2009年に読んだ本の感想
2009年12月24日
岡嶋二人のクリスマス・イヴを読みました。
古本屋で見かけて、岡嶋二人の未読の小説だったので読んでみました。
14年前の小説で、山奥の山荘でクリスマス・イヴをすごそうとした恋人たちが殺人鬼に襲われるというサイコ・スリラーでした。
14年前は携帯電話がないので、山奥の山荘で電話線が切られてしまうと連絡手段が無く、殺人鬼に襲われると逃げ惑うしかないのでした。
まあ、私が岡嶋二人の小説を読むのは謎解きが楽しいミステリーが読みたいからなので、ひねりも何もないサイコ・スリラーはちょっと期待はずれでした。
ここのところ読んだ本は4冊続けてハズレの小説でした。
面白そうな本を選んで読むようにしたいところです。
2009年12月20日
栗本薫のシンデレラ症候群を読みました。
古本屋で見かけて、そう言えば栗本薫も亡くなったんだなあ、と懐かしくなり読んでみました。
20年前の小説で、マザコンのイケメンの男性が主人公のミステリーでした。
今読んでみると、登場人物たちの考え方が古くさく感じられてしまい、当時の世間の人たちの常識と現在の常識に大きなずれがあることに気づかされます。
日本人の考え方が変わったのは、良い方向なのか、悪い方向なのか、どちらなんだろう、とちょっと考えてしまいました。
2009年12月14日
奥田英朗のララピポを読みました。
ダメな若者たちを描いた短編集でした。
ララピポとは6編目のヒロインが渋谷の街で聞いた「a lot of people」のことで、たくさんの人たち、という意味が込められています。
奥田英朗と石田衣良が描く若者たちはほぼ同じ世代だと思いますが、描き方は正反対です。
石田衣良は、ダメな若者たちを温かく見守っていきますが、奥田英朗はドライに突き放してしまいます。
今回も6人のダメな人たちがそれぞれの短編で描かれていますが、それぞれの短編の最後には悲惨な結末が待っているのでした。
結局、一番不幸そうに見えたヒロインが最後に幸せそうに描かれているのが面白いと思いました。
性的な描写が鼻につきますが、他人の不幸は蜜の味という意味では、面白く読める物語でした。
2009年12月12日
恩田陸の中庭の出来事を読みました。
劇中劇の形式を取っている物語でした。
戯曲の中で演じている女優たちの台詞で謎解きが行われるというミステリーでした。
konnokは小説を物語として実際に起きたことを描いたものとして読んでいます。
誰かが演じることを前提とした戯曲はほとんど読みませんし、あまり面白いとも感じません。
なので、この小説についても、ちょっと辛口の評価になってしまいます。
2009年12月4日
三崎亜記の失われた町を読みました。
30年に一度、町に住んでいる人が全て消えてしまう、「消滅」という不可解な現象がおきる。
家族、恋人、親友、などの大切な人を「消滅」により失ってしまった人たち。
その人たちは、悲しむことによって「消滅」の汚染を広げてしまうため、悲しみを表現することも出来ない。
そして、この「消滅」に立ち向かい、次の「消滅」を防止しようとする人たちの活動が淡々と描かれています。
登場人物たちは感情を抑えたタッチで描かれていますが、それがかえって登場人物たちの悲しみを浮き出させているのでした。
この本はすでに文庫が出ていますが、私は古本屋で単行本を買いました。
町の絵にビニールのカバーが掛けてあって、ビニールには人間が印刷されています。カバーを外すと町が失われてしまうわけです。
この装丁もとても気に入りました。
物語の雰囲気が、なぜか村上春樹の小説の中で一番好きな「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」を連想させました。
何度も読んでみないと分かりませんが、この物語も私のお気に入りの1冊になる予感がします。
2009年11月30日
石田衣良の美丘を読みました。
美丘という女の子と「ぼく」の短く激しい恋を描いた恋愛小説でした。
表紙がちょっとエキセントリックなので、買うのをためらっていたのですが、古本屋にあったのでつい買ってしまいました。
物語は直情的で今この時が全て、という性格の美丘に惹かれていく主人公のモノローグという形で語られていきます。
美丘は小さい頃に事故にあって手術をしたことがもとで、ヤコブ病という発病したら数ヶ月で死んでしまうという死の病に感染していたのでした。
あらすじを言ってしまうとお涙頂戴のストーリーなのですが、美丘という女の子や、仲間の女の子たちが生き生きと描かれているので、魅力的な物語になっています。
自分の命がすぐに尽きてしまうという苦しみを抱えた美丘がいとおしく思える物語でした。
2009年11月21日
万城目学の鹿男あをによしを読みました。
ひょんなことから関西圏の女子校の教師に赴任することになってしまった主人公が、卑弥呼の時代からの縁によって神様から「運び番」を命じられてしまう、という物語でした。
主人公は「運び番」の使命を果たそうとするのですが、何を渡されるのか、渡してくれるのは誰なのか、ということが明かされないまま物語は進んでいきます。
そして、主人公は神様の呪いにより鹿男になってしまうのでした。
日本の歴史や干支の謂われなどをもとにした荒唐無稽なファンタジーでしたが、主人公や「使い番」に命じられてしまった女子高生やその他の登場人物がいきいきと描かれていて、面白い物語になっています。
二十数年前に奈良の西大寺に住んでいた友人を訪ねたときも、その友人が古跡を紹介してくれたのを思い出しました。
とは言え、何を紹介してもらったのかはすっかり忘れてしまいましたが。
2009年11月13日
上橋菜穂子とチーム北海道のバルサの食卓を読みました。
上橋菜穂子の小説に出てくる料理を本当に作ってしまおうという本でした。
私は料理は出来ないので、レシピを読んでもどんなものができるのか、作りやすいのか難しいのかなどは全然分かりませんが、上橋菜穂子のエッセイを読んでいるとおいしそうな気がしてくるのが不思議です。
この人の小説はファンタジーとは言え、実体験に裏打ちされた設定になっているので、料理についても具体的なイメージがあるのでしょう。
そう言えば、精霊の守り人のアニメのオフィシャルページに今週の飯というコラムがあったのを思い出しました。
ここにはアニメに出てきたいろいろな料理のスクリーンショットが掲載されていたのでした。
2009年11月10日
外山滋比古の思考の整理学を読みました。
ものを考えるということはどのような活動なのか、より効果的に思考するにはどうすればいいのか、を論じた本でした。
いろいろな例えで思考というものはどういうものなのかを考察しています。
最近は、自分で考える飛行機タイプではなく、誰かに導いてもらわないと考えることが出来ないグライダータイプの学生が多くなった。
最近は、教師が子供のわかりやすいように教えることが常識になってしまったが、考える力を養うには漢語の素読のように、自分で考えないと理解できないようなやり方が必要なのではないか。
あるテーマについてじっくり考えたあとは、別のことを考えて、自分の中に寝かせておくと良い具合に発酵していい思いつきにつながる。
別の専門の人たちがブレインストーミング的に意見交換を行うと、すばらしいアイデアをひらめくことがある。同じ専門の中だけで情報交換をしているのでは、近親交配と同じで新しいことを考える力が衰えてくる。
などなど、面白い話題で思考というものを考察しています。
この人の他の本も読んでみようかな、と思いました。
2009年11月2日
上橋菜穂子の獣の奏者を読みました。
王獣と心を通わせることが出来るようになってしまった少女エリンが主人公のファンタジー小説でした。
戦争で役に立つ王獣を扱うことができるエリンは政治的な陰謀に巻き込まれてしまうのでした。
物語に勢いがあるので、あっという間に読み進んでしまいます。
上橋菜穂子の描く女性は芯がしっかりしていて魅力的なので、つい引き込まれてしまいます。
猛獣である、王獣や闘蛇が現実味を帯びて描かれているのも物語としての完成度を高めています。
エンディングがどうなったのか、はっきりしない形で終わってしまうのですが、続編が書かれているということなので、文庫になるのを気長に待つことにしましょう。
2009年10月26日
あさのあつこのぼくらの心霊スポットを読みました。
小学生を対象としたジュブナイルでした。
小学6年生の3人の男の子が心霊スポットに肝試しをしに行ったことから事件に巻き込まれてしまいます。
心霊現象のように見えたものが実は犯罪につながっている、でもちょっと心霊現象もからんでいる、という物語でした。
岡山が舞台の物語なので、怖いということを「きょうてい」というので、同じ岡山県の作家、岩井志麻子を連想してしまいます。
2009年10月23日
上橋菜穂子の神の守り人を読みました。
短槍使いの女用心棒バルサが主人公のシリーズ五巻目でした。
今回はタンダに誘われて出かけた薬草の市で、バルサが人買いに捕まった兄妹を助けたところから物語が始まります。
その妹には残酷な神が憑いていて、神の力を自由に操って生きているものをたちまち殺してしまうことが出来るのでした。
あまりにも大きな力を持ってしまったあどけない少女の苦悩が描かれています。
テーマが暗いので、物語を読み終えてもこころの中にわだかまりが残りますが、面白く読めたことは間違いありません。
この物語でバルサも三十路を越えたとのことなので、これからシリーズがどのように展開していくのか楽しみです。
2009年10月16日
北村薫の玻璃の天を読みました。
第二次大戦前夜に生きる上流階級の女学生が主人公のベッキーさんシリーズの二冊目でした。
玻璃の天とはステンドグラスを指していて、ステンドグラスにまつわるエピソードからベッキーさんの過去が明らかになります。
暗いお話なのですが、ヒロインの花村英子が魅力的なので救われます。
空飛ぶ馬のシリーズもそうでしたが、北村薫の描くヒロインは自分に正直で清潔できりっとしていて、頭の回転も速く、男性から見た理想型として描かれています。
三冊目は直木賞を取ってしまったので文庫になるのはもう少し先でしょうが、待ち遠しいですね。
2009年10月10日
広瀬正の鏡の国のアリスを読みなおしました。
小説の形態を取っていますが、鏡像と左利きについてのいろいろな考察が述べられた本でした。
鏡に映った像が、左右が反対になって上下が反対になるのではないのはどうしてなのか、という疑問はよく聞きます。
この小説の解答は、鏡像というのは上下左右はそのままで、前後が逆になるのだ、というもので、確かにそうだなあと思いました。
私たちは小さい頃から鏡像を見慣れているので、ビデオカメラの映像を表示したり90度で交差した鏡を覗いたりして、正しい姿が映されると逆に違和感を感じてしまいます。
昔ソニーのPCに初めてカメラがついたとき、自分を映した映像は左右を逆転して表示しているというのを面白いと感じたことを思い出しました。
2009年10月6日
広瀬正のエロスを読みなおしました。
もし、あのとき、二つの選択肢のうち別の選択肢を選んでいたら、運命はどうなっていたんだろう、という題材のSFでした。
現在、過去、そしてもう一つの過去の3つの時間軸で昭和初期から戦争に至る暗い時代に出会った二人の物語が語られていきます。
最後にちょっとしたどんでん返しがありますが、二人の生活していた二つの世界がいきいきと描かれていています。
題名のエロスというのは、主人公の男性が作曲する曲の名前なのですが、片方の世界では曲が発表される前に主人公は徴兵されて帰らぬ人になってしまうのでした。
いろいろあっても、いま私たちが生きている時代はいい時代なんだなあ、と考えてしまいます。
2009年10月1日
新井素子のぬいは今日も元気ですを読みました。
ぬいぐるみが主人公の20年以上前のエッセイでした。
「ぬい」とはぬいぐるみの略で、わにわにと言う名前のわにのぬいぐるみが新井素子と掛け合いをしながらエッセイを綴っています。
でも、これは、正直言って読み続けるのが苦痛でした。
新井素子の口調は別に嫌いではないのですが、それは主人公が宇宙船に乗っていたり、義賊だったり、新婚でばたばたしたりしているからであって、ぬいぐるみが他のぬいぐるみとの関わり合いについて語るのを延々と聞かされても疲れるだけです。
私が歳を取ったのか、新井素子の趣向がどんどん人間離れしていったのか、どちらなのかよくわかりませんが。
2009年9月28日
森見登美彦の四畳半神話大系を読みました。
四畳半に住んでいる、妄想に明け暮れる大学生のモノローグで語られる、クトルフ神話もかくやと思われるようなおどろおどろしい物語でした。
しかし、それだけで終わらないのがこの小説のすごいところです。
4編の短編で構成されるこの小説は、それぞれがこの主人公の大学入学から2年間の物語です。
主人公は、大学入学直後のサークルの選択さえ誤らなければ、清く正しく美しいキャンパスライフが待っているはずだと思っているのですが、結果的にはどのサークルを選んでも救いのない2年間になってしまうのでした。
4つの並行世界がそれぞれに絡み合って物語として成立しているので、ある世界のなぞが別の世界で説明されていたりして、それはそれで面白いと思いました。
この人の小説では難しい漢字が使われているのですが、親切にルビがふってあるので正しく読めます。
このくらいの漢字は覚えておきたいなあ、と思いました。
2009年9月20日
石田衣良のGボーイズ冬戦争を読みました。
池袋西口公園物語のシリーズの文庫最新刊です。
IWGPシリーズも気がつくと7冊目になるんですね。
いつものとおり、池袋の果物屋のマコトがいろいろなトラブルを解決していくという、ちょっとダークな物語たちでした。
軽い読み物なのであっという間に読めてしまいます。
2009年9月18日
森絵都の風に舞いあがるビニールシートを読みました。
他の人とは違う、自分だけの価値観を守っていこうと苦闘する人たちを描いた短編集でした。
芥川賞受賞作だそうです。
それぞれの短編の主人公たちは、他のものを犠牲にしてでも自分の大切なものを守っていこうとしているのでした。
淡々とそれぞれの生き様が描かれていきます。
それぞれの短編の最後では未来に向けての希望が語られていて、主人公たちへの力強い応援歌にもなっています。
さて、振り返って自分を見たときに、自分の大事な価値観を持っているものはあるのだろうか、自分の大切なものを守るために活動しているだろうか、と考えてしまいました。
2009年9月12日
広瀬正のツィスを読みなおしました。
この本は昔読んで面白いと思った本だったので、文庫が再販されたこともあり、読み直しました。
ある女性から奇妙な音が聞こえるという申告があり、それがだんだんエスカレートして首都圏に大打撃を与えてしまうという物語でした。
物語としては、読みやすく面白く読みました。
SFなので、ちょっと無理な設定があっても仕方がないのですが、読み直してみると現実的にこの設定でこの状況は発生しないだろう、と考えてしまいます。
しかし、インターネットで常時情報過多になりつつある現在では、別の意味でこのような事態が起きる可能性もあるなあ、と振り返って考えてしまいました。
2009年9月5日
森見登美彦の夜は短し歩けよ乙女を読みました。
自意識過剰な大学生の主人公と、彼が一目惚れしてしまった後輩の女性の、ちょっと変わったラブコメディでした。
主人公「先輩」は後輩の乙女との距離をつめようと、彼女が訪れる場所に一緒に出かけていき、心理的な外堀を埋めて行こうとするのですが、運命はなかなか彼の思うとおりにはさせてくれません。
とは言え、ご都合主義の神が物語を展開していくのでした。
後輩の乙女というのが、かわいい性格なのですが、かなり変わった性向を持っていて、彼女の行動だけでも楽しめます。
たとえば大学の1回生なのに夜の盛り場に出かけてお酒の飲み比べをしたり、学園祭で大きな緋鯉のぬいぐるみをもらってそれを背負って行動していたり、お祈りするときは「なむなむ」というのが口癖だったり。
自分に自信のない先輩の主人公が彼女の心理的な外堀を埋めようと画策するのですが、その行動と結果がちぐはぐでそちらも楽しめます。
この人の他の本も読んでみようかな、と思ってしまいました。
2009年9月5日
ジェフリー・アーチャーの誇りと復讐を読みました。
4人の悪人グループの共謀により、友人を殺したという殺人の罪をかぶせられてしまった主人公が、最愛の妻や弁護士、そして刑務所の中で親しくなった友人の協力で、刑務所から出て復讐をするまでの物語でした。
ジェフリー・アーチャーらしい奇想天外な設定と、胃が痛くなるような法廷でのやりとりが描かれています。
主人公を支えていく善意の人たちが暖かく描かれているのが気に入りました。
2009年8月29日
貴志祐介の新世界よりを読みました。
一部の人間が念動力や発火能力のような超能力を使用することができる、ということがわかって、超能力者と通常の人間の血なまぐさい戦いが起きてしまった後1000年後の世界を舞台にしたSFでした。
私は通勤電車で本を読むことが多く、自宅ではほとんど読まないのですが、この本については仙台ブリッジクラブの帰りに電車の中で読み始めたら止まらなくなって、夜1時半までかけて一気に読んでしまいました。
今日のブリッジの出来は日記にも書きたくないほど最悪だったのですが、これはまたべつの話。
風の谷のナウシカで描かれたような廃墟となった世界で、主人公の女性の冒険と成長が描かれています。
冒険の部分はハラハラドキドキしながら読めて止まらなくなってしまいます。
貴志祐介らしい家畜人ヤプーなどを髣髴とさせるグロテスクな描写もたくさん出てきますが、主人公の女性がさわやかに描かれているので、読後感はいい感じです。
最後の種明かしには納得させられて、それで物語の全体がピシッと締まっています。
久しぶりに物語を堪能したなあ、と思いました。
2009年8月27日
村山由佳の楽園のしっぽを読みました。
房総の片田舎での動物たちに囲まれた生活をテーマにした村山由佳のエッセイでした。
大自然の中で暮らしたいという目的で、古い一軒家とその周りの土地を買ってしまうという行動力はさすがです。
動物たちとの付き合い方や農業とのかかわり方について、村山由佳らしい視点での主張が述べられています。
例えば、モンゴルの旅行記では、山羊の肉を腐らせずに持ち歩くにはどうすればいいか、という問題が提示されました。
正解は、生きたまま連れて行き、食べる直前にさばくということでした。
確かにそうなんだけど、肉はスーパーで買うものだと思い込んでいる日本人にはなかなか思いつかない解答ですね。
新井素子とはまた口調が違うけど、話し好きの女性のおしゃべりを聞いているような語り口は同じように快く感じます。
まあ、これだけのめり込んだワイルドな生活に終止符を打った本当の理由が知りたいと思いましたが。
2009年8月25日
ジョン・D・バロウの数学でわかる100のことを読みおえました。
数学で解けるいろいろな疑問を解説したものでした。
平均というのがいかに当てにならないか、鏡に映った顔についての考察、表裏の出る確率が偏っているコインを使った公正なコイントスの実現方法、エスキモーはなぜ10進法ではなく8進法で計算していたか、などなど面白い話題がいっぱいでした。
昔、多湖輝の頭の体操に出ていた問題なども出てきて懐かしいなあ、と思ったのは内緒です。
答えが示されると確かにそうだなあ、と思いますが、その解答を最初に考えた人は偉いなあ、と思ってしまいます。
2009年8月21日
ジョン・D・バロウの数学でわかる100のことを読んでいます。
数学で解けるいろいろな疑問を解説したものでした。
副題が、「いつも隣の列のほうが早く進むわけ」となっていて、合理的な説明がされていて納得できます。
草場純さんの一連のmixi日記と同じような面白さを感じました。
面白いと思ったのは、3つの箱の中に一つだけアタリが入っているときに、回答者がまず一つ選んだ後に、出題者が残りの二つのうちの片方がハズレであることを示したとき、そのままの箱にするのと、もう一つのほうに変えるのとではアタリを引く確率が変わるかどうかという問題でした。
直感的に考えるのと数学的な解答とが違う場合があるんだなあ、と思いました。
2009年8月20日
新井素子の近頃、気になりません?を読みました。
10年前の新井素子のエッセイでした。
新井素子らしい視点と語り口で主婦の仕事を中心にいろいろな話題について語っています。
面白かったのは、「いままで落とせなかった汚れを落とす洗剤が開発されるということは、新たな汚れが開発されたのと一緒だ」という意見でした。
確かに、最近アメリカの大企業の不正をきっかけに、内部統制の対応が法律で決められてしまいましたが、これにより仕事の手順が増えてしまうのは、新たな汚れが開発されたのと同じだなあ、と思ってしまいました。
新井素子のエッセイは久しぶりに読んで面白いと思いましたが、そう言えば最近はあまり本屋でも見かけないので、どうしているのかなあ、とちょっと心配になりました。
2009年8月17日
伊坂幸太郎の終末のフールを読みました。
8年後に小惑星が地球に衝突して人類は滅亡してしまうということが報道されて、混乱してしまった世界で、人間はどのように生きていくべきかということをテーマにした連作短編集でした。
混乱の極みの中で、殺されてしまった人や自殺してしまった人がいるなかで、残された人たちが生きていく姿が描かれていきます。
伊坂幸太郎の小説では、死と隣り合わせになった登場人物が描かれることが多いですが、今回も登場する人物たちはみんな必死に生きようとしていきます。
物語の描かれ方は淡々としていますが、「生きていこうとすることは権利ではなくて義務だ」という言葉が重くのしかかってくる物語でした。
人間はいつか確実に死んでしまうと言うことを、みんな忘れたふりをして生きています。
でも、そういうことを意識した上で、どのように生きていくべきかを考えさせる物語でした。
2009年8月6日
森絵都のショート・トリップを読みました。
旅をテーマとしたショートショート集で、中学生新聞に連載されたものだとのこと。
森絵都というと女性が主人公の軽いタッチの小説を書く人というイメージがあるので、ちょっと新鮮でした。
ショートショート集なので物語としてのおもしろさは期待できませんが、いろいろ変わった視点でのプロットが楽しめます。
諧謔や風刺も効いていてそれなりに楽しめました。
2009年8月3日
木村秋則のリンゴが教えてくれたことを読みました。
無農薬・無肥料でリンゴ栽培を行っている木村秋則の開発した自然栽培農法の解説書でした。
自然栽培が成功するまでの10数年の苦労話が書かれています。
この本を読んで思ったのは、木村式無農薬・無肥料栽培は、観察と試行錯誤による栽培方法探索の成果だということです。
この人は農業に関する職人であり、無農薬農業を極めましたが、ほかの業種にいても成功したのではないかと思います。
一般に仕事をしようとするときには、職人のセンスによる究極の仕事術が一番いいわけです。
しかし、職人が育つには当人のセンスの問題もあるし育つまでに時間がかかるし、職人が育った頃にはその技術が時代遅れになっていたりするので、なかなか難しいところです。
なので、技術を必要としない、誰でもできるマニュアル化で技術の平準化を図ろうということになります。
しかし、マニュアル化自体に問題が隠れていても、そのマニュアルに従って作業をする作業者にはその問題が発見できないということになり、最初は効率化を標榜していたのに結果的には効率も品質も悪いという状態になってしまったりするわけです。
現在の農業というのは一面ではそのような状況になってしまっているので、そんな状況に対する警鐘として興味深く読みました。
2009年7月30日
北村薫の街の灯を読みました。
北村薫の新シリーズ、ベッキーさんシリーズの1冊目でした。
昭和初期が舞台の上流階級の女学生が主人公の物語でした。
脇役として別宮さんという名前の女性(主人公がベッキーさんと呼んでいる)が登場します。
主人公もベッキーさんも魅力的な設定で物語に引き込まれてしまいます。
戦争が始まろうとしている暗い時代、少女から大人の女性になっていく主人公がいろいろな事件に遭遇します。
それぞれの章では、北村薫らしい謎解きが用意されていて、そちらも楽しむことができます。
今回、直木賞を受賞したこのシリーズの物語が順次文庫化されるのを楽しみに待つことにしましょう。
2009年7月27日
細川貂々のツレがうつになりまして。を読みました。
元気いっぱいで病気などしたことのない夫が、突然うつ病にかかってしまいます。
漫画家の奥さんは夫の回復のためにいろいろ手を尽くすのですが、なかなか回復できません。
その「ツレ」が2年かけて回復するまでのいろいろな出来事を描いたコミックでした。
うつ病というのは最近よく聞く病気ですが、なかなかその実態はわかりません。
そんなうつ病の闘病の記録が、わかりやすくおもしろく書かれています。
会社にもうつ病の社員はいるし、自分や家族もいつ病気になるかわからないわけですから、予防も含めて参考にしたいなあ、と思ったところです。
まあ、この夫婦の場合は奥さんが漫画家で多少の収入があるから良かったのでしょうが、普通の夫婦は夫が働けなくなったら、あっという間に金銭的に困窮してしまうはずなので、そういう意味ではなかなかうまく行かないかも知れませんが。
2009年7月21日
江國香織のなつのひかりを読みました。
20歳の女性の周りに起きるちょっとシュールな出来事が描かれた小説でした。
konnokの感想としては、多分この小説はヒロインの夢の中の出来事を文章にしたものに感じられました。
例えば、ヒロインの兄の行動は無責任でその場限りなので、最初はこんな奴いるかなあ、と思って読んでいたのですが、ヒロインの夢を描いた小説なら、ヒロインから見た断片的な行動が繰り返されているのも納得できます。
○○の話をしよう、という書き出しで唐突に語られるエピソードたちも、夢の中なら夢に登場したアイテムからいろいろ連想されるのが普通なので納得できます。
そのような視点で読んでいると、結構面白く読める小説でした。
フロイト的に江國香織の深層心理を読み解いてみよう、というところまでは行きませんでしたが。
2009年7月13日
仁木英之の僕僕先生を読みました。
唐の時代を舞台にしたファンタジー小説でした。
普段は美少女の姿をしている仙人と、ニートの青年が主人公の物語でした。
物語の舞台や語り口は酒見賢一とよく似ていて、物語にすっと入っていくことができます。
美少女の姿をしている仙人は飄々としていますが、いろいろな神通力があって、うぶな青年は手玉に取られてしまいます。
でも、仙人のほうも、その青年が気に入っているようで、ちょっとしたラブコメの雰囲気もあります。
この設定は「ああっ、女神さまっ」と同じだなあ、と思いながら読んでいました。
物語の語り口がよく、脇役で出てくる仙人や登場人物たちも魅力的で楽しく読むことができました。
続編も出ているようなので、文庫化されたら読んでみることにしましょう。
2009年7月7日
ウィングフィールドのクリスマスのフロストを読みました。
本屋でおすすめと書いて平積みされていたので、読んでみました。
われらがヒーホー君と同じジャック・フロストという名前の警部が主人公のミステリでした。
そのフロスト警部は、下品なジョークを飛ばしまくる、いいかげんを絵に描いたような警部で、そこにエキセントリックな登場人物たちがからんで物語が進んでいきます。
物語は、クリスマス直前の街で少女が日曜学校から帰ってこないという事件に端を発して、いくつもの事件が絡み合いながら進んでいきます。
物語の謎解きとしては、それなりに面白く読みましたが、ジョークが下品なのが鼻につきます。
通勤で読んでいるからかも知れませんが、物語の展開が早いにもかかわらず、登場人物が名前で呼ばれていて物語の展開を追いにくいのも減点ですね。
続編も出ているようですが、konnokは多分読まないでしょうね。
2009年6月29日
加納朋子のスペースを読みました。
入江駒子さん通称駒ちゃんが主人公のミステリーでした。
スペースとバック・スペースの2本立てで、スペースで語られる物語が実は全然別の側面からバック・スペースで語られるという凝った構成の加納朋子らしい物語でした。
大学生の女性たちの日常がみずみずしく描かれていて、あっという間に読み終えてしまいます。
しかも、そこにはいろいろななぞが隠されていて、バック・スペースではその種明かしがされていきます。
このシリーズに出てくる童話「ななつのこ」も発売されているとのことなので、早速買って読んでみましょうか。
2009年6月25日
浅田次郎のひとは情熱がなければ生きていけないを読みました。
勇気凛凛ルリの色のシリーズのエッセイ集でした。
勇気凛凛ルリの色のシリーズ既刊4冊は気に入っているエッセイ集だったので読んでみました。
今回は三島由紀夫の話題と浅田次郎の自衛隊入隊経験を中心にエッセイが書かれていましたが、シリーズの既刊に比べると面白さは落ちるかなあ、と感じました。
母校での後輩に向けた講演録なども説教のにおいがして、ちょっとイマイチに感じました。
2009年6月20日
広瀬正のマイナス・ゼロを読みました。
タイムマシンを題材にしたSFでした。
広瀬正のこの小説は昔読んだときにとても気に入っていたので、再販されたので再度買って読み直したのでしたが、以前どおり面白く読むことができました。
タイムマシンのパラドクスが縦糸になっていますが、横糸に第二次大戦前後の日本の庶民の風俗が描かれていて興味深く読みました。
私が生まれたのが昭和30年なので、そこから20年位前を舞台にした物語に引き込まれてしまいます。
また、タイムマシンのパラドクスも2重3重にトリックが仕掛けてあって、読み応えがあります。
そう言えば、この本の中でフレドリックブラウンのショートショートが引用されていました。
ひょっとしたら私はこの本が縁でフレドリックブラウンのSFを読み始めたのかもしれないなあ、と思ってしまいました。
先日本屋で見かけたときに、復刊されたこのシリーズ6冊組を全部買おうと思ったのですが、文庫本なのに全部で5000円になってしまうことがわかったので、マイナス・ゼロだけを買いました。
他の5冊は自分の家の物置に積んである文庫本の山の中から発掘して読み直そうと思いました。
2009年6月15日
村上春樹の1Q84を読みました。
久しぶりの村上春樹の長編ですが、konnok的には村上春樹作品としては駄作としか思えませんでした。
30歳の女性と30歳の男性のつながりの物語で、その二人にからんで謎めいた出来事が語られていきます。
世界の終わりとハードボイルドワンダーランドのように二つの物語が互い違いに語られる形式で物語が進んでいきます。
確かに村上春樹らしい語り口で語られる物語で、文章は読んでいて気持ちがいいのですが、物語があいまいでストーリーがはっきり説明されていないためフラストレーションがたまります。
エンディングも中途半端で、結局、あの団体はどうなったのか、あの人たちはどうなったのか、リトルピープルとは一体なんだったのか、二つの世界は並行して存在しているのか、一部交じり合っているのか、一方から他方へ変化している途中なのか、そのようなことが全然説明されていないのが気に入りません。
恩田陸だったらしかたがないなあ、と思いますが村上春樹なんですから、もう少し何とかして欲しかった。
今回は、BOOK1とBOOK2の2冊組みですが、完結編としてBOOK3があるというのなら、まだ許せると思いますが。
また、セックスに関連する描写が多いのも鼻につきます。
暴力的な描写やセックスの描写は適量は必要だというのは理解できますが、意味もなく多すぎるんじゃないでしょうか。
主人公たちの少年時代の記述もセンセーショナルに書かれていて、ちょっと気に入りませんでした。
ところで、物語の中で主人公が「もちろん、彼女はモノポリーをするために毎週ここに来ていたわけではない」というくだりがあって、ジンラミーでもバックギャモンでもこいこいでもカタンでもなく、村上春樹的にはモノポリーなんだ、というのがちょっと気になりましたが。
2009年5月29日
夢枕獏の陰陽師 瀧夜叉姫を読みました。
おなじみ陰陽師シリーズの最新刊でした。
晴明が活躍している時代から20年前の平将門討伐に端を発する事件が起きます。
この事件はあやかしを操る人物の、都を滅ぼそうという陰謀だったのでした。
それに気がついた安倍晴明と源博雅はその陰謀を阻止すべく動き出すのでした。
いつもの晴明と博雅の活躍は楽しめましたが、今回の物語では最後の種明しで十分説明されていないものも多く、エンディングが陰陽師らしくないような気がしたので、その点は不満でした。
2009年5月25日
J.D.サリンジャーのナイン・ストーリーズを読みました。
新しい日本語訳で発売されていたので、改めて読んでみました。
サリンジャーは私の気に入っている作家の一人なので、期待して読んだのですが、青春期の登場人物たちの物語が、以前(と言っても20年以上前でしたが)読んだときより頭にすっと入ってこないような気がしました。
単に私が歳をとってしまってサリンジャーの物語を楽しめなくなったのか、今回の日本語訳が私に合わなかったのか。
確かに若いころは、ヘッセ、サリンジャー、夏目漱石、遠藤周作などの重めの小説を読んでいましたが、最近は軽めの小説しか読まなくなったからなあ。
2009年5月18日
京極夏彦の絡新婦の理を読みました。
陰惨な殺人事件がおきて、刑事や探偵が事件を調べていくのですが、最後は京極堂が憑き物落しをして事件が解決するというシリーズの5冊目でした。
何しろ分厚い小説なので、持ち歩くのも大変でしたが、面白く読みました。
絡新婦(じょろうぐも)はこういう蜘蛛の巣を張っていたのでしたか。
今回は影の真犯人は捕まっていないわけなので、確かに続編ではまたいろいろな事件が起きそうですね。
前4作はいろいろな登場人物の行動や、昔起きた事件などがからみあって不幸な事件が起きていたのですが、今作は悪意を持った影の真犯人が自ら計画して事件を起こしています。
その点がちょっと気に入らないところでした。
続編もまだ何冊か出ているようなのですが、それよりも物語の流れを再度把握するため第1作から読み直してみたいなあ、と思っています。
まあ、そんなことができるのは、定年で会社を辞めて晴耕雨読の生活になってからでしょうけどね。
2009年5月13日
京極夏彦の絡新婦の理を読んでいます。
ゲーム会に参加したときにたまたま持っていたら、鈍器のような文庫本ですね、と言われたくらい分厚い小説です。
もう2週間以上読んでいるのですが、まだ3分の2くらい過ぎたくらいです。
面白いんですが、通勤電車で読んでいるのでなかなか読み進めることができません。
物語はやっと京極堂が腰を上げて、憑きもの落としを始めようかというところです。
絡新婦(じょろうぐも)はどのような蜘蛛の巣を張っているのでしょうか。
2009年4月27日
村上春樹の東京奇譚集を読みました。
最近村上春樹を読んでないなあ、と思ったら東京奇譚集の文庫版が出ていたので、既読でしたが、つい買ってしまいました。
村上春樹の作品としてはちょっと物足りなかったのですが、ちょっと奇妙な物語が5編、村上春樹らしい語り口で楽しませてくれます。
そう言えば、かえるくんが東京を救うのはこの短編集じゃなかったんだなあ。
2009年4月25日
石田衣良の40(フォーティ)翼ふたたびを読みました。
40歳になった主人公の男性は、ひょんなことから勤めていた広告代理店を辞めてしまい、フリーのプロデューサーをしています。
大手の代理店に勤めていたときは簡単だったことが、フリーで仕事をしようとするといかに大変かということを実感している毎日でした。
主人公は「40歳からはじめよう、なんでもプロデュースいたします」というblogを立ち上げて、仕事を募集するのですが、ここに申し込んでくる一癖も二癖もある40歳のクライアントたちの物語が描かれていきます。
石田衣良の連絡短編集なので、安心して読み進めることができます。
でも、物語を読みながらふと自分を振り返ると、50歳を過ぎてしまった自分にも当てはまる部分がいろいろあって、ちょっと考えさせられてしまいます。
2009年4月20日
ナンシー・クレスのベガーズ・イン・スペインを読みました。
遺伝子操作が可能になった未来を舞台にしたSF中短編集でした。
表題作のベガーズ・イン・スペインは遺伝子操作により眠らなくてもよい体で生まれてきた子供たちの苦悩を描いた物語でした。
不眠人は有眠人に比べて知能的に優れていることが判明すると、不眠人が迫害されてしまうという事態がおきてしまいます。
その騒動に巻き込まれる人々が描かれています。
それぞれの物語を読んだ感想は、わかりにくい物語たちだなあ、というものです。
物語の舞台や語り手が頻繁に切り替わってしまうため物語が追いにくく、登場人物たちの描かれ方も読者の理解を助ける方向ではないように感じられました。
私は通勤電車で何回かに分けて読んでいるので、物語のつながりが追いにくいと楽しめません。
収録された中で、気に入った物語は10ページちょっとの短編「思い出に祈りを」でした。
脳の記憶を捨てることで若さを保つことができるという技術が開発された世界で、主人公の女性は自分が生きてきた証を捨ててしまうことは自分の人生を捨ててしまうことだ、と考えて、記憶を捨てるくらいなら老いていくほうを選択するのでした。
2009年4月15日
石田衣良の空は、今日も、青いか?を読みました。
R25世代を読者に想定したエッセイ集でした。
今は未来に夢がもてない時代ですが、若い人たちには自分をしっかり持って生きていってほしいという、エールの言葉がちりばめられたエッセイ集でした。
石田衣良らしい視点でのコメントが多く、楽しんで読みました。
今の若い人たちにとっては生きにくい時代かもしれませんが、自分に自信を持って楽しく人生を生きていってほしいと思いました。
2009年4月2日
梨木香歩の沼地のある森を抜けてを読みました。
親から伝えられた「ぬか床」は、その一族の命の秘密が隠されていたのでした。
そして、ぬか床の伝承者の女性はそのぬか床を先祖の発祥の島に返しに行くのでした。
なぜか諸星大二郎の物語を連想させる設定で、微生物や粘菌の生態もからませながら、その一族の命の物語が語られていきます。
命とは何だろう、という梨木香歩らしい視点からの問題提起でいろいろ考えさせられます。
ちょっととっつきにくいし、理解しにくい物語でしたが、骨太のファンタジーとして楽しめました。
2009年3月24日
米澤穂信の秋期限定栗きんとん事件を読みました。
小鳩くんと小佐内さんの小市民シリーズ第3弾でした。
小鳩くんと小佐内さんは小市民になるためにそれぞれ別の道を行くことにしました。
そしてそれぞれ恋人ができて小市民的な生活を送っていたのですが、そこに連続放火事件が勃発するのでした。
小佐内さんの恋人の瓜野くんは、小佐内さんを恋人に選んだ事を見てもわかるとおり、人を見抜く目は持っていないのでした。
瓜野くんは連続放火事件の犯人をつかまえるために校内新聞に記事を書くのでしたが...
小市民シリーズらしく、ほろ苦い結末が待っていますが、それなりに楽しめました。
konnok的には仲丸さんの見かけによらない性格がつぼにはまりました。
きれいなお姉さんは怖いなあ。
2009年3月20日
東野圭吾のさまよう刃を読みました。
犯罪を繰り返していた少年たちに自分の一人娘を殺されてしまったときに、その父親は復讐を決意しました。
彼は犯人の一人を殺し、猟銃を持ってもう一人の犯人を追うのでしたが...
今週もただ楽しみのためだけに女性を誘拐して殺した事件が報道されていましたが、そのような犯罪に対して被害者の家族はどのような対応ができるのか、ということがテーマでした。
結論の出ないテーマなので、物語の結末も割り切れない形で終わってしまいました。
秋葉原の事件のときも思いましたが、犯罪を犯した人間がわかりやすい形で裁かれないと、法律や刑罰というのが抑止力にならないのではないかなあ、と思ったところです。
2009年3月16日
奥田秀朗の町長選挙を読みました。
奇人の精神科医、伊良部が活躍するイン・ザ・プールのシリーズ3作目でした。
個性的な登場人物たちがそれぞれの心因性の病気にかかり、それを伊良部医師が治してあげるという短編集でした。
今回は、登場人物たちの奇人ぶりも堂に入っていて、伊良部があまり印象に残らなくなってしまっています。
4編目の「町長選挙」は、今までのシリーズとちょっと物語の色合いが違っていて、面白いと感じました。
地域に残っている伝統の行事が、危険だから、時流に会わないからという理由でだんだん廃れていくことに対する奥田秀朗の主張が書かれています。
2009年3月10日
岡嶋二人の殺人!ザ・東京ドームを読みました。
引っ込み思案の青年がひょんなことから猛毒を手に入れて東京ドームで連続殺人を行う、というミステリーでした。
物語としては平板で謎解きもイマイチ、登場人物に感情移入できるかというとそうでもない。
この人たちの小説は面白さについて当たり外れが大きいと思いますが、これはハズレでした。
2009年3月7日
海堂尊の螺鈿迷宮を読みました。
チーム・バチスタの栄光シリーズの4作目(外伝なのかもしれませんが)でした。
ロジカルモンスターの白鳥とその部下の氷姫こと姫宮が活躍する物語でした。
この物語の主人公は東城大学医学部のおちこぼれ学生の天馬大吉とそのガールフレンド別宮葉子で、桜宮病院の闇に立ち向かうというハードボイルドな作品でした。
とは言え、海堂尊の作品らしく、饒舌と諧謔がちりばめられた文章は面白く、つい引き込まれてしまいます。
登場人物もキャラクターが立っていて、確かにこの人ならこのような行動を取るだろうな、と納得できる展開になっています。
北の大地に落ち延びる桜宮の生き残りがまた別の物語を運んでくるかもしれないなあ、と思わせるエンディングもいい感じです。
この人たちのまた別の話を聞いてみたいなあ、と思いました。
2009年3月2日
あさのあつこのラスト・イニングを読みました。
バッテリーシリーズの番外編でした。
番外編と言うこともあり主人公の原田と永倉のバッテリーはほとんど登場せず、本編では脇役だった登場人物たちの物語でした。
原田と永倉のバッテリーとそのボールに魅せられた少年たち(主に対戦相手の横手二中の選手たち)が描かれていく中で、逆にバッテリーが際立ってくるのでした。
これでこの物語も本当に完結したなあ、と思いました。
2009年2月24日
海堂尊のジェネラル・ルージュの凱旋を読みました。
チーム・バチスタの栄光シリーズの3作目でした。
田口・白鳥コンビの鋭い切れ味が帰ってきました。
登場人物たちのキャラクターが立っているので、普通の会話のはずなのですが、それが面白い。
高階病院長に速水部長、花房師長がかっこいい。
敵役も粒がそろっていて委員会の会議の中で、丁々発止で火花が散る。
十分に物語を堪能しました。
しかも、この物語はナイチンゲールの沈黙と同じ時期に起きた事件を描いているので、小夜ちゃんがあんな事件に巻き込まれていたときに、如月さんは恋に破れていたのね、と物語に深みが出てきます。
氷姫も登場したので、今後この人がどんな活躍をするのか楽しみです。
次の作品も早速買ってきて読んでみないと。
2009年2月21日
石田衣良の眠れぬ真珠を読みました。
45歳でプロの版画家の咲世子と17歳年下の映像芸術家のたまごの素樹のラブストーリーでした。
咲世子のプロの版画家としての自覚、自分は女性として下り坂だという諦観、そして大人の女性として感情を抑えた行動が魅力的に描かれています。
官能的な表現も随所にありますが、それが不自然でないのがいい感じです。
脇役で登場する中年のプレイボーイ、若い魅力的な女優、心が壊れてしまった真面目な女性、素直な大学生アルバイトもそれぞれ魅力的で、その人たちが絡み合って綺麗な物語になっています。
私は読んだときに映像が眼に浮かぶような物語が好きなのですが、この物語は随所にそのような場面があるので気に入りました。
2009年2月17日
奥田英朗のガールを読みました。
ずっと女の子だったのにもう若くないかも、という年齢を迎えた働く女性たちを描いた短編集でした。
年齢が上がって立場が変わってくる女性たちの気持ちや行動が描かれていて面白く読みました。
「一回り」という短編はマドンナという短編集の表題作を逆から描いていて、興味深く感じました。
主人公の女性がじたばたする様子がほほえましく感じてしまいます。
それぞれの物語は面白く読んだのですが、全般的に説明口調が多く、息づいている人間が描かれているというよりは、シナリオを読んでいるような感じをうけてしまったのはちょっと残念でした。
2009年2月11日
江國香織の思いわずらうことなく愉しく生きよを読みました。
麻子、治子、育子の三姉妹が両親と一緒に住んでいた家の玄関には父親の書いた「思いわずらうことなく愉しく生きよ」という家訓が掲げられていました。
両親は離婚してしまい、三姉妹はそれぞれ別々の生活をしていきます。
性格の違う姉妹たちが自分に正直に生きていく様子が描かれています。
DVがテーマの一つとして取り上げられていて、考えさせられるところもありましたが、全体的にはいきいきと生きていく女性たちが魅力的な物語でした。
2009年1月27日
海堂尊のナイチンゲールの沈黙を読みました。
チーム・バチスタの栄光の続編でした。
前作で活躍した田口と白鳥に加え、魅力的な登場人物たちが物語をつむいでいきます。
今回は眼の中のガンのために眼球摘出をしなければならなくなった子供の患者とその担当の看護師が主人公でした。
さらりと書いてありますが、このような難病にかかってしまった人たちは現実に存在するんだよなあ、というのも重く感じてしまいました。
人間ドックを受けながら読んでいたからかもしれませんが。
今作は前作に比べると謎も単純で白鳥のアクティブフェーズも出番が少なかったのですが、まあ登場人物たちの掛け合いを聞いているだけで楽しくなってしまいます。
謎解きを期待するとちょっと物足りないかもしれませんが。
今回も魅力的な登場人物が目白押しでしたが、その中でも面白いと思ったのは猫田看護師長です。
普段は眠り猫と呼ばれて職場では居眠りをしているだけの人ですが、他人を見抜く眼は的確で他人をこき使うのが得意、という設定です。
こんな人が職場に居たら面白いかもしれないなあと思いました。
2009年1月25日
村上春樹の意味がなければスイングはないを読みました。
ジャズやクラシックの音楽家をピックアップして、その人をテーマにしたエッセイ集でした。
私はほとんどジャズやクラシックは聴かず、おもにJポップという「リズムのある歌謡曲」しか聞いたことがないので、村上春樹の言いたいことはほとんどわかりません。
しかしながら、村上春樹の音楽に対するエッセイや、ラジオ番組の山下達郎の語り、そして友人のblogの文章は結構気に入って読んでいます。
内容は理解できなくてもその話の進め方が面白く感じられるというのは、音楽を趣味にしている人からは邪道ということになるのでしょうが。
この本ではスガシカオが取り上げられていたので、そのうちレンタルショップで借りて聞いてみましょうか。
2009年1月19日
恩田陸のネクロポリスを読みました。
日本が独立する前イギリスの植民地だったという設定のパラレルワールドで、死者が死んだ後に通るという島アナザーヒルを舞台にした物語でした。
恐山のイタコの口寄せを連想させる、死者が冥土に行く途中で通る島では、ヒガンの期間死者を迎える儀式が行われるのでした。
設定は十分おどろおどろしくて、日本の風習を適度にメタファーしたアナザーヒルの儀式はそれなりに面白く読みました。
また、恩田陸の登場人物たちの会話も楽しく読むことができました。
しかしながら、物語の中で広がっていく謎がちゃんと論理的に解決するのだろうか、という不安を感じながら読み進めていました。
恩田陸の小説では、MAZEなどのように、物語の舞台の設定は非常に魅力的なのに、途中で提起される謎がちゃんと解決しないままご都合主義的に物語が終ってしまうことがあるので。
ということで最後まで読んでみましたが、やはりエンディングでの謎の解決が中途半端でした。
謎解きはこの物語の主題ではないんだ、と割り切ってしまえばいいんでしょうけど。
2009年1月12日
三崎亜記のバスジャックを読みました。
普通に生活している人が、不思議な事象に遭遇したらどう振舞うのだろうか、ということに対する思考実験のような短編集でした。
それぞれの物語が独自の雰囲気を持っていて、一連の幻想絵画を見ているような読後感でした。
物語のテーマはフレドリックブラウンのSF短編集に似ていますが、描かれ方は三崎亜記の方が日本人的な情緒が感じられました。
7編の物語の中では、「動物園」が一番気に入りましたが、「送りの夏」にも考えさせられました。
現代では「死」というものが私たちの人生から隠蔽されてしまっていると感じているからかもしれません。
2009年1月7日
畠中恵のうそうそを読みました。
しゃばけシリーズの5冊目です。
お江戸の廻船問屋兼薬種問屋の一粒種、一太郎は体が弱くいつも寝込んでばかり。
ところが、おばあさんが大妖だったことから、この若だんなは妖(あやかし)と大の仲良しなのでした。
この一太郎と手代の佐吉、仁吉が箱根に湯治に行くということになって、大騒ぎの珍道中になります。
箱根では若だんなを待っている姫神様やカラス天狗もいて物語が進んでいきます。
物語自体はそれほど凝っているわけではないのですが、登場人物のキャラクタがうまく描かれていて物語に引き込まれてしまいます。
柴田ゆうの挿絵もいい雰囲気を出しています。
特に鳴家(やなり)がかわいいですね。
今年は出社初日の帰りから文庫本に夢中になって電車を乗り過ごすという失態を演じてしまいました。
まあ、軽い時代小説としてはおすすめだと思います。
2009年1月4日
石田衣良の灰色のピーターパンを読みました。
池袋西口公園物語のシリーズ6冊目でした。
池袋西口公園に面した果物屋の息子マコトが池袋の街で発生するトラブルを解決していくという物語でした。
今回も、ちょっとくせのある登場人物たちがいろいろな問題を持ち込んでくるのですが、マコトらしいやり方で解決していきます。
登場人物たちの悩みや怒りをマコトなりの方法でソフトランディングさせていくのが、石田衣良の物語りの力なんだと思いました。
2009年1月1日
今年も、面白そうな本を探して読んでいきたいと思います。
そしてなるべく本を選ぶときに参考になるようなコメントを記録していきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
2008年に読んだ本の感想