辻村深月のロードムービーを読みました。
子供の頃に経験したことをおとなになってから思い出すと、また違った気持ちで思い出すことができる、という短編集でした。
表題作のロードムービーは子供の頃の冒険の物語でした。
しっかりもののトシちゃんと気弱なワタルは教室でのいじめやワタルの家庭の事情から二人で家出することを決意します。
地方の町から東京に出て、転がり込もうとした家に到着しますが...
4編の物語はそれぞれ温かい物語で面白く読みました。
解説で辻村深月の物語たちでは登場人物が重なっていると書いてあったので、もう一度順番通り読み直してもいいかな、と思ってしまいます。
東野圭吾のクスノキの番人を読みました。
玲斗は不遇な生い立ちの青年です。
勤めていた会社から不当な解雇を言い渡され、その仕返しに会社に忍び込んだのですが、警察に捕まってしまいました。
そんな玲斗に見知らぬ弁護士が現れて被害者と示談が成立し、その後現れた千舟という初老の女性からクスノキの番人をするように言い渡されます。
千舟からクスノキの番人の仕事を教えてもらい、だんだん玲斗も人間として成長していきます。
辻村深月のクローバーナイトを読みました。
裕と志保の夫婦そして四歳の莉枝未、二歳の琉大の四人家族の物語でした。
裕は小さな公認会計事務所に勤務、志保は子供用の肌着メーカーを立ち上げて三年目、忙しいながらも二人で子育てを続けています。
そんな二人が見聞きする保育園や幼稚園でのママ友トラブルがミステリー仕立てで語られていきます。
そして最後の短編では志保とその母親の葛藤が描かれています。
子育てもいろいろ大変だなあ、と思ったのでした。
読後感としては、裕と志保が魅力的な夫婦として描かれていてこころが暖かくなります。
貴志祐介の罪人の選択を読みました。
発表時期の異なる4つの短編が収録されています。
SFが3編、ミステリが1編でした。
デビュー前に書かれたという夜の記憶は2つの物語が並行して語られるSFで、全く関連がないような2つの物語が最後につながります。
呪文と赤い雨もディストピアな未来に一筋の希望を描くSFでした。
貴志祐介というとミステリ作家のイメージがあるけど、確かにSF的な構成を持つホラー小説も多いよなあ、と思ったのでした。
辻村深月の嚙みあわない会話と、ある過去についてを読みました。
一言でいうと怖い物語でした。
幽霊も殺人者も出てきませんが、背筋がぞっとする短編が4編収録されています。
過去、自分のほうが優位な立場にいて見下していた人が成功して立場が逆転します。
そしてその人から過去に自分がうけたいじめの仕打ちを糾弾され逆襲されます。
しかし、登場人物にはそのような自覚はなくただうろたえるばかりです。
辻村深月はこんな怖い物語も書けるんだなあ、と思ったのでした。
宮部みゆきの魂手形を読みました。
三島屋変調百物語七之続でした。
そうかこのシリーズももう7冊目なんですね。
今回は3つの物語が語られます。
それぞれ怖く面白い物語でしたが、konnokは火焔太鼓の物語が気に入りました。
山間の城にある火消しの太鼓の物語でした。
火消しの太鼓は実は火山に棲む火の神様の妖力で作られていたのでした。
この太鼓を盗もうとした盗賊と城の衛士たちの間で戦いが起こり、語り手の兄は深手を負ってしまいます。
兄は嫂の実家に身を寄せます。そして...
富次郎が物語を聞いて書いた絵が心に残りました。
宮部みゆきのこの世の春を読みました。
江戸時代の北見藩の若い藩主北見重興は複数の人格が交互に現れる心の病にかかっていました。
江戸城で他の人格が現れたら北見藩は命運が尽きるということで、家臣たちは重興を押込めて北見一門から別の藩主を出すこととします。
重興は藩内でも美しい場所五香苑に座敷牢をつくりそこに逗留することとなりました。
各務多紀は婚家の姑からのいじめに耐えかねて実家に帰ってきて作事方の父親の手伝いをしていました。
ある理由により多紀は五香苑に呼ばれ、重興の治療に協力することとなります。
多紀、藩医の白田、多紀の従兄弟の半十郎、元家老の石野、そして五香苑の使用人たちは協力して重興の心の病の原因を探っていきます。
辻村深月の家族シアターを読みました。
姉と妹、祖父と孫娘など家族の関わりを題材にした短編集でした。
血の繋がりはあるのになぜか反発してしまう家族が最後にはわかりあえるというストーリーでした。
家族それぞれで考えは違うので反発してしまうことも多いけど、でもやはり身近に一緒に暮らしている家族だからこそわかりあえるという主張はあたたかく読みました。
梨木香歩の椿宿の辺りにを読みました。
主人公の佐田山幸彦(通称山彦)は化粧品を開発する会社の会社員です。
最近、原因不明の痛みに悩まされています。
彼の従姉妹の海幸比子(通称海子)もまた原因不明の痛みに悩まされています。
海子が通っている仮縫鍼灸院の治療師の亀シの提案で山彦は彼らの祖父の実家のある椿宿に行ってみることになります。
なぜ彼らはそのような神話に関連するような名前をつけられることになったのか、祖父の実家の椿宿はどのような場所なのか。
祖父の実家に長年住んでいた竜子さん、その実家を歴史的な建造物として保存しようとしている珠子さん、竜子さんの長男の宙幸彦さんなどとの交流により、椿宿にあった神話的なわだかまりが解消されていきます。
その結果、山彦、海子の痛みも治癒するのでした。
辻村深月のサクラ咲くを読みました。
中学生や高校生たちの青春物語3編が収録されています。
表題作のサクラ咲くは本好きの少女、塚原マチが主人公です。
図書館で本を借りて読んでいたマチは本の中にサクラチルと書かれたしおりが挟まれていることに気づきます。
これをきっかけに見えない相手とのしおり交換日記が始まってしまいます。
一体相手はどんな人なのか、クラスの中の日常の描写とともに物語が語られます。
周りを気にしてなかなか思うように行動できないマチが少しずつ成長していくのでした。
辻村深月の傲慢と善良を読みました。
ジェイン・オースティンの高慢と偏見をもじった題名のとおり、結婚をテーマにした小説でした。
主人公の架と真実は婚活の後に婚約をして結婚式場を予約している仲ですが、ある日ストーカーに追われているという電話連絡を架にした後、真実は失踪してしまいます。
ストーカーにさらわれてしまったのか、それとも他になにか理由があるのか、架は真実を探すために奔走します。
架が真実の両親や姉、以前のお見合い相手と会っていくなかで、自分の傲慢さや真実の善良さについて考えさせられていきます。
例えば、お見合い相手が結婚相手として「ピンと来ない」というのはどういうことなのか、というようなことが掘り下げられていきます。
辻村深月の人物描写は的確で詳細でそこがこの物語を深みのあるものにしていると思いました。
住野よるの麦本三歩の好きなもの 第二集を読みました。
麦本三歩の好きなもの 第一集の続編でした。
ちょっと変わった20代女子、麦本三歩の日常を描いた短編集でした。
勤務している図書館では先輩たちに叱られてばかり、他人と会話するときは自分の言葉で引かれてしまうんじゃないかと心配する、そんなヘタレな女の子。
今作では三歩の二卵性双生児の弟くんが登場するけど、三歩とは正反対でしっかりもの。
三歩が二人いたら世の中大変なんじゃないかという周りの心配は杞憂でした。
怖い先輩の結婚披露宴とその二次会で先輩たちや後輩と楽しくて飲みすぎてしまった三歩。
翌朝三歩が二日酔いで苦しむ様子が、まるでそこで見てきたように描写されています。
ちょっと困った子ちゃんなんだけど、愛おしい三歩の物語を楽しみました。
宮部みゆきのさよならの儀式を読みました。
宮部みゆきのSF短編集でした。
8編の短編が収録されていますが、最初の6編はあまりピンときませんでした。
海神の裔と保安官の明日は面白く読みましたが。
宮部みゆきはSF短編は不得意なんだろうか、と思ったのでした。
今年も、面白そうな本を探して読んでいきたいと思います。
そしてなるべく本を選ぶときに参考になるようなコメントを記録していきたいと思います。
昨年・一昨年は読書量が激減してしまいました。
意識的に本を読む時間を確保しないとこの傾向は続いてしまうと思うので、何か対策を考えたいところです。
どうぞよろしくお願いいたします。