いました。
腸の中の微生物の状態により肥満が発生するという研究もあるそうなので、「腸内微生物ダイエット」なんてものがそのうち流行るんじゃないかな、と思ってしまいました。


2013年3月7日

誉田哲也のガール・ミーツ・ガールを読みました。
音楽に対して野性的な感覚を持っている柏木夏美は、マネージャーの宮原祐司と梶原の音楽事務所でデビューに向けた音楽活動をしています。 そこに、映画監督と往年の女優を親に持つ島崎ルイが所属事務所ともめ事を起こして梶原の事務所にやってきます。
年末の歌番組にルイと夏美が競演するという話になります。 二人は祐司や梶原、GAKUこと井場岳彦といった大人たちに見守られて成長していきます。
この本は疾風ガールの続編とのことなので、そちらも読んでみたいと思いました。


2013年3月2日

柳井たくみのゲート1.接触編を読みました。 「自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」という副題がついています。
銀座に突然異世界との門(ゲート)が開いてしまいます。 ゲートの向こう側はロードオブザリングのようなファンタジーの世界です。 ゲートからはオーク、ゴブリン、そして中世の騎士たちがあふれ出てきます。
最初の混乱の後、自衛隊が事態を収拾します。 そして自衛隊はその門を抜けて、向こう側(特地)の鎮圧に成功するのでした。 ゲートの向こう側には広い世界が広がっていて、資源の乏しい日本にとって魅力的な世界でした。 しかし、それは欧米や共産圏にとっても同じ事です。 政治的な駆け引きが始まってしまいます。
自衛隊の特地偵察隊の伊丹は、エルフの少女、ヒト種の少女、見かけは少女ながら齢900歳の亜神、特地を治める帝国の王女などと知り合い、銀座のゲートを抜けて日本に戻って一騒動を起こしてしまうのでした。
ファンタジー要素の多い物語でありながら、日本を取り巻く政治情勢に対しても冷静な描写が行われています。 オタクな自衛隊員として描かれている伊丹のキャラクターも面白いので、これから物語はどのように展開していくのだろうかと期待してしまいます。


2013年2月27日

三上延のビブリア古書堂の事件手帖4を読みました。
栞子さんと二つの顔というサブタイトルがついている、ビブリア古書堂の事件手帖シリーズの4冊目でした。
今回は江戸川乱歩の小説がテーマになっていました。 少年探偵団をはじめとする少年少女向けの小説や押絵と旅する男、パノラマ島奇譚のような大人向けの小説などが登場します。 登場人物たちも小説にかかわるエピソードを持っていて、読んでいて飽きません。
そして、今回、栞子の母親篠川智恵子が登場します。 期待したとおりの人物だったので、うれしくなってしまいました。


2013年2月25日

百田尚樹の風の中のマリアを読みました。
オオスズメバチの働き蜂マリアの目を通してスズメバチの生態が描かれています。 女王蜂がオス蜂と交尾して、自分の巣を作り始め、たくさんの働き蜂を育てて巣を大きくしていきます。 そして、秋になるとそれぞれの巣から新しい女王蜂とオス蜂たちが巣立っていきます。
セイヨウミツバチとスズメバチとニホンミツバチの生態の違いが解説されています。 ニホンミツバチはセイヨウミツバチに自分の巣の蜜を盗まれてしまうのに、それに対抗する習性を持たないので、飢えて巣が滅びてしまうと言うのは、日本人の習性に何となく合致するようで面白いと思いました。
そして、マリアに代表される働き蜂のメス蜂たちが今日本で働いているシングルの女性たちの姿とダブってしまうのが面白いと思いました。


2013年2月24日

絲山秋子のスモールトークを読みました。
外車をテーマにした連作の短編集でしたが、クルマには全く興味のないkonnokとしては、イマイチピンと来ない小説でした。


2013年2月23日

宮部みゆきのおそろしを読みました。 三島屋変調百物語事始という副題がついています。
袋物を扱う三島屋に川崎宿の旅籠屋からおちかという姪がやってきます。 そのおちかは実家でとある事件に巻き込まれてしまい、後悔にさいなまれているのでした。
そのおちかがたまたま来客から恐ろしい事件の打ち明け話を聞いたところから、おちかの心に変化が起こってきます。 来客もおちかに話をしたことにより、心のわだかまりを溶かしていきます。 3人の来客の恐ろしい出来事を聞いて、そして自分自身に起こった物語を話して、おちかは目の前に起きている事件と対決しようとするのでした。 大団円では、来客の話に出てきた今はこの世にいない人たちがおちかを助けてくれるのでした。
宮部みゆきらしい、心が暖かくなる物語を楽しみました。


2013年2月15日

長岡弘樹の傍聞きを読みました。
物語が語られていくと、その裏にある驚きの真相が現れてくるという構成の4つの短編でした。
表題作の傍聞き(かたえぎき)は、小学6年生の娘を持つ女性刑事の物語でした。 傍聞きは他人が他人に話しかけるのを小耳にはさむことです。 相手が本人に直接話しかけるより、相手が他人に話しかけるのを小耳にはさんだ方が、本当に思える(だまされやすい)という漏れ聞き効果のことを指します。
そしてこの短編では二つの傍聞きがだまし絵のようにはめ込まれているのでした。


2013年2月15日

坂木司の和菓子のアンを読みました。 大福によく似たぽっちゃり系の女の子、梅木杏子が主人公の和菓子のお話でした。
杏子は東京百貨店のデパ地下の和菓子の店、みつ屋で働くことになりました。 店長はすらっとした綺麗な女性なのに実態はオジサン、和菓子職人志望の店員はすてきな青年なのに実態は乙女、同僚の女性店員は元ヤンと個性的な面々と和菓子に関する謎解きをしていきます。
気に入った和菓子のトリビアは、お萩とぼた餅は季節が違うだけで同じもの、花札の萩の絵柄が猪なのは猪の肉がぼたん肉と呼ばれているのが関連している、と言うことでした。
杏子はアンコと読めることから和菓子志望の青年から(赤毛のアンにかけて)和菓子のアンと呼ばれるのでした。 まあ、私が杏子をアンコと呼ぶ、と聞いたら某シミュレーションゲームの新聞部部長を連想してしまうのでしたが。


2013年2月12日

東野圭吾のナミヤ雑貨店の奇蹟を読みました。
ナミヤ雑貨店の店主浪矢雄治は晩年、ナミヤ雑貨店のナヤミ相談というしゃれで人生相談を始めます。 初めは子供たちが面白半分に相談していたのですが、そのうちに大人の真剣な人生相談の手紙も持ち込まれるようになります。 雄治が亡くなった後も、ナミヤ雑貨店はずっとそのまま取り壊されずに残っていました。
翔太と敦也そして幸平の3人は空き巣狙いの後で逃げる途中、ナミヤ雑貨店に逃げ込みます。 悪ガキ3人とナミヤ雑貨店で人生相談をした人たちのその後の人生が時空を越えて交差していきます。
人生相談の手紙とそれに回答する手紙、それぞれの人生の分岐点が暖かく描かれていました。


2013年2月10日

東野圭吾のブルータスの心臓を読みました。 創業者一族への逆玉の輿をねらうエリートサラリーマンは、遊びでつきあっていた女性から妊娠を告げられて、殺人を決意します。
トリックはそれなりに面白かったのですが、1993年の小説と言うことで、設定が古すぎて登場人物たちに共感することが出来ませんでした。 現在ではあまりこのような人たちはいないんじゃないかな、と思いました。


2013年2月8日

和田竜ののぼうの城を読みました。 戦国時代、秀吉が西日本を平定しその後関東の北条氏を攻めたときの物語です。
北条氏の支城の一つである忍城は湖の中の島を城にしたという特殊な城でした。 その城の城主は小田原城に出てしまい、その城を守るのは「のぼう様」と呼ばれている成田長親でした。 長親は大男だが、何を考えているのかわからない、不器用な男で、でくのぼうを意味する「のぼう様」と呼ばれていたのでした。
才覚はあるが、戦については全く才能のない石田三成がこの忍城を攻めたのですが、成田家の家臣たちに翻弄されて初戦は敗退してしまいます。 続いて石田三成は水攻めを敢行するのですが...
成田長親、その配下の板東武者たち、石田三成、秀吉、と言った一癖も二癖もある登場人物たちが物語を紡いでいきます。
日本のリーダーの典型のひとつがこの「のぼう様」なのかな、舶来のリーダー論では絶対にありえないリーダーだな、と思ったのでした。


2013年2月4日

L・M・モンゴメリの赤毛のアンを読みました。 友人が「私の一番好きな物語」と言っていたので、児童文学ですが読むことにしたのでした。
空想好きでおしゃべりで無垢でちょっと頑固な少女アンの物語です。
少女アンは孤児院からグリン・ゲイブルスに住むマシューとマリラの中年の兄妹のところに届けられます。 マシューは本当は男の子を希望していたのですが、アンと話をしているうちに気に入ってしまいます。 マリラもなり行きでアンを引き取ることにした後は、その明るさ・素直さに魅せられてしまいます。
カナダの自然の中でいろいろな事件を起こしながら、アンとその友人たちはのびのびと育っていくのでした。 アンの天衣無縫な行動がほほえましく感じられる物語でした。


2013年1月30日

夏海公司のなれる!SE8を読みました。 案件防衛?ハンドブックという副題のついた、なれる!SEシリーズの8冊目です。
ブラック企業スルガシステムに入社した桜坂工兵に強力なライバルが登場します。 アルマダ・イニシアティブと言う会社は商談荒らしの悪名を持つ、強引な営業方法の外資系会社です。 アルマダ・イニシアティブはスルガシステムの顧客会社を次々とリプレースしていきます。 そこの新入社員の次郎丸(じろうまる)縁(ゆかり)は新人ながら技術的にも営業スキル的にも工兵とは段違いの実力を持っているのでした。
この小説は萌え系の技術系SEの日常を描いていく物語だと思っていたのですが、前巻くらいからSEのレベルを超えた会社レベルの経営や政治的な話題が描かれていて、それも面白く読みました。


2013年1月24日

児玉教仁のパンツを脱ぐ勇気を読みました。
この本はとあるSNSで紹介されて読んでみたのですが、この人のあふれるばかりのパワーには脱帽しました。 この人の行動はアメリカで成功する人物としては標準的な考え方なんだろうと思いますが、konnokとしてはとてもついて行けないと、感じました。 と言うことで、あまり共感は感じませんでした。
とはいえ、何故か私のFacebookではハーバード流宴会術というページに、いいね!が押されていたのでしたが。


2013年1月24日

畠中恵のアコギなのかリッパなのかを読みました。 政治家の事務所を舞台にしたミステリーでした。
元大物政治家大堂の事務所で事務員をしている佐倉聖は元暴走族の21歳です。 大堂のところに持ち込まれる議員からのいろいろな事件を聖は腕っ節と機転で見事に解決していきます。
謎解きについてはイマイチ感がありましたが、登場する人物たちが一癖も二癖もある人物たちなので、丁々発止の会話が楽しめました。


2013年1月18日

本多孝好のチェーン・ポイズンを読みました。 人生に絶望したときに、「本当に死ぬなら、1年待ちませんか」という悪魔の誘いがあったらどうするか、というテーマの小説でした。
この物語の主人公の三十代の女性は、その悪魔の誘いで会社を辞め、保険に入って1年間を過ごすことにします。 そして、もう一人の主人公である雑誌の編集者は、その女性が自殺してしまった後に、その女性の1年間の行動を追うのでした。 自殺してしまう女性の行動とその女性の行動を追う編集者の行動が交互に物語られます。
最後にどんでん返しがあって、本多孝好らしいエンディングになっているのはお約束です。


2013年1月15日

三浦しをんの神去なあなあ日常を読みました。
横浜の高校生平野勇気は、高校卒業後フリーターにでもなろうと思っていたのですが、担任と母親の策略により、紀伊半島の真ん中の神去村に送り込まれてしまいます。 そこは、都会育ちの勇気には想像もつかない、しきたりと林業の村なのでした。 林業の日々の重労働も、季節毎のしきたりも、勇気には驚くものばかりでしたが、いつの間にか、勇気はこの村になじんでいくのでした。
今はなくなってしまったけど、私が小さい頃は私の住んでいる集落でもいろいろなしきたりがありました。 昔の村のいろいろなしきたりや、御柱祭のようなイベントが書かれていて、懐かしく感じた一冊でした。


2013年1月12日

夏川草介の神様のカルテ2を読みました。 神様のカルテの続編でした。
「草枕」を愛読書にしている栗原一止内科医が主人公の、信州の本庄病院を舞台にした物語でした。 一止の細君で登山写真家の榛名、同僚で大男の砂山医師、大狸先生に古狐先生、古狐先生の奥さんの千代さん、konnokのお気に入りの東西看護師と言った面々が過酷な医療の現場で働いています。
物語は一止の医学部時代の友人進藤辰也が東京の病院から赴任してくるところから話が始まります。 学生時代に一止があこがれていた如月千夏と結婚したはずの進藤は、定時で帰る勤務状況で同僚の医師や看護師たちから大きな不評を買ってしまいます。 そして、本庄病院の未来にかかわる重大事が発生します。 その対応の中で、進藤の苦悩を一止や榛名がフォローしていくことになります。
天使が降臨したようなと言われる榛名ですが、その愛読書がフランクルの「夜と霧」だというのを聞くと、明るく描かれている登場人物たちも心の中に悲しみを抱えているんだなあ、と思ったのでした。


2013年1月9日

誉田哲也のインビジブルレインを読みました。 ストロベリーナイトシリーズの4冊目で、女性警部補の姫川玲子が主人公の警察小説でした。
今回は9年前に起きたえん罪事件の家族が本当の犯人に復讐するという重いテーマの物語でした。 その事件が明るみに出れば、警視庁の幹部も責任を取らなければならなくなるため、上層部からもみ消しの指令が出ます。 その指令と犯人捜査の板挟みになり、姫川たちは苦しい捜査を余儀なくされてしまいます。
事件捜査の中で、姫川は牧田という暴力団幹部と知り合い、彼に惹かれている自分の感情に戸惑うのでした。 そして、最後に明かされる真相が衝撃的で、さすが誉田哲也だなあ、と感心しました。


2013年1月4日

仁木英之のさびしい女神を読みました。 僕僕先生シリーズの4作目です。 普段は美少女の姿をしている仙人僕僕と仙縁のある道楽青年王弁が唐の時代を旅するというファンタジーでした。
今回は、いにしえの神々たちの戦争で最終兵器として召還された魃という女神が登場します。 魃は全てのものを乾燥させ消し去ってしまう力を持っているため、彼女を召還した陣営が勝利を収めると、とある場所に封じられてしまったのでした。
蚕嬢がかかわった出来事によりその封印が解かれてしまい、魃が地上に現れてしまったため、水が豊かだった場所が旱になってしまいます。 王弁は魃がおだやかに過ごせる場所を見つけるため東奔西走するのでしたが...
今回は神代の時代まで物語が広がり、また僕僕先生の正体も明かされたので、物語の続きが読みたくなります。


2013年1月2日

伊賀泰代の採用基準を読みました。 マッキンゼーの採用マネジャーを12年務めた著者が初めて語る、地頭より論理的思考より大切なもの、という副題がついています。
著者はこの本で日本のビジネスマンに絶対的に不足しているリーダーシップについて解説しています。 リーダーシップは、目標を達成するためにそれぞれのチームメンバが必要なことを主体的に行うことです。 目標を設定し、メンバをリードして先頭を走り、決断し、メンバに伝える、ことが求められます。
現在、日本の企業では、社員にリーダーシップが求められておらず、それが必要である、という認識もありません。 このため、企業を推進していくべきリーダーシップの総量が絶対的に不足している状況になっているのです。 その結果、優秀な人材がそろっているにもかかわらず、他国の企業に後れを取ってしまっているのです、と主張されています。
読んでいて耳の痛い指摘が多く、私も仕事の仕方・後輩の育成方法を見直す必要があるなあ、と思ったのでした。


2013年1月1日

今年も、面白そうな本を探して読んでいきたいと思います。 そしてなるべく本を選ぶときに参考になるようなコメントを記録していきたいと思います。 どうぞよろしくお願いいたします。




2012年に読んだ本の感想