2005年に読んだ本の感想



2005年12月21日

岩井志麻子の合意情死(がふいしんぢゆう)を読みました。
明治時代を舞台としたちょっと愚かな小市民たちが主人公の物語でした。 狭い範囲でちっぽけな権力を振り回す人。 自分は正しいと思いこんで行ったことが、実は他人を陥れることになってしまう人。 岩井志麻子の他の小説のようなおどろおどろしいところはありませんでしたが、楽しめました。


2005年12月20日

石田衣良の4TEENを読みました。
14歳の4人の中学生が主人公の物語でした。 難病に冒されていたり、家庭環境に恵まれていなかったり、いろいろな悩み事を抱えている4人がたくましく14歳の季節を生きていきます。 感動的な部分もあり、考えさせられるところもある物語で一気に読んでしまいました。
私が以前参加していたゲームの会が月島や新川の区民館で行われていたり、今担当している東京の仕事場所が聖路加病院の近くだったりするので、描かれているイメージが浮かんでくるのも気に入った理由かも知れません。


2005年12月15日

石田衣良の電子の星を読みました。
池袋ウエストゲートパークシリーズの第4冊目でした。
この巻は面白かった。 ツインタワーの兄弟が始めたラーメン屋とそのアルバイトの女の子の物語や、山形から出てきた負け犬の物語などは楽しめました。
全体がダークな雰囲気なのに読み終えたあとは爽快感が残る物語の書き方は石田衣良の持ち味なのかもしれません。


2005年12月8日

石田衣良の骨音を読みました。
池袋ウエストゲートパークシリーズの第3冊目でした。
マコト君の活躍や恋物語もそれなりに面白かったのですが、2冊目少年計数機のときのような感動はありませんでした。 4冊目に期待ですね。


2005年12月3日

石田衣良のLASTを読みました。
最近石田衣良にハマっています。 この本は借金地獄にはまってしまった人の最後の逆転劇を描いた短編集でした。 殺すぞと脅される人、それより恐ろしいことが待っている人。後味の悪い物語が続きます。
私も、今の会社に入っていなくて自分で起業してたりしたら、きっと経営がうまく行かなくて借金地獄に落ちてるんだろうな、とか考えてしまうと他人事とは思えません。


2005年12月2日

石田衣良のうつくしい子どもを読みました。
14歳の主人公の弟が殺人を犯してしまった。 なぜ、弟は殺人をしてしまったのか? 家族はどうなってしまうのか。
石田衣良らしい語り口の小説でした。 主人公の少年と事件を取材する記者の二人の視点から交互に描かれているので、立体的な物語になっています。 物語の展開も予想外でしたが、楽しめました。


2005年11月27日

貴志祐介の硝子のハンマーを読みました。
貴志祐介の本を古本屋で見つけたので、早速買って読みました。 読後感としては、よく出来たミステリーだけど、私が貴志祐介の著作として期待するレベルには達していないなあ、という感想でした。
犯人の側の描きこみもちょっと唐突な感じがしたし、この殺人が行われなければならなかった必然性がよくわかりませんでした。


2005年11月25日

しげの秀一の頭文字〈イニシャル〉D 32を読みました。
気に入っている峠の走り屋のマンガ最新刊です。 今回は、プロジェクトDのにせものが登場します。 そして拓海にも新たな出会いがやってきたのでした。


2005年11月23日

石田衣良の少年計数機を読みました。
池袋ウエストゲートパークの続編でした。 今回も魅力的な物語が3編語られています。 主人公のマコトが魅力的だし、物語もいろいろな伏線が効いていて楽しめるし、登場人物もそれぞれ癖があってしっかり描かれています。
現代の街に生活している人たちを描いた作品としてはおすすめの1冊ですね。


2005年11月19日

石田衣良の池袋ウエストゲートパークを読みました。
石田衣良のデビュー作だそうです。 池袋に住んでいるストリートボーイたちの物語でした。 私はこの物語を読んで、女神転生2を連想してしまいました。
このシリーズは4冊目まで文庫で出ているようなので、続けて読んでいこうかな、と思っています。


2005年11月16日

石田衣良のスローグッドバイを読みました。
石田衣良の本は2冊目でしたが、これも面白かった。 普通の人たちの恋を描いた10の短編が載っています。 一つ一つの物語がきれいな珠のような掌編でした。 あとがきに書いてあったように確かに全部読んでしまうのがもったいないですね。 週末は元気にデートに出かけたくなります。
私は、この本を読んでOヘンリーの短編を連想しました。 普通の人たちの生活の暖かいひとコマが描かれているからかもしれません。


2005年11月11日

北原保雄編の続弾 問題な日本語を読みました。
問題な日本語の続編です。
いま、若者の間で使われている(または若者でない人たちも使っている)誤った言葉、新しい言葉を冷静に分析して解説しています。 正編も納得して読みましたが、これも面白く読めます。 勉強になる点も多く、おすすめです。


2005年11月9日

浅田次郎の真夜中の喝采を読みました。
きんぴかシリーズの3巻目です。 3巻目で草壁が殺されてしまいます。 そして、広橋は立ち上がり...と話が続くのかと思いきや、浅田次郎らしくない中途半端なストーリーになっています。 結末も、なんだこりゃ、というようなものだし。
このシリーズの評価は、konnokとしては低いですね。


2005年11月5日

齋藤武の仙台方言あそびを読みました。
気に入っている仙台弁のホームページ(仙台方言遊び)が本になっていました。 昨年、地元の本屋さんから出ていたようです。 私は見つけてすぐにインターネットで注文してしまいました。
仙台弁を使用していた人たちの生活が目に浮かんでくるような詩が載っています。 本になると、ホームページで見るのとはとはまた違った趣があります。


2005年11月4日

浅田次郎の血まみれのマリアを読みました。
きんぴかシリーズの2巻目です。 プリズンホテルにも登場した阿部マリアが再登場です。 シリーズ2巻目はちょっとパワー不足です。 第3巻目に期待したいところです。


2005年10月31日

浅田次郎の三人の悪党を読みました。
きんぴかシリーズの1巻目です。 それぞれ、自分たちの生き方を否定されてしまった、生まれもポリシーも異なる三人の男たちが繰り広げるピカレスクでした。 浅田次郎らしく、それなりにコメディもあり、涙もあり、楽しめました。


2005年10月29日

藤島康介のああっ女神さまっ 31を読みました。
愛しのベルダンディの物語、最新刊です。 今巻は「好き」がテーマでした。 まあ、安心して楽しめますね。
今週、会社の近くでたまたま藤島康介の原画展があったので覗いてみましたが、額縁に入った原画の値段が26万円! 驚きました。 今巻はそのときに買いました。
そう言えば、会場に入るときに住所氏名年齢を書かされたのでちょっと恥ずかしかったです。 きっと年齢は一番上でしょうねえ。


2005年10月17日

石田衣良の娼年を読みました。
面白かった。おすすめです。 私の小説の評価では、物語の中のカットが絵としてイメージできないような小説は好きではありません。 もちろんストーリーは重要ですが。
この本には魅力的なカットがたくさん書かれているので気に入ってしまいました。 主人公の視点から相手の女性の気持ちを感じさせる形で描かれているのがいい感じです。


2005年10月14日

ベルンハルト・シュリンクの朗読者を読みました。
ドイツの小説は本当に久しぶりに読みました。ヘッセとかグラスはよく読んだのですが。

少年の頃に出会った年上の女性は、愛し合った後に本を朗読することを要求しました。 しかし彼女は突然いなくなってしまいました。
そして彼は成長して法律を学んでいるときに、昔ナチスの親衛隊の下で働いていたことがあった、その女性の裁判に偶然立ち会うことになったのでした。
悲しく美しく、やりきれない思いがわきあがってくる物語でした。 運命とはそういうものなのかもしれないな、と思わせる物語でした。


2005年10月12日

角田光代の空中庭園を読みました。
読んでいるうちに胸が悪くなってくるような、バラバラの家族の物語でした。 「秘密のない家族」がモットーであるはずなのに、家族のそれぞれが秘密や問題を抱えていて家族を裏切っているのでした。 書かれているエピソードがリアルで、ちょっとしたホラーより怖い物語でした。


2005年10月4日

わかぎゑふの花咲くばか娘を読みました。
最近、本を読む心持にならない状況が続いているので、リハビリのつもりで軽いエッセイを読みました。 いつものわかぎゑふらしいギャグいっぱいのエッセイでした。


2005年9月27日

山田詠美のPay day!!!を読みました。
思春期の男の子と女の子の双子の兄妹が恋の悩みや母親の死を乗り越えてたくましく生きていくという物語でした。 舞台はサウス・キャロライナで、イタリア系の母親とアフリカ系の父親を持った二人が互いを思いやりながらそれぞれの悩みと向き合っていきます。
ここのところずっと仕事が忙しかったので、物語がすっと頭に入ってきませんでした。 仕事が一段落したら再度読み直してみようと思います。


2005年9月5日

山本文緒のプラナリアを読みました。
自分のスタイルで精一杯生活してきたはずなのに、ちょっとしたつまづきから周囲の人たちと薄い壁ができてしまった人たちを描いた短編集でした。
確かに、そういうことってあるよなあ、と思わせる筆致に好感が持てます。 この人の他の小説も読んでみようかな、と思ってしまいました。


2005年9月2日

東野圭吾の眠りの森を読みました。
悪意などにも登場する加賀恭一郎が探偵役です。
物語も面白く、加賀さんあなたも隅に置けないんですね、というエピソードもあって楽しめました。 エンディングの後にこの物語はどのように展開するんだろうか、という余韻もあっていい感じです。


2005年8月28日

東野圭吾の名探偵の掟を読みました。
ミステリのトリックやお約束をコメディタッチで解説した本でした。
この本を読んで私は工学系の教科書を連想してしまいました。 ミステリの基本となるトリックがオームの法則やキルヒホッフの定理の解説のような感覚で書かれています。 ミステリを書くというのも結構大変なんだな、と再認識させられる本でした。


2005年8月24日

谷崎光の てなもんやOL転職記を読みました。
中国てなもんや商社を書いた女性のエッセイでした。 なにわ娘のど根性、花登筺のドラマのような物語でした。
最後のエッセイの、中国のパワーに日本は負けてしまうんじゃないか、という意見がちょっと気になってしまいます。


2005年8月18日

東野圭吾の十字屋敷のピエロを読みました。
東野圭吾らしい凝ったつくりのミステリでした。 ピエロの視点からの描写がキーになっていて、登場人物の描写だけの物語りより奥行きのあるものになっています。 最後のどんでん返しは東野圭吾らしいと思いました。


2005年8月10日

浅田次郎の霞町物語を読みました。
浅田次郎の少年時代から青年時代にかけての思い出が霞町と呼ばれていた場所のたたずまいを背景に描かれています。
印象的な登場人物たちの生き様や想いがじかに伝わってくる浅田次郎らしい物語でした。


2005年7月27日

東野圭吾の探偵ガリレオを読みました。
予知夢の本編だったので、本屋で見つけて早速買って読んでしまいました。 科学を応用した装置や物質の中には結構危険なものも多いなあ、と変なところに感心してしまいました。
東野圭吾のこのようなシリーズは軽い読み物としては楽しめます。


2005年7月23日

東野圭吾の予知夢を読みました。
探偵ガリレオの続編でした。 オカルトのような事件が実は複雑な背景・トリックにより論理的に説明されるという短編集でした。 東野圭吾のこのようなシリーズは軽い読み物としては楽しめます。


2005年7月21日

恩田陸の球形の季節を読みました。
超能力をテーマにした、学園ものの小説でした。 人物の描き方などは結構気に入っているのですが、いつものとおりこの人の物語としてのストーリーは破綻しています。 何がどのように起こっているのかを現実的にわかりやすく書いて欲しいですね。


2005年7月12日

東野圭吾のある閉ざされた雪の山荘でを読みました。
虚構が2重構造になっている物語でした。 物語のプロットは面白いと思いましたが、作り物じみています。 種明かしもとってつけたようでちょっといまいちでした。
この人の小説の面白さはディテールの描きこみによる現実感にあると思うので、その点ではちょっと不満でした。


2005年7月6日

村山由佳の坂の途中を読みました。
おいしいコーヒーのいれ方の7冊目です。 おなじみのショーリとかれんの恋物語です。
この巻では、勝利がアパートを借りてひとり暮らしを始めましたが、かれんとの関係はなかなか進展しません。 そしてかれんには密かに決心したことがあったのでした。
いつもの村山由佳らしい物語を楽しめます。


2005年7月3日

内田春菊のベッドの中で死にたいのを読みました。
内田春菊らしい女性のセクシャルな感性を描いたコミックでした。 うなずける面もあり、へえそうなのかな、と思わせる部分もありました。
杉浦日向子原作の「放流門人魚」(ほるもんにんぎょ)というまんがが収録されていましたが、こちらも杉浦日向子らしい作品で楽しめました。


2005年7月2日

浅田次郎の珍妃の井戸を読みました。
蒼穹の昴の番外編でした。前作の登場人物を下敷きにして、光緒帝の側室の珍妃は誰に殺されたのか、という謎解きをしていきます。 7人の登場人物がそれぞれ犯人が誰かという証言をするのですが、それぞれの話す内容はことごとく異なっているのでした。
蒼穹の昴とはタッチが全く異なりますが、前作が気に入った人は読んでみるといいかもしれません。


2005年6月19日

酒井順子の29歳(ニジュク)と30歳(サンジュウ)のあいだにはを読みました。
いつものサカイ節です。 女性が27歳から31歳になるときにそれぞれの1年をどのような想いを持って生きているのか、という解説本でした。 この本に書かれたような内容が熟成されて負け犬の遠吠えにつながるんでしょうね。


2005年6月10日

北村薫の盤上の敵を読みました。
北村薫らしくない、悪意・残虐性をテーマにしたミステリーでした。
読後感としては、残虐性の描写が中途半端かな、と感じました。 謎解きもちょっと唐突な感じがするし、いまいちでした。


2005年6月8日

しげの秀一の頭文字〈イニシャル〉D 31を読みました。
気に入っている峠の走り屋のマンガ最新刊です。 この巻では高橋啓介と星野好造がバトルを繰り広げます。 今回のバトルの最後の競り合いの描写では涼介の解説などが入らないので、手に汗握るバトルになっています。


2005年6月7日

恩田陸の蒲公英草紙 常野物語を読みました。
光の帝国 常野物語が気に入ったので、続編として出たばかりの単行本ですが買って読んでみました。
静謐な時間が流れていた古きよき時代の物語でした。 主人公の少女と遠目の能力を持つ少女の友情や、他人の記憶をしまうことのできる家族との交流が静かな文体で綴られていきます。
エンディングがちょっと物寂しい感じですが、それも昔のよき時代を際立たせています。


2005年6月4日

恩田陸の光の帝国 常野物語を読みました。
常野(とこの)と呼ばれる超能力を持った一族を描いた連作短編集でした。 面白く読みました。
表題にもなっている光の帝国は感動的だし、オセロ・ゲームや草取りの不気味さもいい感じです。 この一族の物語をもっと読んでみたいな、と思わせる小説でした。
ちなみに、恩田陸は宮城県出身とのことで、konnokが住んでいる近くの地名も出てくるので親近感がわいてきます。


2005年6月1日

橋本治の青空人生相談所を読みました。
橋本治が人生相談に対して回答しています。 回答が相談の内容や文章に対して的確に面白く書かれています。 雑誌のコーナーで書かれていたようで、連載していたのは20年位前のようです。
橋本治の論説というのは論理が幾通りもの筋道で書かれているので読むのに疲れてしまうのですが、人生相談だと一つの筋道で回答が作成されているので読みやすいと感じました。
いろいろな相談があるので人生に疲れたら読んでみるのもいいかもしれません。


2005年5月26日

天藤真の大誘拐を読みました。
以前、映画化されたものは観た記憶があったので、買って読んでみました。
小説は掛け値なしに面白かった。 登場人物のキャラクタが立っていて好感が持てるし、物語の語り口もいい。 謎解きも最後のどんでん返しにも驚かされます。 何といっても柳川とし子刀自の魅力で読ませる小説でした。


2005年5月20日

酒井順子の自意識過剰!を読みました。
サカイ流のいつものエッセイでした。 今回のテーマは自意識過剰です。
日本人(特に女性)は他の人からの視線を気にしながら生活している、ということを説明した本でした。 エッセイの内容はそこそこ面白く読みました。


2005年5月17日

恩田陸のライオンハートを読みました。
いくつかの絵画をモチーフにしたミステリーでした。 恩田陸のミステリーはエピソードの関連のわかりにくいものが多いですが、この物語も同様でした。 物語がいくつかの場所に分散しているため、散漫な物語になってしまったという印象です。


2005年5月10日

内田春菊のもんもんシティーを読みました。
15年前の時代の風俗やキャッチセールスなどの取材エッセイでした。 いまいちでした。


2005年5月10日

東野圭吾の変身を読みました。
脳移植された青年が、移植された脳の影響を受けて性格が変わっていってしまうという怖い物語でした。 自分の性格が変わっていく状態というのは自分ではなかなかわかりにくく、他人のリアクションによって自覚させられるのですが、そのテーマでは古典とも言えるアルジャーノンに花束をと比べるとちょっと説明的な文章が多かったかな、と感じました。
私が運良く病気にも事故にもあわず老年になることができたら、自分の性格が衰えていくことを自分で判断できるだろうか、と変なことを考えさせられました。 願わくは楢山節考のおばあさんのように他人の世話になる前に自分で判断できるといいのですが。


2005年5月7日

恩田陸のドミノを読みました。
登場人物が27人と1匹いて、それぞれが切羽詰った状態になっています。 彼らが雷雨の中の東京駅で絡み合いながらパニックに陥っていくという物語でした。
ところどころにツボを押さえた笑いがちりばめられています。 軽い読み物としては楽しめます。


2005年5月4日

奈須きのこの空の境界を読みました。
コミックマーケットで人気が出て単行本になったという小説でした。 他の本の合間に読んでいたのですが、やっと読み終わりました。
書いてある内容は過激なのですが、現実感が希薄で物語がすっと頭に入ってこない小説でした。 主人公がだれかを明示しないで書き始められる文章のスタイルにも問題があるのかもしれませんが。


2005年4月27日

浅倉卓弥の四日間の奇蹟を読みました。
指を失ってしまったピアニストと障害を持った少女、そして家族を失ってしまった女性が織りなす感動的な小説でした。 物語の語り口もよく、伏線がきいていて、スムーズに物語に入っていくことができます。 ヒロインの想いがいとおしくなってくる物語でした。
読み終えてから、つい、もう一度読み直してしまいました。


2005年4月14日

アーシュラ・K.ル=グウィンの空を駆けるジェーンを読みました。
空飛び猫シリーズの4作目です。
今回は前向きな性格のジェーンが街に出ていろいろなことに遭遇するというお話です。 物語としても面白いですが、村上春樹の訳注も面白いです。


2005年4月13日

倉橋由美子のよもつひらさか往還を読みました。
倉橋由美子らしい幽玄と夢幻の世界の物語でした。 エロティックな味付けもあり、能・狂言や短歌の世界からのイメージの引用あり、というきらびやかな物語でした。
倉橋由美子も結構な年齢になっているはずですが、このような小説が発表できるのはすごいなあ、と思ってしまいます。


2005年4月1日

恩田陸の夜のピクニックを読みました。
高校生の主人公たちの気持ちが伝わってくる素晴らしい物語でした。 それぞれ意識しているけど融和できない異母兄弟である二人の主人公が、歩行祭という名の高校最後の昼夜歩きとおすというイベントの中で互いに認め合う、という物語でした。 登場する友人たちや友人の弟も魅力的で、久しぶりに物語を堪能しました。
昨年末にラジオ番組アヴァンティで紹介されていたので読んでみましたが、納得しました。 早速おすすめの本にのせてしまおう。


2005年3月28日

東野圭吾の宿命を読みました。
ミステリというのはあらかじめ隠された謎を主人公やその他の人たちが解明していくものですが、この小説ではその謎が縦横に織られています。
物語は縦糸を中心に語られていき、通常のミステリと同じように謎が解明されていくのですが、それにあわせて隠された横糸の模様も浮かび上がってきます。 最初のプロローグから最後のエンディングまでつながる横糸が用意されているのでした。
東野圭吾の小説はやっぱり長編がいいなあ、と思わせる1冊でした。


2005年3月23日

東野圭吾の嘘をもう一つだけを読みました。
ミステリの短編集でした。 ひとりの刑事が出てきてそれぞれ特徴のある事件を解決します。
東野圭吾らしい謎解きの部分もあるのですが、今回はちょっとハズレかな、という感想です。


2005年3月22日

東野圭吾の天使の耳を読みました。
交通事故を題材にした短編集でした。
事故に出会った人の気持ちとその行動が描かれています。 交通事故や交通違反について法律で裁けるものとそうでないもの、という問題提起が隠れています。 東野圭吾らしいちょっとひねった味付けもあって楽しめます。


2005年3月20日

山崎峰水/漫画、大塚英志/原作の黒鷺死体宅配便を読みました。
マンガですが長女が持っていたので読んでみました。
死者の声を聞き、その望みに従って死体を宅配するというグロテスクな物語ですが、コメディタッチなのと一部ほっとするような部分もあるので読後感はそれほど悪くありません。


2005年3月18日

夢枕獏の陰陽師 竜笛ノ巻を読みました。
ご存知、陰陽師のシリーズの文庫最新刊です。 平安時代を舞台にした安倍晴明と源博雅が主人公の怪異譚です。
今回の短編の中では虫めづる姫のエピソードが一番面白く感じました。 気持ちの悪い真っ黒い芋虫が育つ様子と、それがさなぎから孵化する様子の描写は綺麗な絵画のようでした。


2005年3月17日

岩井志麻子の夜啼きの森を読みました。
昭和初期の岡山で起きた凄惨な事件を題材にしたホラー小説でした。 どうしてその犯人が30人もの人を殺すことになったのか。 生い立ちから挫折そして犯行に走ることになった経緯が岩井志麻子らしくどろどろと描かれています。
最近、異常な殺人事件が世間を騒がせますが、昔はそのような事件が全くなかったか、というとそうでもないんだなあ、と考えてしまいました。


2005年3月11日

村山由佳の夜明けまで1マイル Somebody loves you.を読みました。
この人らしい、幼なじみの男の子と女の子の成長の物語でした。 大人になりきれない二人が恋愛や失恋、そして仲間とのぶつかりあいから自分たちの生き方をつかんでいきます。
おかきばっかり食べていると、甘いシュークリームが食べたくなるように、時々村山由佳が読みたくなります。


2005年3月6日

フリーマントルのシャングリラ病原体を読みました。
地球温暖化で北極の氷が解けて太古の類人猿を絶滅させた未知の病原体が広がってしまう、それに対して人類はどのように対処するのか?という物語でした。
ところが、物語の中心は政治的な話題と、主人公たちのロマンスが中心で、病原体と人類がどのように戦ったのか、その社会的な影響はどうだったのか、というような話題はほとんど描かれていませんでした。私としては全く面白く感じませんでした。


2005年3月2日

江國香織の泳ぐのに、安全でも適切でもありませんを読みました。
愛にためらわなかった女性たちを描いた短編集でした。 江國香織らしい、ちょっと常識からは離れた感じの女性たちが描かれていました。 それなりに楽しんで読むことが出来ました。
あとがきで人生は泳ぐのに、安全でも適切でもないわけですが...と書いてありましたが、知人の訃報を聞いたためか、確かに人生はit's not safe or suitable to swimかもしれないなあ、と思ってしまいました。


2005年2月26日

フィリップ・カーターとケン・ラッセルのMENSAから挑戦!天才IQパズルを読みました。
メンサと聞いて、昔ゲームの会に来ていた人が資格を取ったとか言っていたなあ、と思って買ってしまいました。 この種の問題が解けるためには頭の柔らかさも必要ですが、その種の問題に慣れている必要もあります。私は3分の1くらいしか解けません。
確かに問題は難しいのですが、どうも日本語訳が悪くて問題の内容が伝わらないものもあるようで、その点が残念でした。


2005年2月25日

湯本香樹実のポプラの秋を読みました。
夏の庭を書いた人の作品でした。 夏の庭は男の子とおじいさんの物語でしたが、今度は女の子とおばあさんの物語でした。
お父さんの死に遭遇して神経症的な痛みを覚えている少女が、たまたま引っ越したアパートの大家のおばあさんと出会ってショックを克服していく物語でした。 物語ではこの少女は大人になっているのですが、おばあさんが亡くなった知らせを受けて昔の事を暖かく思い出します。
この人の描くおじいさんやおばあさんは、ちょっと一癖も二癖もある人たちばかりなので、読んでいて楽しくなります。


2005年2月23日

泉麻人のオフィス街の達人を読みました。
10年以上前に書かれた、オフィス街でちょっと変わった仕事をしている人を取材したエッセイでした。 まだ日本の未来が明るかった時代のオフィスで特殊な仕事をしている人たちのいろいろな苦労話が面白く書かれています。


2005年2月20日

北原保雄編の問題な日本語を読みました。
どこがおかしい?何がおかしい?という副題がついていました。 国語辞典を編纂した人が問題だと感じる新しい日本語を解説しています。
変にセンセーショナルに取り扱わず、冷静に解説しているのがいい感じです。 私のへんな日本語に載せている言葉がほとんど収録されているので、つい本屋でみて衝動買いしてしまいました。
ふいんきの解説では、例えば新しい(あたらしい)という言葉も新た(あらた)から変化した言葉だからこのようなことはまれにはあることだ、というようなことが書いてあって納得してしまいました。


2005年2月19日

東野圭吾の悪意を読みました。
面白かった。これぞ、ミステリの真髄ですね。
記録の中に隠された真の意図とは。 記録とは必ずしも正しいことだけが書いてあるとは限らない、ということを前提としているのですが、やはり騙されてしまいます。 そして、最後に真相が明かされます。 読み終えた後にじんわりと怖くなってくるという小説でした。
新しい場所に引っ越して、そこでいじめにあったことが原因で人生が狂ってしまったという設定は他人事とは思えません。


2005年2月18日

恩田陸のPuzzleを読みました。
私はもう、恩田陸の謎解きの面白さには期待していないのですが、つい買ってしまうのが人間の弱さですね。 今回も、魅力的な舞台に魅力的なキャラクターが謎解きをします。 Piece、Play、Pictureとジグソーパズルをもじって設定も十分だし、謎も面白いのですが、やっぱり謎解きがイマイチでした。
ただ、映画2001年宇宙の旅が題材として載っていたのでちょっとうれしかったですね。


2005年2月17日

東野圭吾のおれは非情勤を読みました。
東野圭吾の小説にしては、あっさりした謎解きだなあ、と思いながら読みましたが、解説を見たらジュブナイルとして書かれたとのことで納得しました。
主人公の非常勤講師が、配属された小学校で事件を解決するという物語でしたが、それなりに楽しめました。


2005年2月14日

養老孟司と長谷川真理子の男の見方 女の見方を読みました。
男と女の違いをセックス(動物的)とジェンダー(社会的)の面から分析してリレーエッセイとして書かれたものでした。
それぞれの主張が短くて互いのつながりが薄いので、ちょっと物足りなく感じました。 やはり、男と女というような深いテーマは、論点を絞り込んで主張を展開する構成になっているほうが読みやすいと思います。


2005年2月10日

正高信男の父親力を読みました。
ケータイを持ったサルや老いはこうしてつくられるを書いた人の、現在の日本の父性の不在に対する警告書です。
父親が家庭の中で子供たちに伝えなければならないことと、それが出来なくなっている現実、そして母子密着型育児の弊害が主張されていました。 子供は家庭から社会に飛び出していくときにストレスを感じることが多いのだけれど、それを克服するためには小さいときからある程度のストレスにさらしておく必要がある。 現在の家庭環境は父性が与えるべき、そのようなストレスを体験させることができない、という主張でした。
父親が子育てに参加していても、母親と同じ対応方法しかとらないのでは、母親が二人いるのと同じだ、という主張は納得してしまいます。 私自身の課題としても、長女の育ち方や長男のこれからの育て方に考えなければならない点が多く、納得できる内容でした。


2005年2月10日

東野圭吾の同級生を読みました。
東野圭吾の学園を舞台にしたミステリ小説です。 放課後の後に書かれたという事で、謎解きもそれほど無理がなく、ストーリーも面白く読みました。 まあ、同級生に関する伏線は全然気づかなかったので、途中で種明かしがあったときはちょっと驚きました。
解説に書いてあるショートショート的な文章は本が好きな人にはそうだそうだ、と思える内容でした。


2005年2月8日

大沢在昌の新宿鮫を読みました。
古きよき時代のハードボイルド小説でした。 長編刑事小説と銘打っているのがまたいい感じです。 新宿署の警部でありながら、組織からはみ出している鮫島の活躍を描いた小説でした。 脇役も桃井、藪、晶と魅力的なキャラクターが勢ぞろいです。
大沢在昌は初めて読みましたが、面白かった。 このシリーズはもう少し読んでみようかな。


2005年2月3日

東野圭吾のむかし僕が死んだ家を読みました。
発端は昔付き合っていた女の子からの電話で、主人公はその女の子と山奥にある洋館に行ってその洋館を調べてみるのですが...
伏線もしっかりしているし、謎解きも面白い。 だんだんと明らかになっていく、その女の子の秘密。 怖い物語でした。
ミステリーはこれじゃなくちゃいけませんね。 久しぶりにミステリーを堪能しました。


2005年1月28日

東野圭吾の放課後を読みました。
ミステリーとしてはしっかりしているし、女子高校の教諭という設定も面白かった。 語り口もまあまあで、登場人物も魅力的でした。
一つ気に入らないのは、動機がいまいちピンと来なかったことでした。 物語の中に動機に関する伏線がもう少し描かれていたら納得性が出たのになあ、と感じました。


2005年1月20日

湯本香樹実の夏の庭 The friendsを読みました。
いろいろな悩みを抱えている小学生の友達3人がひとりのおじいさんと知り合って成長していく物語でした。
主人公たちがおじいさんとかかわることになる発端から、主人公たちと交流するようになってからのおじいさんの変貌、そしておじいさんとの別れまでの物語が、季節の移り変わりとともに情感豊かに語られていきます。
映画化されたということなので、レンタルショップで借りてきて観てみようかな、と思ってしまいました。


2005年1月20日

樋口裕一の頭がいい人、悪い人の話し方を読みました。
テレビで売れ行きのいい本として紹介されていたので、買ってみました。 このような話し方をすると愚かだと評価されますよ、という例がたくさん紹介されています。 内容はごく一般的なハウツーもので特に目新しいものはありませんでした。
私は自分の頭の悪さ加減を隠さずに日頃過ごしているので、あまり興味がわきませんでした。 基本的には人からどう見られたって良いじゃないですか、という考えなので。


2005年1月19日

桐野夏生の柔らかな頬を読みました。
主人公の女性が不倫をしている最中に子供がいなくなってしまう、その女性は子供を捜し続けるのだが...という物語でした。 桐野夏生らしく、主人公や他の登場人物の設定はそれぞれ一癖も二癖もある設定になっていて楽しめました。
本来ミステリーというのは、最後に謎の種明かしをして、その結果が良くても悪くても読者にカタルシスを与えるものですが、この作品はあえて種明かしを避けています。 在り得べき結末は登場人物の夢という形で複数提示されており、そのどれもが妥当な結末と言えるものでした。 不確定性理論のような小説でした。
そしてエンディングでは...


2005年1月14日

恩田陸のMAZEを読みました。
アジアの西の端の地域に「人の存在しない場所」と呼ばれる建造物がある。 それは細い切り通しの先の誰も入ってこれない盆地の中央にあり、直方体の形をしている。 そこには人ひとりだけが通れる入り口が一つだけあり、中は迷路になっている。 この迷路に入った人は消えてしまうという伝説がある。

これだけ魅力的な舞台を設定しておきながら、うーん、恩田さん。 いつものとおり種明かしがはっきりしません。 なぜ人が消えてしまうのか、その建造物は誰がどのような目的で作ったのか、もしくはその建造物はどのような目的で存在しているのか、その辺がはっきりしません。
その建造物が人知を超えた存在であるなら、例えばスタニスワフ・レムの小説のように、その存在の特異性とそれに挑戦する人間たちの苦悩が描き分けられているべきですが、そうなっているわけでもない。 やっぱり、読んだあとには欲求不満がたまってしまうのでした。


2005年1月12日

星新一のブランコのむこうでを読みました。
主人公の小学生が自分のドッペルゲンガーを追いかけていくうちに夢の世界に迷い込んでしまうというジュブナイルでした。
他人の見ている夢を次々に渡り歩いていくという設定になっていて一つひとつの夢は短いので、ショートショートの鬼才の物語を楽しむことが出来ました。
星新一は若い頃にはよく読んだ作家ですが、ショートショートというのはちょっと軽めの文学なので、おすすめの本に収録するのはちょっと考えてしまいます。


2005年1月10日

アラン・グリンのブレイン・ドラッグを読みました。
ラジオ番組アヴァンティで紹介されていたので読んでみました。 ラジオでの紹介からアルジャーノンに花束をのような雰囲気の小説かなあ、という先入観を持ったのですが、ちょっと違っていました。
主人公はひょんなことから頭の良くなる薬(500錠だけなんだけど)を手に入れます。 そして、頭の良くなった主人公の行動は以前と比べてどう変わるだろうか、という物語です。 この物語では、その薬を副作用のあるドラッグ(麻薬)的なものとして扱っています。

この物語を通じて作者の感覚と私の感覚と違うなあと思ったのは、私がそのような薬を手に入れたら、まずは安全に一生生活できるだけの資産を確保してあとはリスクを冒さず守りに入るような気がするのですが、作者はリスクをものともせずに最大限の成功を収めるために行動していくということでした。 リスクをものともしないチャレンジ精神が結果的には身の破滅を引き起こすので、物語としてはそちらのほうが面白いでしょうけど。


2005年1月7日

恩田陸の六番目の小夜子を読みました。
主人公たちが通う高校に伝わる伝説が引き金となっていろいろな恐ろしい事件が起きていきます。 高校生時代特有のにおいがする物語に引き込まれてしまいます。
物語自体は面白く展開し、主人公たちも魅力的なのですが、やはり途中でおきた事件の種明かしが不十分なので、欲求不満がつのりました。 ミステリーでは、例え超常現象により何かが起こったのだとしても、やはり起こった事象について合理的な説明がほしいですね。


2005年1月5日

あさのあつこのバッテリー 3を読みました。
自分のピッチャーとしての才能に傲慢なまでの自信を抱いている巧と、そのボールを受けることに深い満足を感じる豪の中学生二人を主人公とする野球の物語の3巻目です。 今巻では、先輩たちが起こした事件のために活動停止になっていた野球部が活動を再開します。 すんなりとは活動再開はできないのですが、主人公たちの活躍、そしてそれを見守る先生たちの支援により野球部の活動が開始されました。
文庫版で書き下ろされたという、青波の目から見た巧のイメージの短編もいい感じです。


2005年1月1日

筒井康隆のわたしのグランパの映画化作品を観ました。 長男にPS2を占有されていたので、昨年末に妹に頼んでBSからビデオに撮っておいてもらったものを観ました。
小説は2年半前に読んでいたのですが、ほとんど違和感はなく忠実に映画化されていました。 小説と同じように映画もあっさりとした作品でした。




2004年に読んだ本の感想