三浦しをんのお友だちからお願いしますを読みました。
三浦しをんの日常をテーマにした爆笑エッセイ集でした。
エッセイは、ひととして恥ずかしくないぐらいには、そこにはたぶん愛がある、心はいつも旅をしている、だれかとつながりあえそうな、の4つの章に収録されています。
私はふだん「アホ」としか言いようのないエッセイを書いているのだが、本書は違う。
よそ行き仕様である!(あくまで当社比)
と書かれているとおり、よそ行き仕様の「アホ」エッセイを爆笑しながら楽しみました。
中道裕大の放課後さいころ倶楽部13を読みました。
ボードゲームの紹介コミック、放課後さいころ倶楽部の13巻目です。
今巻では、主人公の女子高生たちが遊園地に行ったり彦根の別荘に行ったりしながらボードゲームを楽しみます。
今回紹介されたのはちょっと変わったタイプのゲームばかりだったので、こういうのもいいなあと思いました。
ちなみに、放課後さいころ倶楽部はTVアニメ化されるようなので、見逃さないようにしないと。
朝井リョウの世にも奇妙な君物語を読みました。
世にも奇妙な物語のテイストの5つの短編が収録されています。
どの物語も、面白く読みましたが、読んでいて一番ザワザワしたのはコミュニケーション能力が裁判で審判される世界を描いた「リア充裁判」でした。
konnokは若い頃から空気が読めない人間なので、こんな法律がある世界に生まれていなくて良かったなあと思ったのでした。
村田沙耶香のコンビニ人間を読みました。
主人公の古倉恵子は生まれつき他人の痛みに無感覚という精神病質をもっていました。
周りの大人から普通でないと言われることから、恵子はそのことを隠して生活してきました。
そんな恵子が安らげる場所がコンビニのアルバイトです。
高校卒業後18年間コンビニのアルバイトを続けている恵子はこの仕事が自分の天職だと感じています。
しかし、周りから常識的な大人として見られるため、典型的なダメ男の白羽を自宅で飼うことにするのでした。
小学校の時のエピソードの延長で、恵子が事件を起こしてしまうのではないか、と期待したのですが、シンプルに終わってしまったのが、ちょっと物足りなく感じました。
佐藤正午の鳩の撃退法を読みました。
元直木賞作家の津田はいまは落ちぶれてしまい、デリヘルの女の子の送迎をしています。
性格がねじくれていて、軽佻浮薄で、小心者で、女好きのセックス下手と評される津田は偽札のトラブルに巻き込まれてしまいます。
津田と他の登場人物との掛け合いはそれなりに面白かったのですが、解決されていない謎がたくさん残っているのに、最後の謎解きがそこかよ、とツッコミたくなる物語でした。
今年読んだ本の中で一番残念な小説でした。
坂木司のアンと青春を読みました。
和菓子のアンの続編でした。
デパ地下の和菓子専門店のみつ屋でアルバイトをしているアンちゃんこと梅本杏子の物語です。
みつ屋の椿店長そして先輩の立花さん、桜井さんとアンちゃんが日常の謎を解決していきます。
今回はみつ屋の向かいに入った「K」という洋菓子屋の柏木さんとアンちゃんとの話題から立花さんがちょっと対応がおかしくなってしまいます。
何が起きたのか悩んでしまうアンちゃんなのでした。
高田郁の花だよりを読みました。
みおつくし料理帖シリーズの数年後の時点で書かれた特別巻でした。
4つの短編が収録されていますが、一番気に入ったのは本編には登場しない小野寺数馬の妻、乙緒の物語「涼風あり」でした。
感情を表情に表わさないように育った乙緒は数馬との間に一子をもうけ、人騒がせな義妹早帆ともうまくつきあっています。
しかし、ふとしたことから耳に入った、数馬が昔惚れあった女料理人がいたという話に心を乱されます。
姑から夫との間に溝が出来たと感じたら「岡太夫が食べたい」と所望するように言われていた乙緒は数馬に岡太夫を所望するのですが...
なぜ、葛で作られる菓子なのにわらび餅と呼ばれるのか、という小知識もあわせて面白く読みました。
三上延のビブリア古書堂の事件手帖 番外編を読みました。
ビブリア古書堂の事件手帖7の数年後の時点で書かれた番外編でした。
栞子と大輔の娘の扉子も5歳になり、祖母と母のように本好きの少女に成長しました。
海外に本の買い出しに出ている大輔を待ちながら、栞子が扉子から訊かれる質問に答える形で本編に登場した人物たちのその後が物語られていきます。
この番外編で栞子が探している大輔の青い文庫本も気になります。大輔は本を読めないはずなのに。
11月にはビブリア古書堂の事件手帖が映画化されるようなので、これも観たいと思いました。
坂木司の何が困るかってを読みました。
不条理をテーマにした、短編集でした。
例えば、バスの降車ボタンを押すタイミングを競う「勝負」は降りるバス停のギリギリまで降車ボタンを押さずに我慢できるかを2人のバス利用者が競います。
バスに乗っていると同じような感覚を持つことがあり、面白く読みました。
まあ、中には何を表現したいのか理解できない短編もあったんですけどね。
米澤穂信の王とサーカスを読みました。
真実の10メートル手前に登場した大刀洗万智が登場するミステリーでした。
万智が出版社を辞めてフリーになったとき、気持ちを切り替えるために旅行したネパールで万智は王宮で起きた王族殺害事件に遭遇します。
ジャーナリストとして事件の取材を始めた万智の前にINFORMER(密告者)という文字が刻まれた死体が現れます。
万智は殺された人物と接触していたことから、この死体は王宮で起きた事件と関連しているのか、無関係なのか、限られた時間の中で万智は真相を解明しなければならなくなります。
万智が滞在していたホテルには一癖も二癖もありそうな宿泊者たちがいて、彼らが事件にどのように関わってくるのか、面白く読みました。
万智のジャーナリストとしての矜持が問われる終盤も読み応えがありました。
誉田哲也の武士道ジェネレーションを読みました。
女子剣道をテーマにした武士道シックスティーンシリーズの最新刊です。
今巻の冒頭では早苗の結婚披露宴が描かれます。
早苗の結婚相手は桐谷道場の師範代の沢谷充也です。
ところが、桐谷玄明先生が体調を崩してしまったため、桐谷道場は閉鎖の危機に瀕してしまいます。
香織は桐谷道場の存続のために桐谷流の奥義を修得しようとします。
香織と早苗にまた物語で会えたというのは至福の時間でした。
三浦しをんのあの家に暮らす四人の女を読みました。
杉並区の古いお屋敷に住む老母と娘、そしてその同居人の二人の女性の物語でした。
お嬢様と呼ばれていてももう若くはない女性が主人公で、自分の屋敷の中で趣味と実益を兼ねた刺繍教室を開いているという地味な設定のためか、物語もあまり起伏がなくちょっと物足りなく感じました。
物語を読んでいてkonnokの脳内ではヒロインが朝ドラの芳根京子になっていたのは面白いと思いました。
よしもとばななのなんくるないを読みました。
沖縄をテーマにした4つの短編が収録されています。
表題作のなんくるないは東京での離婚の傷が癒えない女性が沖縄に旅行するというお話でした。
自分に自信が持てず他人の悪意にさらされて心に痛みを感じている桃子は、姉と一緒に沖縄旅行をすることにします。
一足先に沖縄に着いた桃子はがじゅまるの樹の下のカフェで心温まる人たちと出会うのでした。
小説の完成度は高くないですが、不思議に心に残る物語たちでした。
中道裕大の放課後さいころ倶楽部12を読みました。
ボードゲームの紹介コミック、放課後さいころ倶楽部の12巻目です。
ドイツから日本にやってきているエミーが久しぶりにふるさとに帰り、幼なじみたちと再会します。
ボードゲームの魅力の紹介と、高校生たちの恋模様が描かれています。
今回登場したオタク系の男の子もなにか事件を起こしてくれそうで楽しみです。
このコミックはボードゲームを知らない人にその魅力を紹介するために使えますね。
奥田英朗の我が家のヒミツを読みました。
家日和、我が家の問題に続く3作目の短編集でした。
ごく一般的な家族に訪れるイベントを軽いタッチで暖かく描いています。
「妊婦と隣人」という短編は、臨月が近いため自宅で出産を待っている妊婦が、マンションの隣の部屋に引っ越してきた正体不明の人たちが気になる、というお話でした。
たぶんこういう展開・結末になるんだろうな、という予想は見事に裏切られました。
梨木香歩の海うそを読みました。
昭和初期、秋野は大学の夏季休暇を利用して南九州に位置する遅島の調査を行っていました。
平家の落人が住み着いたという伝説があり、明治時代の廃仏毀釈により多くの寺院が壊されてしまった島に住む人たちの、静かで力強い姿が描かれています。
秋野自身も許嫁と両親を相次いで亡くしたばかりで、遅島の変化に富んだ自然のたたずまいに癒やされるのでした。
そしてその50年後、本土から遅島へ連絡橋がかかったという情報を得て秋野は再度遅島を訪れるのですが、秋野が記憶していた美しい遅島の姿は乱開発により失われてしまっていたのでした。
静謐な前半部分と、それが失われてしまった50年後の世界の対照が心に残る物語でした。
伊坂幸太郎の火星に住むつもりかい?を読みました。
平和警察という名の組織が幅をきかせるディストピアを描いた作品です。
密告によって普通の市民が平和警察に拘束され、拷問によって「自白」させられたあとに公開処刑されてしまうと言う悪夢のような世界が描かれています。
こんな日本がいやなら火星にでも移住するしかないね、というのがタイトルの意味です。
その平和警察に単独で挑み、拘束されている普通の市民を助ける正義の味方はいったいどのような動機で行動しているのか、ということが明かされていきます。
物語の中で「正義」とは何か、立場によって「正義」が違ってしまうことはあるのか、ということが語られます。
平和警察が自分に都合が良いように論理を組み立てていると思って読んでいたのですが、いまの日本でのSNSでの炎上・バッシングや神経症的な発言などを見ていると、立場によって「正義」が違ってしまうことはままあることだと思ったのでした。
東野圭吾の赤い指を読みました。
加賀恭一郎シリーズの1作で、自分の息子が殺人を犯したら...というテーマのミステリーでした。
犯人側の人物の描き込みがちょっと単調に感じられたのですが、読んだ後に考えてみるとこんな人たちだからこの程度にしか描けなかったんだろうなあ、と思ったのでした。
結婚した相手が困ったタイプの人だったときに自分だったらどうするだろう、ということを考えさせられる物語でした。
ダン・アリエリーの予想どおりに不合理を読みました。
行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」という副題がついています。
伝統的な経済学では人間は合理的に最適の行動を行うことを前提に理論が組み立てられていますが、この本を読んでいくと実は人間はしばしば非合理な決断を行っていくことがわかってきます。
例えば、無料!ということによってどれだけ判断が狂ってしまうのか、ということが実験を通して解説されていて、日本の諺「ただより高いものはない」が実証されていくのは面白いと思いました。
この本に書かれているように自分の判断はいろいろな要因で非合理になることがあると言うことを肝に銘じておこうと思いました。
あずまきよひこのよつばと! 14を読みました。
14巻では、ジャンボがプレゼントしてくれたビーズとよつば、ヨガをするよつば、東京の原宿に行ったよつば、宇宙人と遭遇したよつば、などなど、かわいいよつばが満載です。
中表紙が左右反転していたので乱丁かなと思ったのですが、表紙ではよつばが鏡を見ている絵が描いてあるので、これはよつばが鏡の中に見ている画像だろう、と納得したのでした。
デボラ・インストールのロボット・イン・ザ・ハウスを読みました。
旧型のロボットのタングと30代のダメ男ベンがタングを修理するために世界を旅するロボット・イン・ザ・ガーデンの続編でした。
ベンとエイミー、二人の長女ボニーそしてタングは静かに暮らしていたのですが、そこに新たなボリンジャーのロボットがやってきました。
浮遊する黒い球形のロボットで上部から不格好な針金が出ています。
名前はジャスミン、本好きで控えめな女の子のロボットのようです。
ジャスミンはボリンジャーに位置情報を送っているとのこと。
ベンたちはジャスミンを追い出そうとしますが、うまくいきません。
物語が進んでいくうちに、ジャスミンはベンたちと一緒に暮らすことを選ぶのでした。
ロボットたちは人間くさく描かれていて心温まる物語になっています。
こんなかわいいロボットたちなら一緒に住んでもいいかな、と思いました。
佐藤正午の花のようなひとを読みました。
花をテーマにして日常の中で見かけるすてきな女性たちを描写したショートショート集でした。
牛尾篤の挿絵も綺麗でした。
佐藤正午の長編小説というと、物語の初めに描かれた物語をベースに読んでいくと、それとは全く違う様相の結末が描かれたものが多く、物語にひねりが効いているという印象があります。
このショートショート集でも同じで短い物語であってもひねりが効いていて面白く読みました。
夏川草介の神様のカルテ0を読みました。
神様のカルテシリーズの前日譚で、4つの短編が収録されています。
栗原一止と進藤辰也の学生時代のエピソード、一止が本庄病院に採用されるときの経緯、そして榛名の山岳写真家としてのエピソードなど、面白く読みました。
このシリーズに登場する人物たちのサイドストーリーなので、このシリーズを気に入っている人にはおすすめです。
アンディ・ウィアーのアルテミスを読みました。
月面に建設された宇宙都市アルテミスで生活している少女ジャズことジャスミン・バシャラがヒロインの物語でした。
火星の人のマークと同じように、いろいろな障害にぶつかりながらもポジティブでへこたれない主人公が活躍します。
人類初の月面都市の成り立ちや経済自立の方法などが語られていて、それも面白く読みました。
米澤穂信の真実の10メートル手前を読みました。
さよなら妖精では、主人公たちと高校生活を一緒に過ごした留学生の少女が戦火の母国に帰った後の運命を主人公に伝える役目を負ってしまう、大刀洗万智。
高校生だった大刀洗が大人になり、記者として活躍する姿を描いた短編集でした。
さよなら妖精に登場した少女の兄が大刀洗を訪ねてくる、「ナイフを失われた思い出の中に」が感動的でした。
ポドゴリツァから日本に仕事で訪れたヨヴァノヴィチは、時間を作って妹がかつて日本に留学していたときの友人だった大刀洗に会いに来たのでした。
大刀洗の取材のすすめかたを見て、妹が大刀洗を友としたのは幸せだったと考えるのでした。
自らも痛みを引き受けながら事件の真相を追う大刀洗の姿勢が描かれています。
前野ウルド浩太郎のバッタを倒しにアフリカへを読みました。
著者はファーブルにあこがれ、バッタ博士になって心置きなくバッタ研究をしたいというポスドク(博士号を取得したが定職がない)です。
アフリカのモーリタニアに行ってバッタの研究をしようとするのですが、運悪く干ばつの時期と重なってしまい、バッタに出会うことが出来ません。
2年間の派遣期間が終わり、日本からの支援がなくなった後も著者はモーリタニアで研究を続けることにします。
著者の苦闘と状況に似合わない脳天気さが面白い。
アフリカで生活すると言うことがどういうことなのか、という記述も面白く読みました。
有川浩の明日の子供たちを読みました。
児童養護施設「あしたの家」を舞台に、世間の人が児童養護施設に対して抱いているイメージとはちょっと違う、職員と子供たちの生活の様子が描かれています。
例えば、いろいろな事情で親と一緒に暮らせない子供たちは、困ったときに親に頼ることが出来ないため、進学も大きなリスクになります。
それでも子供たちは悩みながらも自分の進む道を探していくのでした。
解説で、この小説が書かれることになった経緯が明かされて、なるほどと思ったのでした。
宮下奈都の羊と鋼の森を読みました。
主人公の外村は北海道の寒村で育ちましたが、高校生の時にピアノの調律をみて感動し調律師になることを目指します。
調律師の専門学校で学んだ後、北海道に戻って調律師になった外村は、先輩たちやお客様のピアニストなどとの交流から調律の仕事に打ち込んでいくのでした。
特に大きな事件が起きるわけでもない静かな物語ですが、調律に対する外村のひたむきな姿勢に心が温かくなりました。
若竹千佐子のおらおらでひとりいぐもを読みました。
東北の方言で語られる物語でした。
主人公の桃子さんは老いて連れ合いも亡くして一人で生活しています。
桃子さんの頭の中には複数の話者がいて、それぞれに会話をしているのでした。
確かに発想は面白いし、うなずけるところもありましたが、物語が回想を主体としているため、ちょっと物足りなく感じました。
たとえ自分自身は年老いても、読む本は若々しく活動する小説がいいなあ、と思ったのでした。
重松清の定年ゴジラを読みました。
主人公の山崎さんは私鉄沿線のニュータウンに持ち家を買い銀行員の仕事に明け暮れた後、60歳定年で悠々自適の生活にはいります。
仕事をやめて暇になった時間をもてあましたり、住んでいるニュータウンがゴーストタウン化の兆候を見せたり、定年後に知り合った近所の仲間に不幸があったり、次女の結婚で問題が持ち上がったり、と定年後の山崎さんの生活が描かれています。
ところで、この小説は1998年に書かれているのですが、それから20年後の自分たちは年金の受領開始が65歳になり60歳を過ぎても普通に仕事をしています。
状況の違いにちょっと複雑な気持ちになりました。
長野まゆみのいい部屋ありますを読みました。
長野まゆみの小説というと、美男子がたくさん登場してボーイズラブのにおいのする、少女向けコミックのような小説というイメージがあります。
今回の作品もそのような小説に見せかけていますが、ストーリーのほうはちょっとひねりが入っていて面白く読みました。
主人公の鳥貝一弥は希望する大学に合格して下宿先を探しますが、予算に見合うアパートが見つかりません。
大学の学友クラブに顔を出すと、大学には寮があるが入寮審査がきびしいということを聞きます。
しかし、なぜか大学の寮へ案内された鳥貝は個性的な入居者たちに驚きます。
一癖も二癖もある入居者たちは、しかし鳥貝に隠している秘密があったのでした。
森絵都の漁師の愛人を読みました。
5つの短編が収録された短編集でした。
既婚者の長尾とつきあっていた紗江は、長尾が勤めていた音楽事務所の倒産を機に漁師に転職してしまったため、長尾について海辺の街に引っ越しました。
長尾の妻から時々なぜかかかってくるとりとめのない電話や、豊漁の時はうれしそうな長尾の様子を見ながら暮らしている紗江ですが、長尾の同僚の妻たちからの悪意のある視線に辟易しています。
長尾が実は妻と連絡を取っていたということを長尾の口から聞いて、紗江は...
震災後をテーマにした物語2つは面白く読みましたが、プリンを題材にした3編は全然面白いと感じませんでした。
誉田哲也の増山超能力師事務所を読みました。
超能力の存在が科学的に証明され、超能力を持っている人がその能力を使ってビジネスをしていく時代という設定の物語でした。
増山超能力師事務所の社員や関わる人たちが順番に主人公となって超能力を使ったビジネスが物語られていきます。
サブテーマとして、悪用すれば犯罪も簡単にできてしまう超能力をどのようにコントロールしていくかという仕組みについても考察されています。
超能力を持ってしまった人がそれを普通の社会の中でどのようにコントロールしていくのか、という考察はコンピュータや自動車が発達してしまった現在の自分たちに置き換えて考えることもできるなあ、と思ったのでした。
ジャン・ポール・ディディエローランの6時27分発の電車に乗って、僕は本を読むを読みました。
フランスのちょっと変わった人たちの物語でした。
主人公のジャンは不要になった本を廃棄処理する機械を運転する仕事に就いています。
毎日たくさんのトラックがジャンが動かしている機械に本を運んできます。
本は機械の大きなナイフで裁断され、ハンマーでつぶされ、溶解されていきます。
機械の動作音は大きく、内部の清掃作業は危険を伴う作業で、さらに上司はいけ好かないやつということで、ジャンは会社の仕事に満足感を得られていません。
そんなジャンの人生に赤いUSBメモリの形をした他の人の日記が紛れ込んできます。
その日記を読んだジャンは日記を書いた女性を探そうとするのですが...
この本を読んで印象的だったのは、満足感を得られない職場というのは拷問に近いものなのかもしれないということでした。
私がジャンと同じ状況に置かれたら精神を病んでしまうかもしれないと思いました。
北村薫の太宰治の辞書を読みました。
空飛ぶ馬をはじめとする「円紫さんと私」シリーズの最新作でした。
以前のシリーズでは「私」は女子大生でしたが、今作では連れ合いもいるし、かわいい子供もいる仕事盛りの女性になりました。
太宰治の女生徒という短編を題材に、その中でロココ調を辞書で引くという記載があることから、この辞書とはどの辞書なのだろうかという疑問を縦糸に、ピエール・ロチや三島由紀夫、そして「生まれてすみません」の話題を横糸に物語は語られていきます。
「私」の20年後の姿が描かれていても女子大生の頃の面影もちゃんと残っているのがうれしい。
同級生の正ちゃんも登場して正ちゃんらしい語りをしてくれるのもうれしい。
後書きで米澤穂信が書いているように「まさか、また読めるとは思わなかった」という驚きとうれしさでいっぱいで読んだのでした。
今年も、面白そうな本を探して読んでいきたいと思います。
そしてなるべく本を選ぶときに参考になるようなコメントを記録していきたいと思います。
昨年末から本を読むペースが落ちてきているので、今年はもう少し本を読んでいくようにしたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。