辻村深月のスロウハイツの神様を読みました。
主人公の赤羽環は今売れっ子の脚本家です。そして人一倍努力家で自分にも他人にも厳しい性格です。
環とともに、売れっ子作家のチヨダ・コーキ、漫画家の卵の狩野、映画制作会社で働く正義、炊事担当で絵描きの卵のすみれたちはスロウハイツで共同生活を始めます。
トキワ荘のような環境で切磋琢磨しながらそれぞれ自分の仕事をしていきます。
そこに小説家志望の加々美莉々亜が参加したところから物語が動き出します。
10年前にチヨダ・コーキの小説を模倣して発生した集団自殺事件、その後発生したチヨダ・コーキへのバッシングは「コーキの天使」が書いた手紙によってキャンセルされ、チヨダ・コーキは復活することができたのでした。
そして、その「コーキの天使」は誰なのか、加々美莉々亜なのか、そうではないのか...
伏線がほんとうにたくさん張り巡らされているミステリーでした。
読んでいる途中で、えっそうなの!?と思ったことが何度あったか。
全部の伏線がわかったところで、もう一度最初から読み直してみたいと思ってしまいました。
宮部みゆきの昨日がなければ明日もないを読みました。
杉村三郎探偵事務所シリーズの短編集でした。
このシリーズは暗い雰囲気の物語が多いですが、今回の3編も読んでいて気持ちが暗くなってくる物語たちでした。
表題作の「昨日がなければ明日もない」は自己中心的で困った性格の女性の物語でした。
この女性に関わってしまった人たちはみんな振り回されてトラブルを抱えてしまいます。
結末も本当に救いのない形で終わってしまいました。
物語の語り口は暖かいんですけどね。
森絵都の出会いなおしを読みました。
出会いと別れ、そして再会をテーマにした短編集でした。
面白いと思ったのは「むすびめ」という短編でした。
小学校時代に三十人三十一脚で自分が転んだために負けてしまったことがトラウマになっている時子は、はじめて小学校の同窓会に出席したのでした。
同級生たちと話をしていた時子は自分が思っていたのとは違った事実を知るのでした。
三浦しをんのののはな通信を読みました。
クールで辛辣なののこと野々原茜と天真爛漫だけど芯が強い牧田はなの二人の物語でした。
ののとはなの手紙とメールを綴った物語、だからののはな通信。
ののとはなは昭和から平成に変わる頃にミッション系の高校で同級生として知り合い、恋をして互いにすべてを受け入れる関係になります。
学校でも一緒に過ごしていながら、互いに手紙を交換しあう幸福な時間を過ごします。
その後、別れがやってきて疎遠になってしまう二人は大学時代にもう一度一緒に過ごしたあと断絶してしまいます。
それから20年後、ののはライターとして仕事をしています。はなは外交官の夫とアフリカに駐在しています。
ののはな通信の再開です。
大人になったののとはなは、現在の生活について、いままで経験してきたことについて、お互いを思う心についてメールの交換をしていきます。
それぞれが隠し持っていた秘密も明らかにされ、お互いの気持ちも伝わっていきます。
最後はちょっと悲しい結末になってしまいますが、二人が連絡を取り合わなければこのような結末にならなかったんじゃないか、と思ってしまうところが、すでにどっぷりと二人の物語に感情移入しているということなんだと思いました。
佐藤正午の事の次第を読みました。
ごくふつうに生きている中年の男性や女性がひそかに抱えている秘密を描いた短編集でした。
「姉の悲しみ」では姉からみた妹の姿が描かれ、「言い残したこと」では妹からみた姉の姿が描かれています。
その対照が鮮やかで面白く読みました。
角田光代のおまえじゃなきゃだめなんだを読みました。
平凡な人生の中できらりと光る瞬間を描いた恋愛短編集でした。
最初と最後にジュエリーをテーマにした短編が配置されています。
「おまえじゃなきゃだめなんだ」は若い時期にバブルを経験した女性のお話でした。
浮かれていた頃には見えなかった大事な事が、経験を重ねると見えてくる。
まだ間に合う、これからが本番だ。というメッセージが力強く感じました。
押し入れを整理していたら、ダグラス・R.ホフスタッターのゲーデル,エッシャー,バッハ あるいは不思議の環が出てきました
若い頃に読んだときはとても面白いと感じた記憶があるんだけど、もう一度読み直してみようかな。
ただ、字も小さいし分厚さが半端じゃないのでちょっと気後れしてしまいます。
東野圭吾の恋のゴンドラを読みました。
スキー場でスノーボードを楽しむ男女の恋物語でした。
登場する男性たちが浮気性で婚約者や妻がいるにもかかわらず、他の女性に声をかけていくため、悲喜劇が生まれます。
スピード感のある物語でしたが、深みはありませんでした。
桃実さんがかわいそう、と思ったのでした。
イアン・フレミングの007/ムーンレイカーを読みました。
コントラクトブリッジが登場する小説ということで読んでみました。
序盤でジェームスボンドがブリッジのクラブに潜入し、いかさまをしている敵役を相手に、いかさまのハンドで逆襲するというストーリーになっていました。
コントラクトブリッジを題材にする小説は多いですが、いかさまのハンドを載せている小説は少ないので面白いと思いました。
007シリーズということで全体のストーリーは荒っぽく感じました。ちゃんとボンドガールも登場しているんですね。
梨木香歩の不思議な羅針盤を読みました。
婦人誌に連載されていたエッセイ集でした。
草木や動物たちに向き合う姿勢、庭に生えた草や木の実の料理についての話、友人や通りすがりの人とのつながりかたなど、面白く新しい発見のる内容でした。
杉浦日向子さんのご隠居さんの話題は面白く読みました。
konnokもご隠居さんと呼ばれる年齢になったけど、ご隠居さんのようなおおらかさも人間性も全然ないよなあ、と思いながら読みました。
米澤穂信の本と鍵の季節を読みました。
僕こと堀川次郎は同級生の松倉詩門と都内の高校で図書委員をしています。
そんな、僕と松倉にいくつかの謎解きの依頼が持ち込まれます。
状況の説明を受けただけでは謎を解く手がかりがどこにあるのかすら分からないような依頼ばかりですが、二人は的確に謎を解決していくのでした。
そして、依頼の内容自体に隠された謎が仕込まれていたり、意外な人物が犯人だったり、読んでいて驚かされます。
その驚きが楽しい物語たちでした。
伊坂幸太郎のAXアックスを読みました。
殺し屋の兜は表の顔としては文房具メーカーの営業マンの仕事をしています。
自宅には妻と一人息子の克巳がいますが、兜は恐妻家で妻の機嫌を損ねないようにびくびくしながら生活しています。
兜は殺し屋稼業から引退して足を洗おうとするのですが、殺人の仲介者から引退するなら家族が危険にさらされると脅かされます。
表題のアックスは蟷螂の斧、はかない抵抗を意味します。兜の抵抗は功を奏するのでしょうか。
一流の殺し屋なのに妻には頭が上がらない、長男の克巳を大事にしている兜が魅力的に描かれています。
朝井リョウの世界地図の下書きを読みました。
事故で両親を失った大輔は、引取先の伯父伯母から家庭内暴力をうけたため、児童養護施設に引き取られます。
大輔は児童養護施設で5人の班に所属して生活することになります。
大輔以外の4人も、学校でひどくいじめられていたり、実の母親から育児放棄をされていたり、いろいろな自分たちでは解決出来ない悩みを抱えています。
それでも、彼らは前を向いて進んでいこうとします。
一番年長の佐緒里が大学進学を断念して春には遠くの親戚に引き取られるということをきいて、大輔たち4人は佐緒里を送るためにある計画をたてます。
児童たちは困難に立ち向かうけどその壁はとても厚くて大きい、でもどこかに希望はある、あきらめないで、という主張が心に残る物語でした。
越谷オサムの魔法使いと副店長を読みました。
埼玉の新築の自宅に妻と幼い長男をおいて、藤沢のスーパーに単身赴任している藤沢太郎は副店長の仕事に精を出しています。
ところが、太郎の単身赴任のアパートに、ほうきに乗った魔法使い見習いのアリスがガラスサッシを破って飛び込んできます。
アリスとその見守り役の齧歯類「まるるん」と次の満月まで同居することになってしまった太郎は、アリスが一人前の魔法使いになれるように手伝うことになります。
一人前の魔法使いになるためには次の満月までに空を飛ぶ魔法と姿を消す魔法を修得する必要があるのですが、落第生のアリスにはなかなか難しそうです。
何も知らない太郎の奥さんが単身赴任のアパートに来たときのエピソードが面白かった。
東野圭吾の超・殺人事件を読みました。
推理小説作家の視点から出版界の裏事情を描いた、ブラックな短編集でした。
ショヒョックスという自動書評作成機械を書評家に売りつける話は面白かった。
確かに面白くない小説を読み続けるのは苦痛なので、書評を仕事にするならそんな機械に任せてしまおうという誘惑にさからえないかも。
現在のAI事情ではあり得ない話ではないなあ、と思いながら読みました。
話はショヒョックスが広まったあとに、売れない小説家にショヒョックス・キラーを売りつけるという展開になります。
作家の書いた小説のショヒョックスの評価が高くなるように修正点を指摘してくれるという機械です。
マッチポンプの最たるものですが、現実にありそうな話なのが怖いと思いました。
ジェフリー・アーチャーの嘘ばっかりを読みました。
トリックに満ちた短編集でした。
トリックは面白かったのですが、読後に感動が残るような物語でなかったのが残念でした。
加納朋子のカーテンコール!を読みました。
閉校になった私立萌木女学院を舞台に、いろいろな悩みを持った学生たちが登場します。
理事長とその夫人が悩みを持った女子学生たちに暖かく接していく様子が描かれます。
致命的な悩みに見えても解決法はあるんだというメッセージがうれしくなる物語でした。
誉田哲也の増山超能力師大戦争を読みました。
増山超能力師事務所の続編でした。
超能力が存在することがわかった社会で、超能力師たちが事務所を開設しています。
超能力の仕組みも研究され、超能力を消去する装置が開発されます。
ところが、その装置を開発している会社の研究者が失踪してしまい、家族から増山超能力師事務所にその捜索の依頼があります。
物語の終わりが次の巻に続くという雰囲気なので、続編を期待してしまいます。
有川ひろのアンマーとぼくらを読みました。
主人公の竜馬の父親は自然写真家ですが、子供っぽさが抜けないちょっと困った大人でした。
北海道に住んでいた実の母親が病気で早くに亡くなってしまったあと、父親は沖縄のガイドをしていた晴子さんと結婚し、竜馬は沖縄で父親と新しい母親晴子さんと生活することになります。
晴子さんに屈折した感情を持ちながら成長した竜馬は沖縄を飛び出して東京で就職します。
物語では、竜馬は晴子さんと沖縄の観光地を巡る3日間の夢を見ています。
父親のこと、なくなった母親のこと、晴子さんのこと、沖縄の風景を思い出しながら。
konnokは出不精なので旅行については興味がないのですが、美しく描かれている沖縄の風景を一度観光してみたいな、と思ったのでした。
貴志祐介のコロッサスの鉤爪を読みました。
泥棒と探偵の2つの顔を持つ榎本が主人公のミステリーでした。
「鏡の国の殺人」では、鏡の国のアリスをモチーフにした博物館の展示の中を、犯人が監視カメラを出し抜いて殺人現場まで移動するトリックを榎本が推理します。
「コロッサスの鉤爪」では、海底300mの深海で作業している犯人が海面で殺人を行うトリックを榎本が推理します。
犯人が犯行を決意する経緯も含めて面白く読みました。
どちらの物語でも状況を説明されただけでは犯行を行うことは不可能に思えますが、榎本が隠されたトリックを暴いていくのでした。
貴志祐介のミステリークロックを読みました。
泥棒と探偵の2つの顔を持つ榎本が主人公のミステリーでした。
携帯電話の電波も届かないような山奥の山荘に榎本と青砥純子が招かれます。
6人の招待者の前に貴重なミステリークロックの展示を披露した後、女主人は小説の執筆のために自室に戻り、そこで毒殺されてしまいます。
女主人の夫は猟銃を持ち出し、犯人を見つけたら警察に連絡する前にここで射殺すると言いだします。
その夜の全員の行動は分刻みで記録されていて、誰にも犯行を行えたタイミングはないように見えたのですが...
貴志祐介のトリックは難解なものも多いですが、これだけ難解だと1回読んだだけではトリックが頭に入ってきませんでした。
誉田哲也のルージュを読みました。
姫川玲子シリーズの警察ミステリーでした。
世田谷区で起きた母子三人惨殺事件を追う玲子と仲間たちの奮闘が物語られます。
犯人側の事情と玲子たちの操作状況が交互に語られる構成でしたが、読み終わった感想としてはあまり面白く感じませんでした。
解明されていない謎も多く、最後の謎解きも納得感がなく、ガンテツの策に乗ってしまう玲子の独断専行も鼻につきました。
このシリーズは気に入っているだけにちょっと残念でした。
浅田次郎のおもかげを読みました。
竹脇正一は65歳になり、会社を定年退職することにします。
退職のその日同僚に送別されて地下鉄で帰宅する途中、正一は倒れてしまいICUに収容されてしまいます。
ICUで体が動かせないまま、正一の意識は過去と現在をさまようのでした。
身寄りのなかった正一の生い立ちや、友人・家族たちとの物語が語られていきます。
konnokも現在65歳なので同じような状況に陥るかもしれませんが、たぶんkonnokの場合は恥ずかしい失敗談の数々を思い出してしまうんだろうな、と身震いしたのでした。
今年も、面白そうな本を探して読んでいきたいと思います。
そしてなるべく本を選ぶときに参考になるようなコメントを記録していきたいと思います。
会社を辞めて通勤はなくなるので、別途本を読む時間をもうけるようにしたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。