2017年に読んだ本の感想


ブクログブクログに読んだ本の感想をアップしています。


2017年12月8日

阿部和重と伊坂幸太郎のキャプテンサンダーボルトを読みました。
仙台と山形が舞台の物語でした。 小学校の時の少年野球のチームメイト相葉と井ノ原の二人はひょんなことから国際テロリストと関わり合いを持ってしまいます。 二人とも個人的に金銭的なトラブルを抱えており、この機を逃さず一発逆転の賭けに出ます。
宮城と山形の県境にある蔵王の火口湖お釜に隠された秘密とは何なのか、国際テロリストの目的は何なのか、謎が明らかにならないまま物語は展開していきます。
語り口がよいので面白く読みましたが、全体にストーリーが粗く感じたのは残念でした。


2017年12月8日

加納朋子のはるひのの、はるを読みました。
ささらさやシリーズの3作目でした。 ささらさやでは赤ちゃんだったユウスケが少年から大人に成長していくときに、ときどきはるひという少女が現れてユウスケにお願い事をしていきます。 ユウスケは幽霊を見ることができて、その幽霊と話をすることもできることがあります。 それぞれの短編で起きた事件が最後のエピソードに収束していきます。
それぞれの短編は面白く読みましたが、時間を超えた物語であることでちょっと全体が分かりにくかったのが残念です。


2017年11月20日

カズオイシグロのわたしを離さないでを読みました。
臓器提供を行うために育てられている少年少女たちが主人公の物語でした。 彼らが孤児院のような施設で育てられていくなかでの、悩みや友情・恋愛そして監督者たちとのかかわりが描かれています。 そして成人した彼らは臓器の提供を行って順番に使命を終えていくのでした。
テーマは重いのですが、物語は淡々と語られていきます。 なぜか、映画ブレードランナーの最後で敵役のレプリカントが「どうして俺たちの命は短いんだ?」と主人公に問いかけるシーンを思い出しました。


2017年11月20日

森絵都の宇宙のみなしごを読みました。
ヒロインの陽子は中学2年生、中学1年生の弟のリンと2人姉弟です。 両親が仕事で遅くなることが多い二人はいつも二人だけで生活しています。 この二人は性格が正反対なのに、仲が良く、いたずら好きです。
二人の新しい遊びは、深夜他人の家の屋根にのぼること。 この二人とリンのガールフレンドで陽子の同級生の七瀬さんが他人の家の屋根にのぼっているところを、クラスのいじめられっ子キオスクに見られてしまいます。
性格の違う4人の関わりがほのぼのとした筆致で描かれています。


2017年11月2日

内田樹の直感はわりと正しいを読みました。 内田樹の大市民講座という副題がついている、AERAに連載していた900字コラムを文庫化したものでした。
内田樹の主張が平易な文章で綴られています。 教育のあるべき姿と現状のギャップ、日本が直面している危機とそれに対する日本人の認識の誤り、現在の日本の病態は読んでいて肝が冷えることばかりです。
後書きの最後に「『新しいもの』は、つねに思いがけないところから、それまでとはまったく違う文脈の上に登場する」そのような新しいものが登場することを祈りたい、と書いてあって、本当にそうだなあと思ったのでした。


2017年10月21日

夏海公司のなれる!SE15を読みました。 なれる!SE16とあわせて社内競合のお話を最後に、なれる!SEシリーズも完結しました。
終わってみると最後のお話はSEがテーマの物語なのに池井戸潤のような展開になっていました。 さすがにちょっと無理があるよなあ、と思ってしまったのでした。
とは言えシリーズ全体は面白く読ませてもらいました。 登場するキャラクターも魅力的だったし、SEと言う仕事に対する指摘も当を得ていたと思います。 また同じような設定の小説が書かれるようだったら読んでみたいと思いました。


2017年10月4日

三浦しをんのまほろ駅前狂騒曲を読みました。 まほろ駅前多田便利軒シリーズの3冊目でした。
便利屋を開業している多田と居候の行天の生活も丸2年になりました。 そんな二人に4歳の女の子三峯はるを預かって欲しいという依頼が舞い込みます。 子供についてトラウマを抱える多田と行天は、しかしはるを預かることにするのでした。
おりしも、まほろ駅前で無農薬野菜を販売するHHFAと裏社会の星の抗争に、実力行使をすることにした岡老人のバスジャックがからんで、まほろ駅前では多田、行天、はるを巻き込んだ大乱闘騒ぎが発生してしまいます。
はるを預かっていく中で、多田と行天も自分の過去と折り合いをつけていきます。 暗い過去を抱えながらもみんな未来に向かって暮らしていくんだ、という力強いメッセージが輝くエンディングでした。


2017年10月4日

東野圭吾のマスカレードナイトを読みました。 マスカレード・ホテルシリーズの3冊目でした。
マスカレードホテル事件の舞台となったホテルコルテシア東京で、今度は年末のカウントダウンイベントに殺人犯が現れるという匿名の情報提供があります。 カウントダウンイベントは仮装パーティで犯人の特定は容易ではありません。
警視庁は私服の刑事を張り込ませるとともに、情報収集を行い、犯人を検挙しようとします。 前回の事件で活躍した警視庁の新田浩介とコルテシア東京の山岸尚美はまた一緒に事件に取り組むことになります。
警察が張り込み、新田も犯人を探している中、カウントダウンが始まり新年を迎えます。 新田は何とか犯人を見つけることが出来るのですが...
事件の真相については解決編で解説されますが、あの伏線がここにつながるのね、と感心させられることばかりでした。


2017年10月4日

夏海公司のなれる!SE14を読みました。 4つの短編が収録された、なれる!SEシリーズの番外編でした。
「世にも奇妙な?ビジネスアライアンス」は、工兵のライバル次カ丸縁とJT&Wの梅林が奇妙な共同戦線を張るお話です。 二人のそれぞれの立場とビジネスに対する嗅覚の違いが面白く描かれています。
「ガテン系?女子の幸せ獲得術」は薬院加奈子の合コン奮戦記です。 大学の友人のすすめで合コンに参加することになった加奈子ですが、仕事とは違う雰囲気に戸惑い気味です。 会社で同僚のおじさんたちと飲んでいる方がずっと気楽なのに...
このシリーズの主人公は工兵と立華ですが、他の登場人物たちもみんな一癖も二癖もあるから面白いんだよなあ、と思いました。


2017年10月1日

森絵都の気分上々を読みました。 日常に潜むとても恥ずかしい出来事や感動的な出来事を描いた短編集でした。
17レボリューションと言う短編は、女子高校生の主人公が自分に革命を起こすために、親友に絶好を申し渡すと言う物語でした。 その親友から「またなんか常人の及びもつかないような変なこと、考えているんだろうと思ってさ」と冷静に指摘されたとおりで、いろいろ苦闘した後、結局その親友に助けを求めることになるのでした。 そして、その親友から聞くことになる話は...
ひねりのきいた物語たちを楽しみました。


2017年9月23日

夏海公司のなれる!SE13を読みました。 サブタイトルが徹底指南?新人研修ということで、今回のテーマは新人研修です。
桜坂工兵も入社2年目になり、なれる!SEも13巻目になりました。 いやいや、各巻のイベントは普通に半年から1年くらいかかるプロジェクトだったから工兵ももう十分中堅社員ですね。 今回のテーマは新人研修と言うことで意識高い系の新人やゆとり満載の新人に工兵も振り回されてしまいます。
作中で橋本課長から指摘される、新人の特性をちゃんと把握して育成していたか、という指摘は自分を振り返ってみるとちょっと胸が痛いですね。


2017年9月20日

中道裕大の放課後さいころ倶楽部10を読みました。 ボードゲームを題材にしたコミックの10巻目でした。
今回は下級生ペアの恋のお話も加わって賑やかに物語は進んでいきます。 いつも遊んでいるゲームが題材になるとちょっとうれしくなってしまいます。


2017年9月20日

坂木司の大きな音が聞こえるかを読みました。 高校生の八田泳はサーフィン好きの男の子、裕福な家庭で優しい両親と暮らしています。 しかし、このまま高校生活を送っていると自分は腐ってしまうのではないか、という考えが頭をよぎります。
そんなときに、アマゾン河の河口で満月の時に発生するポロロッカでサーフィンをしたいと思うようになります。 ちょうど、母親の弟の剛くんがアマゾンに出張していることがわかったので、泳は剛くんの協力を受けてポロロッカに挑戦することにします。
渡航のお金を貯めるためのアルバイトでの経験、ブラジルのベレンでの出来事、ポロロッカでサーフィンをする様子を撮影するチームとの出会い、そしてポロロッカでのサーフィン、泳はいろいろな経験の中で大人になっていくのでした。
狭い日本の中の常識だけで世の中を判断せずに、世界に出てみて気づくことは多いんだろうな、と思いました。


2017年9月8日

森絵都の異国のおじさんを伴うを読みました。 向き合い方によって世界の印象はがらっと変わるというテーマの短編集でした。
「藤巻さんの道」という短編は物語の語り手の僕が有能な同僚の藤巻さんとつきあうという物語でした。 藤巻さんに道の写真だけで編まれた写真集を見せてどの写真が好きか聞いたところ、荒涼とした道の写真を選んだのでした。 なぜ、藤巻さんは花畑の道の写真ではなく、枯れ草と土が続いている道の写真を選んだのか... 真相があらわになった時に、僕が選んだ行動が印象的です。
一番気に入ったのは「桂川里香子、危機一髪」という短編でした。 お金持ちのじゃじゃ馬娘がそのまま大人になった里香子の、新幹線にまつわる危機一髪の物語が語られます。 世界の認識が変わった時に里香子がとった行動に笑い転げてしまいます。


2017年9月2日

近藤史恵の桜姫を読みました。 歌舞伎の世界を舞台にした恋愛ミステリーでした。
歌舞伎役者を父に持つ笙子は精神的に不安定な女性です。 幼くして兄の音也を亡くし、母親も亡くしてしまった笙子は、なぜか兄を殺す夢を見るようになります。
笙子の前に音也の死の真相を突き止めたいという音也の友人だった銀京という青年が現れます。 笙子と銀京は調査を始めるのですが...


2017年8月25日

梨木香歩のエストニア紀行を読みました。 森の苔・庭の木漏れ日・海の葦というサブタイトルがついています。
梨木香歩がエストニアを旅行して豊富に残されている自然を堪能します。 エストニアに生きる人たちの生活も描かれていて、なぜか懐かしさを感じてしまいます。
大量生産・大量消費の生活に慣れてしまった日本人が忘れてしまった自然との共存がまだそこには残っているのでした。


2017年8月11日

内田樹の下流志向を読みました。 学ばない子どもたち、働かない若者たち、というサブタイトルがついた若者論でした。
現在問題になっている小学校の学級崩壊や若者のニート問題が、子どもたちが育つ過程で「等価交換」があたりまえになっていることが原因であると考察しています。 子どもたちが育つ過程で賢い消費者であるために有利に等価交換を行うことが自分に有利になると学習します。
しかし、学びや労働は等価交換ではありません。 学校は支払った対価に対してサービスを提供する場ではなく、学校は自分が成長するための場である、ということが「等価交換」を前提として育ってきた子どもたちには理解できないのです。 このため、子どもたちは自分たちの幼い判断基準で学校の価値を判断し、「いまここで勉強して何の役に立つんですか」という質問をすることになります。
労働についても本来労働というものはオーバーアチーブ(得られるものは提供するものより少ない)のが前提となっているのですが、現在の若者は消費主体として労働に対する適正な対価を求めます。 このため、働かない方が消費主体として有利であると判断してしまうわけです。
いま世の中で起きている、何か変だなあ、と思える事象の原因が明確に解説されています。


2017年7月31日

角田光代の彼女のこんだて帖を読みました。 料理教室発行の雑誌に連載された短編集だそうです。
いろいろなシチュエーションで作られる料理が紹介されています。 恋人に振られた時、新しい恋が始まる時、家族の絆を深める時、その時にぴったりの料理が紹介されています。
konnokは料理はできないのですが、面白く読みました。 物語の中に登場する店長さんのように密かに料理教室に通おうかなあ、と思ってしまいます。


2017年7月31日

宮部みゆきの荒神を読みました。
時は元禄、陸奥国の2つの小藩、永野津藩と香山藩の藩境にある仁谷村が何者かに襲われ村人はいなくなってしまった。 香山藩の小日向直弥は調査のために仁谷村に向かいます。
永野津藩と香山藩の確執、現れた怪物と戦う侍たち、怪物の出自の物語、面白く読みました。 特に怪物の描かれ方がシン・ゴジラと似ているのが面白いと思いました。
気になるのは怪物が村を襲う時のシーンは以前どこかで読んだことがあるような気がしたことです。 あれ、同じ本をもう一度読んでしまったかな、と思ったのですが、ブクログに記録した内容では荒神は初めて読む本のようです。 不思議ですね。


2017年7月26日

三浦しをんの政と源を読みました。
政こと有田国政は74歳、銀行を退職後悠々自適の生活を送っていたのですが、なぜか妻は数年前突然長女夫婦のところに引っ越してしまい、わびしく一人暮らしをしています。 政の幼なじみの源こと堀源二郎はつまみ簪職人で、妻に先立たれたあと、転がり込んできた弟子と一緒に暮らしています。
常識人の政、破天荒の源と正反対の性格にもかかわらず、つるんでしまう二人が源の弟子や弟子の恋人と関わりながら下町で生活していきます。 政と源がそれぞれ結婚した時のエピソードも語られ、面白く読みました。
老人が主人公の物語というと老人がかっこよく活躍する物語が多いですが、この物語では等身大の老人が描かれていて、悩んだり、嫉妬したり、虚勢をはってみたりといった行動が共感を呼びます。
konnokも同じ年齢にさしかかっているので、政と同じ目に遭わないようにカミさんへの気遣いが必要だなあと反省したのでした。


2017年7月21日

西加奈子のきいろいゾウを読みました。
トラウマを抱えた不器用な二人の物語でした。 ムコさんとツマは結婚したばかり。二人で田舎に引っ越してきます。
近所に住む老人のアレチさん、その奥さんで認知症のセイカさん、隣に住む駒井さんとその孫の大地君。 大地君は都会で学校に行けなくなって駒井さんのところに居候することになったのでした。 ムコさんは売れない小説家なので、「しらかば」という老人養護施設でアルバイトをしています。
「きいろいゾウ」の童話を縦軸に周りの人たちとの交流を横軸にムコさんとツマの生活が続いていきます。 そして、編集部に届いた「助けを請いたい」と言う手紙で物語は急展開します。
ふたりの愛の物語がのびやかな筆致で描かれていきます。


2017年7月5日

村上春樹の騎士団長殺しを読みました。
久しぶりの長編小説で、語り口は面白く読んだのですが、エピソードの納得性にちょっと不満を感じました。 村上春樹の物語は言葉での説明はされず、エピソードが積み重なることにより物語の立体感が出てくると思っていますが、この物語ではエピソード間の整合性があまりとれていないように感じました。
その結果、消化不良のエピソードがたくさん残った平面的な物語になってしまったと感じました。 ちょっと残念です。


2017年6月28日

村上春樹の職業としての小説家を読みました。
これから小説家を目指す若い人に向けた講演という形式で書かれた村上春樹の小説家論でした。 他のエッセイなどでも書かれていたことが章立てされて説明されています。
一度書いた小説をもう一度頭から書き直すとずっとよい小説になる、という指摘はプログラム言語でのコーディングなどでも実感しているところなので納得しました。
体力が充実していないと、良い小説を書き続けることはできないという指摘も同感でした。 若い頃は勢いのある面白い小説を書いていたんだけど、中年になると小説に勢いや魅力がなくなってくる小説家もいるので、ずっと質の高い小説を書き続けるために村上春樹が努力しているというのはすばらしいと思います。
村上春樹と同時代に生きて村上春樹の小説を読めるというのは幸運なことだと思ったのでした。


2017年6月22日

クリフォード・ピックオーバーのビジュアル数学全史を読んでいます。 普通の読み物ではないですが、友人が翻訳をしているので買ってみました。
数学に関連するトピックが1項目1ページで綺麗な図付きで解説されています。 昔から数学の読み物は好きなので、ちょっと時間がある時にぱらぱらとめくって開いたトピックを読むというのも楽しいものです。


2017年6月18日

森絵都の架空の球を追うを読みました。 30代から40代の女性たちの日常のひとこまを描いた短編集でした。
もう若くはないその世代の女性たちが輝く瞬間が描かれています。 本人たちはたぶんそうは思っていないだろうけど、とても幸せな心温まる瞬間なのでした。


2017年6月10日

池井戸潤のアキラとあきらを読みました。
山崎瑛と階堂彬の二人のあきらの物語でした。 山崎瑛は小さな町工場の社長の息子ですが、取引先の策略により町工場は倒産、夜逃げ同然に母親の実家に戻ることになります。 階堂彬は祖父と父親が育ててきた海運会社の御曹司ですが、無責任な行動で本業を脅かす叔父たちの行動に悩まされ続けることになります。
二人は同じ銀行に同期行員として採用され、活躍していきます。 そして、階堂彬の叔父たちがバブル期に建てた不採算のホテル事業により、本業まで破綻に瀕してしまった海運会社の復活に協力することになります。
池井戸潤は銀行を舞台にした丁々発止のやりとりが魅力ですが、今作ではエピソードが小ぶりだったのでちょっと残念だと思いました。


2017年5月30日

恩田陸の私と踊ってを読みました。
夢の断片を描いたような幻想的な短編集でした。 怖い物語、奇妙な話、いろいろな物語を楽しみました。
「東京の日記」は東京で厳戒令がしかれて通信の自由が奪われるというお話ですが、共謀罪が施行される今、数年後には架空の物語ではなくなっているのかもしれません。


2017年5月24日

デボラ・インストールのロボット・イン・ザ・ガーデンを読みました。
ベンとエイミーが暮らす家の庭にロボットのタングが迷い込んできます。 タングは金属製の四角い箱の胴体に四角い箱の頭、排水ホースのような腕と足、旧式のロボットなのでした。 タングのAIは未発達で幼い子供のようです。そしてタングの胸の中のシリンダーにはひびが入っていたのでした。
優秀な法廷弁護士のエイミーに頭の上がらないベンは定職に就いたことがなく親の遺産で生活しています。 そしてベンとタングはタングを修理できる技術者を探してカリフォルニア、ヒューストン、東京、パラオと旅をしていくことになります。
幼い子供のようなタングの言動がほほえましい物語でした。


2017年5月17日

小路幸也のヒア・カムズ・ザ・サンを読みました。 古き良き時代のホームドラマ東京バンドワゴンシリーズの10作目でした。
もともとは日常の謎をテーマにしたシリーズでしたが、各巻で登場した人たちもエピソードに顔を出して近況が説明されるので、本当にホームドラマと言った風情の物語になってきました。 マンネリ化してきているところもありますが、登場人物たちのこれからが楽しみなので、続編が文庫化されたら読んでいくことになると思います。


2017年5月10日

米澤穂信のいまさら翼といわれてもを読みました。
氷菓を初めとする古典部シリーズの最新刊短編集でした。 おなじみの折木奉太郎や千反田えるたちの物語が語られます。
奉太郎の省エネのモットーがどこから始まったのか、が語られる「長い休日」も良かったのですが、やはり表題作の「いまさら翼といわれても」が一番良かったと思いました。
みんな少しずつ大人になっていくんだなあ、と思わせる物語たちでした。


2017年5月6日

SCRAPのリアル脱出ゲーム公式過去問題集を遊びました。
この本に収録されているのは、ある飛行機からの脱出、ある使徒からの脱出、謎の聖堂からの脱出、月面基地からの脱出の4公演でした。 konnokが実際に参加したのは月面基地からの脱出だけだったので、他の3作品は楽しめました。
実際に問題を解いてみると正解率は50%以上なのですが、本番の緊迫した状況ではなかなか解けないものなんですよね。 konnokが参加した月面基地からの脱出では脱出に失敗しました。(楽しかったんですけどね。でも難易度は他の3作品より高いような気がします。)
柔軟な頭を維持してそのうちまた脱出ゲームに参加したいと思ったのでした。


2017年4月25日

坂木司のホリデー・インを読みました。 ワーキング・ホリデー、ウィンター・ホリデーの登場人物たちが主人公の短編集でした。
生まれて初めて父親のヤマトを訪ねてきた小学5年生、進。 進が現れたためホストから宅配便配達に仕事を変えたヤマト。 ヤマトと進の世話を焼くホストクラブの経営者ジャスミン、といった魅力的な登場人物たちが描かれています。 近所にいそうな人たちの物語を楽しみました。


2017年4月25日

貴志祐介の極悪鳥になる夢を見るを読みました。 konnokも気に入っているホラー小説作家貴志祐介のエッセー集でした。
ホラー小説を書いてあるだけあって、ものごとの見方が普通の人とは変わっていて面白く読みました。
とは言え、「人間が絶対に過ちを犯さないことを前提に作られているシステムと性善説に基づいて作られているシステムは必ず破綻する」という指摘についてはその通りだと思ったのでした。


2017年4月20日

伊坂幸太郎の首折り男のための協奏曲を読みました。 オムニバス短編集Story Sellerに掲載された短編2編をふくむ8編の短編を収録した短編集でした。
気に入ったのは「僕の舟」という短編でした。 若い頃に「水平リーベ僕の舟」という元素周期表の言葉が気に入っていつも口ずさんでいたという女性の物語でした。 お見合いで結婚した夫と平凡な一生をおくり、老境に入った彼女は初恋の男性が今どうしているか知りたくなって探偵に調査を依頼するのですが... 若い時も老境に入ってもかわいい性格のその女性の物語が気に入りました。


2017年3月30日

東野圭吾の祈りの幕が下りる時を読みました。 刑事ミステリー加賀恭一郎シリーズの文庫最新刊でした。
加賀恭一郎の母親百合子が家庭内のもめ事に疲れて失踪してから16年。 仙台に身を隠して生活していた時に百合子と親しくしていた男性からの連絡で恭一郎は母親が孤独に亡くなったことを知ったのでした。
日本橋署に勤務する恭一郎は近くで発生した殺人事件の押収品と仙台の母親の遺品のメモに共通点があることに気づきます。 そして恭一郎がたどり着いた推理は...
読んでいくうちに切なくなってしまう物語でした。


2017年3月25日

東山彰良の路傍を読みました。
俺28歳、同い年の喜彦とつるんで定職にも就かず泥酔したサラリーマンから財布を抜き取っては酒を飲んでソープランドに行く日々。 そんな二人のチンピラが遭遇するトラブルが連作短編で語られていきます。
二人が遭遇するのは法律に触れるようなトラブルばかりですが、二人がきわどいところで難を逃れてなんとか生き延びていく様子が飄々とした語り口で語られるので物語に引き込まれてしまいます。


2017年3月18日

中道裕大の放課後さいころ倶楽部9を読みました。
ボードゲーム紹介コミックの9冊目でした。 今回も女子高校生たちがお邪魔者、アンドールの伝説、コードネーム、ディクシットといった定番のボードゲームを遊びます。 ゲームの魅力がわかりやすく紹介されています。


2017年3月17日

ジェフリーアーチャーの機は熟せりを読みました。
クリフトン年代記の6巻目です。 セバスチャンの同僚ハキム・ビシャラは悪役たちの陰謀により、麻薬密輸の嫌疑を受けてしまいます。 ビシャラの無実を証明しようとセバスチャンたちは行動を開始します。
ハリーの英雄的な行動の結果、ロシアのアナートリー・ババコフの著書は全世界で発売され、ババコフはノーベル賞を受賞することになります。 そして、ノーベル賞の授賞式の日、ババコフは...
悪女バージニアは悪事を重ねたあげく収入が途絶えてしまい、窮地に陥ってしまいます。 まあ、この物語では窮地に陥った登場人物が次のタイミングでは逆転するのが常なので心配はしませんが。
主人公たちだけではなく、敵側の登場人物も魅力的に描かれているので、面白く読みました。 ところで、この物語はいったいいつ完結するのでしょうか。


2017年3月4日

北村薫の中野のお父さんを読みました。
主人公の田川美希は文芸誌の編集者。学生の頃はバスケットボールでならした体育会系の編集者です。 その美希のところにいろいろな謎が持ち込まれます。 不思議な謎を快刀乱麻のごとく解決するのは中野の実家のお父さんなのでした。
8つの謎の中で気に入ったのはエイプリルフールの話と宝くじの話でした。


2017年3月4日

三上延のビブリア古書堂の事件手帖7を読みました。
ビブリア古書堂の事件手帖シリーズの完結編でした。 栞子の母親智恵子が急に失踪した理由が明かされ、大輔と栞子もハッピーエンドを迎えます。
今回のエピソードでは古書中の古書、シェークスピアの戯曲の初版本とその複製が登場します。 徳川家康と同時代のシェークスピアの戯曲がどのように出版されたのか、それの複製がどのように作られたのかが解説されます。
栞子と智恵子のシェークスピアの戯曲の初版本をめぐる勝負はどのような結末をむかえるのでしょうか。 栞子さんが大輔にシェークスピアの蘊蓄を語るところでエンディングを迎えるのがこの物語にふさわしいと思いました。


2017年2月18日

山田詠美の学問を読みました。
東京から静岡に転校してきた仁美、人気者でリーダーシップのある心太、医者の息子で食いしん坊の無量、眠るのが大好きな千穂、彼らが小学生から中学生、高校生に成長していく過程が官能的な表現を含めながら描かれます。
のびのびと生活していく登場人物たちの成長の物語を楽しみました。 そして彼らがいつどのようにこの世を去るのかということも章のとびらに書かれていて、人生のはかなさも感じてしまいます。


2017年2月8日

上橋菜穂子の炎路を行く者を読みました。 精霊の守り人のシリーズの外伝でした。
ヨゴ皇国の近衛兵<帝の盾>の武人の長男として生まれたヒュウゴは、ヨゴ皇国がタルシュ帝国に滅ぼされてしまったためにタルシュ帝国の兵士により近衛兵の親族皆殺しに合います。 母と妹を殺されながらも何とか逃げ延びることができたヒュウゴは、武術のスキルを活かして貧民街のごろつきたちのカシラになるのでしたが、満たされない思いが募ります。
ヒュウゴはヨゴの人たちの助けになるべく、タルシュ帝国の武人になることを決意するのでした。 修羅を行くヒュウゴの心の支えは、ヒュウゴを温かく見守ってくれたリュアンだったのでした。
バルサの15歳の時のエピソードも収録されていて、こちらも面白く読みました。


2017年2月5日

江國香織のスイートリトルライズを読みました。
人付き合いが苦手な会社員の聡とテディベア作者の瑠璃子の夫婦は結婚して数年たちます。 会社から帰ると自室に閉じこもってテレビゲームをしている聡、それに不満を感じていない瑠璃子。 聡の妹の文からは「お兄ちゃんたちへん」といわれてしまいます。
そして、聡にも瑠璃子にも互いに相手に言えない秘密ができてしまいます。 夫だけを愛せればいいのに、と思う瑠璃子の日常が描かれます。


2017年2月1日

誉田哲也の感染遊戯を読みました。
姫川玲子シリーズの短編集でしたが、今作では姫川玲子はほとんど登場しません。 代わりに姫川玲子と関連のある3人の刑事・元刑事が主役となって各短編が語られていきます。
薬害事件などのような官僚による法に問われない不正と、それを法によらずに裁こうとする被害者側の行動がテーマになっています。 許されない犯罪なのだが、仕方のない面もあると思わせる語り口が誉田哲也らしいと思いました。


2017年1月18日

絲山秋子のラジ&ピースを読みました。
相馬野枝は25歳から六年間続けた仙台のFM局から群馬のFM局に転職します。 そこでラジ&ピースという番組のパーソナリティーを始めます。 野枝は番組で見せる顔とは違うかたくなな素顔をもてあましています。 そんな野枝は朗らかで無防備な女医の沢音と出会って時々会うことになります。
自由に生きる女性の生き様が淡々と描かれています。


2017年1月18日

越谷オサムのくるくるコンパスを読みました。
将棋部の中学三年生、カズト、シンヤ、ユーイチは関西方面の修学旅行を途中で抜け出す計画を立てます。 二年生の学期末に大阪に転校していった佳織に会いに行こうと考えたのでした。
何とか先生の目を盗んで修学旅行を抜け出した三人は複雑な地下鉄の乗り換えに迷ったり、不良高校生に絡まれたりしながらも何とか佳織の通う中学にたどり着くことが出来たのでしたが...
エピローグで語られる後日談が感動的です。


2017年1月17日

カズオ・イシグロのわたしたちが孤児だったころを読みました。
イギリス人のクリストファーは上海の租界で貿易関係の仕事をしていた父と美しい母とともに子供時代を過ごします。 ところが、父と母は失踪したのか誘拐されたのか突然失踪してしまいます。
大人になって探偵で名をあげたクリストファーは父と母が失踪した真相を探るため戦争中の上海に戻ってきます。 そしてそこで明かされた真実は驚くべきものだったのでした。
カズオ・イシグロの小説は面白いのですが、背景を丹念に描きその積み重ねで事実を語るという手法なので、通勤電車で細切れに読んでいるkonnokの読書法とは相性が悪いなあ、と思ったのでした。


2017年1月16日

川瀬七獅フよろずのことに気をつけよを読みました。 川瀬七獅フデビュー作で、呪術をテーマにしたミステリーでした。
呪術を専門にしている仲澤のもとに、祖父を惨殺された真由という少女が訪ねてきます。 仲澤は真由とともに事件の真相を探っていきます。 四国から東北までまわって江戸時代にさかのぼる呪術師の存在を探り当てた仲澤と真由はその本拠地に乗り込んでいくのですが...
ちょっと荒削りなところもありますが、いきおいのある物語を楽しみました。


2017年1月1日

今年も、面白そうな本を探して読んでいきたいと思います。 そしてなるべく本を選ぶときに参考になるようなコメントを記録していきたいと思います。 どうぞよろしくお願いいたします。




2016年に読んだ本の感想